26 Recollection 【回想】 【26-1】

26 Recollection 【回想】

【26-1】


「宇野さん」

「はい」

「それはつまり、私の言っていることを、否定しないということですよね」


写真に残っている彩夏との時間。

そして、『ゲーム』だと割り切り、付き合っていたはずの相馬さん。

理由がどうであれ、約束がどうであれ、二人の女性と同時進行していたことは、

間違いない。


「宇野さん、あなた本気なのですか」

「……というのは」

「郁美ちゃんに対してということです。こっちがうまく行かなくなったから、
こっちへという、軽い気持ちではないですよね」

「それは違います」


乗り換えたというような、軽い気持ちではない。

相馬さんとの出会いは、振り返れば最悪のものだ。

それでも、先の人生をともに歩みたいと思うほど、僕自身が彼女に惹かれたのだから。

欠けてしまったピースを、埋め込むような、ごまかしの気持ちではない。


「そうですか。それなら、今、二股をしているわけではないというのなら、
どうして話が進まないのですか」


話が進まない理由。


「郁美ちゃんにもそう尋ねてみました。あの話し合いから、時間が経っているのにと。
すると彼女は、進んでいないわけではないから大丈夫だと、そう言うだけで、
何も確信がもてません。郁美ちゃんの大丈夫ほど、こう……
聞いていて辛いものはなくて」


そう、清田さんも知っている。

相馬さんがとても辛抱強くて、弱音など簡単に吐かないということ。


「僕の気持ちは、相手にも話しましたし、
それなりのけじめをつけたつもりでいたのですが。実は……」


話すべきなのだろうか。

それでも、隠しておくことで、また別の誤解を生む可能性がある。

何もかも明らかにして、立ち向かうしかない。


「その女性が、自殺未遂をしてしまって……」

「自殺未遂……」

「はい」

「それで」

「もう退院しましたし、話を知って、最初にかけつけたときにも、
看護師に傷はたいしたことがないと教えてもらいました。でも、
それから本人と話ができていなくて」


冷たい母親の姿しか、僕はあれから見ていない。

送り続けているメールにも、全く返信がない状態だ。


「このことは、正直に、相馬さんにも話しました。
本当に僕の至らなさそのものなのですが。ことがことなので、
焦らずに話をしてほしいと、そう言ってもらって……」


傷ついた人の思いを、大切にすること。

相馬さんの優しさに、僕は今、助けられている。


「……ずっと、会ってもらえなかったら」


清田さんは、僕の顔を見たまま、そう問いかけてきた。

『ずっと』

そう、このまま彩夏が僕を無視し続けたとしたら。


「別れを理解させ、納得してもらおうとしているのでしょう。
でも、相手が嫌だと、納得できないと、首を振り続けたらどうなるのですか」



……どうなるのか



「命まで絶とうとした人を放り出せますか。
それとも、郁美ちゃんは、ずっと、耐えたままですか」


来週だとか、来月だとか、期限が決まっているわけではない。

彩夏が、僕を許すと言ってくれる日。

それがいつくるのか、誰にもわからない。


「答えてください」


答え……


僕が出せる答えは……今、何もない。


「今は、彼女の優しさに……すがっているだけだと思います」


相馬さんの頑張り。

ただ、その1点だけ。


「わかりました」


わかったとは、何がわかったのだろう。


「宇野さん、あなたにはあなたの思いがあるのでしょうから、
これ以上あれこれ言うことは避けておきます。でも、私にも私の思いがあります」


清田さんの思い。


「子供がいて、クセのある母親がいて、郁美ちゃんにいい条件だと胸を張れないと、
そう考えてきましたが、あなたの話を聞いていたら、気持ちが代わりました。
私も、ものわかりよく、身を引くことは辞めます」

「清田さん……」

「選ぶのは郁美ちゃんだ。ただ、選んでもらえるように、努力する権利は、
私にもあると思えたので」


清田さんはそういうと、コーヒーを飲みかけにしたまま、立ち上がった。

伝票をつかみ、レジへと向かってしまう。

僕は少し遅れ気味に立ち上がり、自分が払うと声をかける。


「結構です」

「でも……」

「私は、あなたのように優秀な大学を出て、
人にうらやましがられるような仕事もしていないし、収入もない。
でも、人から後ろ指をさされるようなことも、何もしていない」


後ろ指……


「幸せというのは、色々と形があるのだと、郁美ちゃんに話すつもりです」


僕には僕の思いがある。

どうしてこんなふうに生きてきたのか、確かに人に誇れるものではないかもしれないが、

それでも、必死に生きてきた。

全てを奪われ、どこを目指していいのかわからなくなった日。

そこから、僕は……



それでも……言いたいことなど、清田さんに一言も言えなかった。




【26-2】

コメント、拍手、ランクポチなど、
みなさんの参加をお待ちしています。(@゚ー゚@)ノヨロシクネ♪


Pagination

Trackback

Trackback URL

http://momonta1108.blog75.fc2.com/tb.php/3076-dd93f3ae

Comment

みち

こんばんは
複雑になる二人の行方を、毎日ハラハラし、
応援しています。
やはり、気になるのはタイトルなんですよね
  • URL
  • 2016/09/23 21:34

ももんた

拍手コメントさん、こんばんは

>二人の気持ちが通じ合ってから、やきもきが続いていますが、
 最後はハッピーエンドと信じ、でも、タイトルが気になりながら、
 毎日、楽しみにしていますね。

毎日、楽しみにしてくださって、ありがとうございます。
そう、『タイトル』はみなさん気にしてくれているようです。
もちろん、ちゃんと意味はありますよ。

はてなマークいっぱいになりながら、最後までお付き合いください。
  • URL
  • 2016/09/23 22:39

ももんた

みちさん、こんばんは

>複雑になる二人の行方を、毎日ハラハラし、
 応援しています。

最初は自分勝手、あきらめモードの柾ですが、
色々な人との出会いで、自分を見つめ、変化をしています。
そんな柾に待っているものはなんなのか、
最後まで、お付き合いくださいね。
  • URL
  • 2016/09/23 22:40

Post Your Comment

コメント登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

momonta

Author:momonta
ただいま、怪獣2匹を飼育中の、お気楽主婦です。
日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
飲み物片手に、立ち寄ってくださいね。

なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。
著作権は放棄していません。お願いします。

ただいま、連載中!

あなたの色と私の色。6人の恋模様が生み出す『COLOR』は……
ただいま発芽室では『Colors』を連載中! こちらからどうぞ

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

お供、提供中!

この人は誰だろう……悩んだ時には、迷わずGO!
発芽培養所では『Colors 50音人物紹介』を掲載中! こちらからどうぞ

FC2ブログランキング

小説・文学部門に参加しています。

FC2Blog Ranking

毎日1回、ポチッとしてもらえたら嬉しいです。見えないライバル達と、格闘中!

いらっしゃいませ!

QRコード

QRコード

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
小説・文学
417位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
ロマンス
5位
アクセスランキングを見る>>