29 Determination 【決意】 【29-1】

29 Determination 【決意】

【29-1】


「はい、その棚は、こちらにお願いします」


2週間が過ぎた。

僕たちは、郁美の新しい拠点を決め、そしてあらためて伊豆の清田家に向かい、

彼女の持っていた荷物などをまとめることにした。

郁美が東京に戻ることを知ったときには、

拗ねてしまって顔を背けていた娘のみずきちゃんも、

気持ちを切り替えてくれたのか、楽しそうに手伝ってくれる。


「これは、私のではないです」

「いやいや、いいよ。よかったら使って」

「でも……」

「郁ちゃんにあげようねって、そう言っていたの」


洋服ダンスの代わりになりそうな長めのチェスト。

清田さんは、どこかの抽選会であたったものの、使わずに閉まっていたところを、

郁美が活用してくれたのだと、そう話してくれる。


「田舎はなぁ、ただ大きいものをあげていれば喜ばれると思っている人たちがいて、
困ったものだよ」

「いえいえ……」


清田文彦さん。

郁美を妹のように、いや、本当は一人の女性として優しさを向けてくれていた。

僕よりも数倍、大人の男性。


「よし、これで終わりか」

「はい」


静岡と東京という距離もあり、清田家に来なければならなかったため、

業者にお願いし、今日1日は、向こうで荷物を預かってもらうことになっている。


「明日、晴れるといいな」

「予報では大丈夫だと思うんですが」

「そう……それなら」


明日、新しい部屋に僕らが先に到着し、荷物を待つことになっている。





「本当に、色々とお世話になりました。清田家のみなさんがいなければ、
母も私たちも、迷い苦しんだことが多かったと思います」


郁美は、清田家のみなさんの前で、世話になったことだけを語る。

柿沼に借金のことを知られ、間に入るという振りをされ、

教授が残してくれたマンションを、処分してしまったが、

今思うと、この結果が一番スッキリしているのかもしれない。

ものを持てば、その分、忘れられないこともある。


「挨拶はもういいから、行きなさい」

「はい」


郁美は、ハル江さんが姿を見せてくれないことが、気になっているのか、

このままでいいのかと清田さんを見る。


「あぁいう性格だからね、前の嫁さんともうまくいかなかったんだよ。
一歩譲れば、それでうまくいくことがたくさんあるのにさ。とにかく自分がって、
必死になり過ぎて、ばあちゃんとも距離があいてしまったから」


清田さんは、ここへ来ないのが母なりのエールだと思ってくれと笑い、

そして、僕達はあらためて頭を下げる。


「また、遊びに来ればいい」

「……はい」


業者のトラックが少し先に出発し、そして僕達も車に乗る。


「郁ちゃん!」


みずきちゃんが、郁美の座る助手席の窓を、小さな手で軽く叩いた。

郁美はすぐに窓を開ける。


「郁ちゃん……」

「うん……」

「バイバイ、ありがとう……郁ちゃん」

「みずきちゃん」


みずきちゃんはそれだけを言うと、精一杯の笑顔を作り、手を振ったが、

すぐに顔はゆがみだし、清田さんの方へ走ってしまう。


「あ……」


郁美が振り向くと、清田さんが僕達に早く行けと、手で払うような仕草をした。

そう、ここで躊躇しているわけにはいかない。


「郁美、出るよ」

「うん……」


僕はハンドルを握り、アクセルを踏み込んだ。

車はそれぞれの思いを断ち切るように、清田家の前を離れていく。


「清田さんなら、きっといい人にまためぐり合えるよ」

「うん」


それは本当にそう思う。

色々なことを経験したからこそ、わかることもあるだろうし。


「さて、忙しいぞ、これから」

「うん」


いつまでもしんみりしていられないと、僕が明るく振舞うと、

少しうつむき加減だった郁美も、いつの間にか笑顔を見せていた。




【29-2】

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