1 先輩の結婚式に出る理由 【1-1】

1 先輩の結婚式に出る理由
【1-1】
『新郎新婦 ご入場です』

司会者の声が響き、一斉に明かりが落ちた。

会場の扉が係員によってゆっくりと開かれる。

そこにはスポットライトがあたり、幸せ最高潮の二人を招待客が拍手で出迎えた。

本日の主役、出会いは系列会社が全て集まる『大運動会』。

新郎は、新婦が懸命に綱引きで綱を引く姿に、驚きながらも感動し、

汗をかいたすがすがしさに紛れ、『食事』を申し込んだのだとアナウンスが続く。


「運動会かぁ……」

「どうしたのよ、その力の抜けた言い方」

「だってさ……」


新婦側に招待された、3名の後輩。

『赤尾陽菜(はるな)』、『黄原真帆(まほ)』、『山吹有紗(ありさ)』は、

その日、大学の1つ先輩になる『沼田絢(あや)』に、受付を頼まれたため、

着慣れない和服に身を包み、会が始まる数時間前から頑張った。

やっと任務から解放され、席に座れたという安堵感からか、

真帆は、祝福の拍手をしながらも、少し不満そうに顔をゆがめる。


「陽菜だって覚えているでしょ、半年前の出来事」


真帆は、絢が趣味で始めた絵画教室の先生だったよねと、横を向く。


「私、わざわざさぁ、絢先輩に1年前、いい教室だからって誘われて入会したのよ。
そうしたら……」


陽菜は、真帆に向かって『言わないように』と指を口の前に立てる。


「半年前だよ、絢先輩、先生とは別れたって、急に電話してきてさ。
どういう理由だかわからないけれど、誘われて入会したのに、
誘った本人が急に退会なんて、その後行きにくくなるでしょう。
せめてさぁ、やめる前に言ってくれないと」

「真帆……」

「何?」

「これが見えないの? 今ここで、言うことじゃない」


陽菜は周りの人を気にしながら、真帆の言葉をそこまでで食い止めた。

真帆は最後まで言えなかったことが不満なのか、

拍手を早々に取りやめ、席次表に目を落とす。


「絢先輩。さすが綺麗。選ぶドレスも流行を意識している」

「うん。大学時代からいつも雑誌片手だったものね」


アパレル業界に勤めている有紗は、ドレスのラインが今年流行のものだと解説し、

陽菜はそれを頷きながら聞いた。新郎と新婦は、会場の真ん中を進み、

そして拍手の中、正面の台に立つと、招待客に深々と頭を下げる。


「真帆、ほら拍手しないと」

「したわよ、もう」

「ここでするのよ、一番大きいものを」

「……もう!」


真帆は席次表を置くと、大きくため息をつきながら、拍手に再び参加した。





前菜、スープと、食事は順序どおり進んでいく。

陽菜たちのテーブルは、7人がけになっていて、

3人の他4人は、現在絢が勤めている会社の同僚だった。

この後、歌を披露しなければならないようで、何やらカンペを出し、

最終の打ち合わせをし始める。


「ねぇ、有紗。この間『リファーレ』の新作発表会があったでしょ。
あれ、人の入り、どうだった?」

「エ……」


陽菜は、自分も行きたかったけれど、仕事の都合がつかなかったと残念がった。

有紗は、また半年後くらいにあると思うと話を切り返す。


「盛況だって、新聞には書いてあったけれど、実際にはどうなのかな。
準備段階までは結構関わっていたけれど、いざ本番になってからは、中に入っていないし」

「あ……そうなの?」

「うん」


『株式会社 リファーレ』

女性の美しさをアシストする……というキャッチコピーを掲げ、

CMなども積極的に展開する、大手のアパレルメーカー。

その秘書課に勤務するのが有紗だった。


「ねぇ、有紗。今どんな人についているの?」

「どんな人?」

「そう、だって、ある程度の役職がないと、秘書なんてつかないでしょう」


真帆はそういうと、久しぶりに会った同級生の仕事内容を、

興味深そうに聞きだそうとする。

有紗は、今ついているのは、広報部長だとそう答えた。


「広報部長? それ、どれだけ偉いの?」

「どれだけって……」


真帆は、スープを飲み終えたスプーンをお皿の上に置くと、

ナフキンで口元を軽く拭いた。

空になった食器は、次の料理の邪魔になるので、素早く下げられる。


「広報は宣伝関係を仕切るの。だからCMとかポスターとか、テレビ番組の提供とか、
色々と会議があるけれど、その一番上にいる人ってことかな……」

「一番上」

「まぁね」

「そうか、一番上か。いい響きよね。うちはさぁ、小さな運送会社だから、
そんな秘書が着くような人はいないでしょ。有紗の仕事って、
どういうものなのだろうって、前から気になっていたのよね」


真帆は大学を出た後、一度『信用金庫』に就職を決めたが、1年前に転職した。

理由は色々とあるが、今は、地元に愛される運送会社で事務全般をこなしている。


「ねぇ、その広報部長だっけ? 素敵な人?」

「真帆……」


陽菜は、どういう基準で仕事の話を聞こうとしているのかと、呆れ顔になる。


「だって陽菜。ドラマとかにもあるじゃない。上司と秘書の不倫?
あれって、実際のところもあるのかなと」


陽菜は、真帆と同じように口元をナフキンで拭いた。


「それはドラマだけだって。実際には、そんなことないわよ」

「ないの?」


有紗は、真帆の質問に軽く首を振る。


「ないわよ。仕事、仕事でそんな暇ありません」

「なんだ、つまらないな」


真帆は席次表を持つと、今度はバッグからメガネを取り出した。



【1-2】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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