1 先輩の結婚式に出る理由 【1-2】

【1-2】
[あれ? 真帆、メガネなんてかけていた?」

「ちょっとね、普段はかけないのだけれど、こういう時にはハッキリ見たいと思うので」

「ハッキリ?」

「うん」


真帆は席次表のある場所を指でさし、横に座る陽菜に微笑んだ。



『黒木祥太郎(しょうたろう)』



その名前は、新郎側の招待席にある名前だった。

陽菜は少しだけ真帆に体を寄せ、知り合いなのかと尋ねる。


「そう……40分くらい前に、知り合った」

「40分くらい前?」

「ほら、受付の時、私、一度お手洗いに抜けたでしょ」

「あぁ、うん」

「和装だからさ、あれこれ手間がかかってしまって。
二人に悪いから急がないとと慌てて出てきて、ハンカチを落としたのよ。
そうしたら、『落としましたよ』って拾ってくれの。それがこの黒木祥太郎さん」


真帆は、『黒木祥太郎』の名前に何度か指で触れる。

念のため、間違いがないようにと、ある男性を基準にし左に3人分指を動かした。


「今、名前を数えてみたの。一緒のテーブルにいるあの男性、
あの人、私が受付したのよ。ちょっと顔に特徴があるでしょ、
鼻の横にほくろがあって。髪の毛、天然パーマだし。
ネクタイも個性的で覚えていたから、そこから名前をこう……動かしていくと、
ほら、彼は『黒木祥太郎』さんだと判明した」


真帆の言葉に、陽菜と有紗は、揃って顔を動かした。

確かに一人、特徴のある顔をした男の人がいて、そこから人を当てはめていくと、

真帆の言うとおりになる。


「絢先輩。恋愛の始まりと終わりに人を勝手に巻き込んで。
それがいきなり結婚式? と思ったけれど……でも、
この出会いを演出してくれたのかと思いこめば、よかったと言えないこともない」


真帆は、そういうと、スーツのセンスがいいとか、髪形も好みだとか、

『黒木祥太郎』への持論を展開した。





真帆が、憂いの目を向ける『黒木祥太郎』の席に座った男性。

それは……


「それにしてもさ、祥太郎、こういう日に熱出すか? 子供じゃあるまいし」

「仕方ないだろう、あいつは昔からプレッシャーに弱い」

「プレッシャー? たかが知り合いの結婚式だぞ。自分が主役でもあるまいし」


真帆が祥太郎だと思い込んでいるのは、実は祥太郎ではなく、

席をひとつずらした場所に座る、『緑川司(つかさ)』だった。

同じく、新郎の後輩として呼ばれた『白井大輔(だいすけ)』は、

出されたシャンパンを飲み干し、会場の中を歩くカメラマンを見る。


「あんなところから撮るのか。近付きすぎだろ。
レンズを意識して、自然の表情にならないのに」


大輔の職業は、フリーカメラマンで、数冊、雑誌との契約を持っている。

海外に出かけることもあるが、忙しい時期が決まっているため、

空いている時間は、知り合いの男性が経営する『フォトカチャ』という会社で、

イベントカメラマンの仕事をこなしていた。


「何真剣に考えているんだよ。まぁ、大輔は職業病だから仕方がないけれど」

「職業病? 違うよ」

「いやいや……いっそ、大輔に撮らせればよかったのにな、先輩」


司は、ナイフとフォークを皿の上に置く。


「ホテル側にはそう頼んだらしいけれど、この会場にも専属契約があるから、
ダメだって言われたんだと。わざわざ謝りの電話をもらって、申し訳なかったよ」

「ほぉ……」


司は、グラスを取ろうとしたが、自分に向かう視線を感じとる。

そして、しばらく動かないまま、その一点を見続けた。


「新婦の女性、綱引きなんてしそうもないけどな。人は見かけにって……、司。
お前、誰に手を振っているんだ」

「誰なのか? それはまだわからないよ、でもな大輔。
他人の結婚式なんてものはさ、遠慮がちな合同コンパだとそう思えって、
昔からの言い伝えだろ」

「は? そんな言い伝え聞いたことがないよ。
そもそも昔の言い伝えに、コンパがあるわけないだろう」


司が見続けていたのは、少し離れた場所から自分の方に視線を向けている

真帆……ではなく、その斜めにいる席の女性だった。

しかし、真帆からすると、司の視線が自分に向いている気がしてしまう。

軽く手を振られたことで、心臓が速く動き出してしまい。めがねを外した。


「見てる……彼、こっちを見てる」


と思っているのは真帆だけで、実際に司の目は、別の女性をとらえているのだが、

そこは微妙な角度のため、気付けない。


「見てる? 何言っているのよ。ほら真帆。
少しペースあげて食べないと、食事終わるよ」

「だって、陽菜」


真帆は、祥太郎もこっちを見ているということは、

自分のことを印象に残しているのかもしれないと、そう言い始める。


「帰りに、さっきはありがとうございましたって、声、かけてみようか」


真帆は、もし、飲み会でも設定できたら、二人が参加するのかと言い始めた。

陽菜は『参加しない』と首を振る。


「エ……どうして」

「人に気をつかって飲むのは、嫌だから」

「ごめん、真帆、私もパス」

「どうしてよぉ。有紗まで」


真帆は、二人が乗ってこないと難しくなると、口を尖らせる。


「いいじゃない、お誘いして一緒に食事でも行けば」

「1対1? それは難しいって……」

「ほら、真帆。食べないと」

「もう!」


それぞれの思いを乗せた結婚式は、同僚や友人の余興で盛り上がり、

食事もデザートが出始めた。



【1-3】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
みなさんのコメント、拍手、ポチなど、お待ちしてます。

Pagination

Trackback

Trackback URL

http://momonta1108.blog75.fc2.com/tb.php/3116-e002de5b

Comment

Post Your Comment

コメント登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

momonta

Author:momonta
ただいま、怪獣2匹を飼育中の、お気楽主婦です。
日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
飲み物片手に、立ち寄ってくださいね。

なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。
著作権は放棄していません。お願いします。

ただいま、連載中!

あなたの色と私の色。6人の恋模様が生み出す『COLOR』は……
ただいま発芽室では『Colors』を連載中! こちらからどうぞ

カレンダー

03 | 2017/04 | 05
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -

お供、提供中!

この人は誰だろう……悩んだ時には、迷わずGO!
発芽培養所では『Colors 50音人物紹介』を掲載中! こちらからどうぞ

FC2ブログランキング

小説・文学部門に参加しています。

FC2Blog Ranking

毎日1回、ポチッとしてもらえたら嬉しいです。見えないライバル達と、格闘中!

いらっしゃいませ!

QRコード

QRコード

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
小説・文学
271位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
ロマンス
4位
アクセスランキングを見る>>