1 先輩の結婚式に出る理由 【1-3】

【1-3】
司のポケットに入れてあった携帯が揺れたため、テーブルの下に置き、

相手を確認した。相手がわかると、自然にため息が出る。


「お嬢さんか……」


司はそういうと、携帯をまたポケットにしまう。


「なんだよ、お嬢さんって」

「ん? 都内にある有名な『美容整形外科』。
『ビューティークール』って知っているか、大輔」

「『ビューティークール』? 知らないな」

「まぁ、お前は知らないだろうな、毎朝の肌の手入れとか、しないだろ」


司はそういうと、大輔の顎に触れる。


「なんだよ、気持ちが悪いな。肌なんて洗顔で十分だろ」

「はいはい」

「で?」

「だから、お嬢さんというのは、その女性院長の娘」

「院長の娘」

「そう……大学3年で、なかなかの美人なんだ」

「ふーん」


大輔と司の前に、デザートが運ばれてくる。

司は、ケーキにフォークを入れ、チョコレートケーキのひとかけらを口に入れた。


「なんだろうね、何度か営業に行ったら、結構気に入られてしまって。
正直、困っているんだ。色々と仕事に興味があるとか言ってくるからさ、
一度だけ食事に誘ってあげたら、その気になってしまって」


司の言葉に、大輔は横を向く。

司はその意味を感じ取り、ゆるんだ表情を元に戻した。


「言っておくけれど、手は出してないからな。いくら俺だって、
危ないか危なくないかは判断できる。お嬢さんに手を出したら、それこそ大問題だ」

「ほぉ……司に理性があったとはね」


大輔は、そう言うと、デザートを食べ終え、コーヒーに口をつける。


「失礼だな、大輔。お前より俺の方が過去の恋愛は『純粋』だぞ」

「よく言うよ」


余興を終えた式は、両親への挨拶という一番感動する場面を迎えた。

新郎と新婦だけだった並びに、その両親が加わり、揃って頭を下げる。

盛大に行われた式は、感動の拍手の中、お開きとなった。





「はぁ……」

「ほら、真帆。ため息ついていないで、帰ろう」

「ため息もつくでしょうよ。もう、くだらない人たちのおかげで、計画丸つぶれ」

「真帆、聞こえるって」


式が終了した後、真帆は祥太郎のところに向かい、

ハンカチを拾ってもらったお礼を言い、

さらに、次のステップの約束でも取り付けようと考えていたのだが、

新郎新婦の上司が、『和装三人娘』を酔っ払ったまま気に入ってくれて、

記念撮影を申し込まれてしまったおかげで、動き出すのが遅れてしまった。


「あんな親父たちの希望にこたえていなければ、
黒木さんと話が出来たかもしれないのに。もう、もう!」


真帆が、まわりに寄ってきた上司たちの期待に応えた後、

祥太郎たちの席を見たときには、すでに退席した後だった。

結局、連絡先を聞くどころか、挨拶すら交わせなかったと、

真帆はふくれっ面になったまま、ホテルのロビーに座り続ける。


「何をグタグタ言っているんだか。先輩の結婚式に来たんでしょ。
目的はそこなの。ほら、帰ろうよ、真帆」


陽菜は朝から着物を着ているので疲れたと、そう言い始める。


「何よ、私が私のためだけにこんなことをしていると思っているでしょ、陽菜」

「どういうことよ」

「この中で、一番新しい出会いがあった方がいいのは、陽菜なんだからね」


真帆は、そう言いながら、軽く襟元を直す。


「私のため? 何よ、そんなこと頼んでいません。勝手に付け足さないで」

「付け足しているわけじゃない」


有紗は、真帆の背中を軽く叩き、いい加減にしようと声をかける。


「人がさぁ、色々と計画立てて、飲みに行こうって誘っても、
陽菜、全然来ないでしょ」

「真帆、ここで言わなくても」

「ここで言っておかないと、どこで言ったらいいのか、タイミングがわからないから」


真帆は、二人の言い合いを止めに入った有紗に向かって、そう言い返す。


「いくらため息ついていたって、時間は戻らないし、年齢も止まってくれないんだよ。
もう……忘れないとダメな人になったんだから」


真帆は、新しい出会いがあれば、変われるものだと、そう言いきった。

陽菜は黙ったまま聞いていたが、着物の袖部分についた糸くずをとる。


「先に帰る」

「陽菜」

「また……」


陽菜は有紗に、イベントの招待券は頂戴ねと言った後、

真帆には挨拶をせずに、ホテルを出て行ってしまう。

有紗は、陽菜の触れて欲しくない部分を出してしまった真帆の頭を、軽く叩く。


「痛い」

「痛くない。今のは真帆が悪いよ」

「悪くない。悪いのは、新郎新婦の上司たち」

「……もう!」


有紗は、真帆の気持ちがそれで済むのならいいけれどと、空いた席に腰かけた。



【1-4】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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