2 過去の傷とそれぞれの今 【2-4】

【2-4】
そう、絢の結婚式の日、真帆が冗談交じりに語っていた『上司との不倫』。

そんなことはないと笑ったものの、実際、有紗はその真っ只中にいた。

入社してから数年は、先輩秘書の手伝いをしていることが多かったが、

広報を仕切る灰田が、別の会社から引き抜かれ、力を持つようになったとき、

その灰田から指名を受け、有紗は担当の秘書に昇格した。

もちろん、スタートから不倫関係にあったわけではないが、仕事もしっかりとこなし、

人を扱うこともうまい灰田に、有紗自身が惹かれていくまで、

それほど時間はかからなかった。

もちろん、灰田がすでに結婚していることも知ってはいたが、

一緒にいられるという時間は、有紗にとって何物にも変えられないため、

その一線を越えるという流れは、当然ともいえるものだった。


「山吹さん、灰田部長、何か言っていた?」

「ポスターの件ですか?」

「そうなの。常務が気にされていて」

「おそらく大丈夫だと思いますよ。試作の段階から、何度も確認されていましたし」

「そう……それなら」


有紗は先輩の秘書にそう言われ、軽く返事をする。

とにかく、今日一日が無事に終わるように願いながら、仕事に入った。





『原田運送』

結果的に、結婚式で一番張り切った真帆は、伝票を見直しながら、

なんとか『黒木祥太郎』の店へ行ける口実を、作ろうと考えていた。

もちろん、『中華料理店』なのだから、仕事とは関係なく食べに行くことは出来るが、

それだと、いかにもという臭いがするため、続きを作れないような気がしたからだ。

『偶然』というキーワードを使うには、『華楽』のある場所に一番近い、

自動車整備工場に行く用事を作り出したい。


「部長」

「何?」

「あの、滑川自動車整備へのお支払いですが」

「滑川……あぁ、うん」


真帆は、納車の時に支払うのでは悪いので、

たまにはこちらから出向いてみてはどうかと提案する。


「出向く? 向こうに行くのか、わざわざ」

「わざわざなところに意味があります。向こうにしてみたら、
これだけ大切に扱ってくれているのかなと、そう感じられますよね」

「大事に……ねぇ」

「はい」


真帆が以前、『信用金庫』に勤めていたことを知っている部長は、

銀行の厳しい中で仕事をしてきた経験を、とても評価してくれていた。

真帆がこういうことをしたらいいと提案すると、出来る限り協力もしてくれていたため、

今度もまた、それにあやかろうとする。


「そうか、そういえば、滑川さんのうち、孫が生まれたって言っていたな」

「お孫さんですか」

「うん……そうだね、おめでとうついでにっていうのも、いいかもしれないな」

「はい、そうですよね」


真帆はいきおいよく椅子から立ち上がると、その役目はお任せくださいと、

胸をしっかり叩いた。





人のいい部長のおかげで、『華楽』に近づける口実を得た真帆は、

駅前で評判のお菓子を購入し、いざ『滑川自動車整備』へと向かうことになった。

地図で何度も確認したため、『華楽』がどこにあるのかも、頭に入っている。

駅で降り、まっすぐ歩いていくと、以前勤めていた信用金庫の別支店が近付いてきた。

真帆にとっては、あまりおもしろくもない記憶が蘇り、歩みの速度が落ちる。

自動ドアから客が入り、そして用を済ませた客が出て行く。



『何を考えているのよ、あんたは。信じられないよ、全く』



真帆が『信用金庫』を辞めたとき、幼い頃から教育熱心だった母親は、

これ以上出来ないないだろうというくらい、真帆を責め立てた。

姉妹の長女である真帆に母はとにかく厳しく、習い事も『ピアノ』、『書道』、

『バレエ』と、これでもかというくらい予定に入れられた。

そして、将来は、潰れることのない安定企業に入り、

安定した職業を持つ男性との結婚を、何よりも望んでいたのが母だったため、

『自己』というものを持ち始めた真帆とは、以前から折り合いの悪かった間柄が、

『信用金庫退職』で、最悪のものになってしまった。


真帆の父は公務員で、母とは見合い結婚だった。

母は、自分自身が安定した職業の男性を選んだのに、

真帆が幼い頃から聞かされていたのは、その安定した父の悪口ばかりだった。

会話が楽しくない、愛想がない、そして、趣味に走り子育てに協力しない。

真帆は、寡黙な父親を軽蔑することなく、愛していたが、

信用金庫を辞めた後のいざこざに耐えられず、一人暮らしをすることになった。

『母が言うようにはならない』という思いを抱え、

真帆はまず、滑川自動車整備へと向かった。





「もしもし、『アモーラ』の緑川です。お世話になっております」


司は営業の電話をかけ、次にうかがっていい日がいつなのかと、尋ねた。

相手の予定を聞き、それをメモに取る。


「あぁ、そうですよね……」


そんな会話をしていると、会社の受付をしている女性から、小さなメモを渡される。


「はい、はい……」


司は受話器を抑えながら、メモを見る。

そこには、『ビューティークール』の院長である『茶山』の娘。

『茶山樹里(じゅり)』の名前が書いてあった。



【2-5】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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