3 人には表と裏の顔がある 【3-1】

3 人には表と裏の顔がある
【3-1】
「あ、ちょっと」


祥太郎は真帆の置いた千円札と、テーブルに置き忘れたハンカチを持つと、

すぐに後を追いかける。


「何があったのよ、騒がしい」

「ん? 妙なお客が来たんだろ」


厨房に立つ祥太郎の父、明彦は、椅子に座るとテレビを見始めたが、

食事を終えた客がお勘定をと頼んだので、立ち上がる。

右の人差し指で、間違えないようにレジを押した。



「待ってください! 待って! 忘れ物です」


真帆は特別足が速いわけではなかったので、すぐに祥太郎が追いつきさらに追い越した。

両手を広げた祥太郎に前に立たれた真帆は、その横を走り抜けられず止まってしまう。


「あの……これ」


祥太郎が出したのは、真帆が忘れたハンカチと、テーブルに置いた千円札だった。

真帆はすみませんと謝り、ハンカチだけ受け取る。


「これも」

「いえ、それはいただけませんので」

「いや、料理に満足してもらえなかったのなら、
こちらこそ、いただくことは出来ませんから」


祥太郎はそういうと、千円札を前に出し『すみませんでした』と逆に頭を下げる。

真帆は、受け取れないと首を振る。


「お料理に問題があったわけではないんです。本当にすみません、これはいいですから」


真帆も、ここで引き下がるわけにはいかないと、また頭を下げる。


「そういえば、黒木祥太郎って、言ってましたけれど、
あの……俺、どこかでお会いしましたか」


祥太郎は、真帆が慌てだした理由がそこにあるのだろうと思い、そう尋ねた。

真帆は、祥太郎が真剣に自分を見て、何かしてしまったのかと気にしているのがわかり、

こうなったら恥でも全て話すべきだと考え、日曜日、結婚式でと話を切り出していく。


「結婚式?」

「はい……あの」


祥太郎はそういうことだったのかと頷き、それは人違いだと話を続けた。


「人違いですか?」

「はい。日曜日の結婚式、風邪をひいてしまって、出られなかったんです。
だから、おそらく僕ではないと」

「出ていなかったのですか」

「はい」


真帆は、落としたハンカチを拾ってもらった人が、

『黒木祥太郎』さんの席に座っていたので、すっかりそう思っていたと話す。


「僕の席に……ですか」

「他にもお友達の方がいたようですけど……」


真帆は、すっかり『黒木祥太郎』だと思い込んでいたので、

他の名前は、見ただけで記憶に残っていなかった。


「もしかしたら司かな」


祥太郎は、真帆の話しに出てきた男性の態度を考え、

そういうことをしそうなのは、司の方だろうと考える。


「おそらく、僕がいなかったので、隣の友人と話すために、席を詰めたのでしょう」


祥太郎は、驚いたままの真帆に、きっとそうですよと笑って見せる。


真帆は、『人違い』という結末に納得し、結婚式の日、

一人で盛り上がっていたの自分の姿を思い出し、恥ずかしくなる。

真帆の行動は、いつも急上昇、急降下だと、

学生時代から陽菜や有紗に何度も注意されたことを思い出してしまう。


「あの……お時間、少しありますか?」

「時間ですか?」

「はい。司だと思うので、今、連絡しますよ」


祥太郎はその場で、ポケットから携帯を取り出し、司の番号を呼び出していく。


「エ……あ、いえ……あの……」


真帆は、『華楽』で偶然出会えれば、

話を続けるつもりでシミュレーションもしてきたが、

まさか人違いだったというシナリオは用意していなかったので、

ここで祥太郎に電話をしてもらってまで、司と話せる自信が出なくなる。


「ちょっと待ってくださいね」


それでも、祥太郎が好意でしてくれていることもあり、

断りきれずに、その場に立ち続けた。


「あ……もしもし、俺、祥太郎」

『おぉ、どうしたんだよ、こんな時間に』

「うん、今、電話で話しても平気?」

『いいよ、移動中だから』


祥太郎は、実は隣に、

『結婚式』で司がハンカチを拾ってあげた女性が来ていると、そう説明する。


『は? ハンカチ?』

「うん。結婚式で、受付をしていた着物姿の……」


祥太郎の説明で、

受話器の向こうにいる司が『あぁ……』と理解できたような返事をした。


「やっぱり司だ。覚えているみたいですよ」

「はい」


祥太郎の差し出した携帯を握り、真帆は一度大きく息を吐く。


「もしもし……突然に、すみません」


真帆は、どうにでもなれと思いながら、司に語りかけた。



【3-2】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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