3 人には表と裏の顔がある 【3-3】

【3-3】
有紗が、灰田と利用しているホテルは、食事をする場所もあり、

会議などでも利用する企業が多い場所だった。

出入りをしても怪しまれないような時間に入り、出て行くときも必ず時間差をつける。

普段から、関係を悟られないよう、用心すぎるくらい用心している反動なのか、

愛されている時の有紗は、大胆に灰田への思いを表した。

何もかも知ってくれている指と、唇に酔わされた時間は、

リミットがあるため、逆に熱いものへと変わる。

有紗は、目の前に見える灰田の頬を、両手で優しく包むようにすると、

満足げな笑みを浮かべていく。


「有紗……」


名前を呼ばれるだけで、体の芯から震えるような感覚が襲ってくる。

動くたびに貫く思いを感じながら、有紗は息を吐き続け、

もっと触れて欲しいという願いを込めて、自ら灰田の唇に触れていく。

二人の時間は甘い余韻を残し、そして現実を受け入れた。


「今、何時だろう」

「今……」


有紗はそばにあるバッグに手を伸ばし、携帯を出した。

メールの印が光っている。


「もうすぐ11時になります」

「そうか……」


灰田は、有紗の体を引き寄せ、おでこにかかる髪をどける。


「11時か。もう帰さないと。うちの優秀な秘書が、仕事でミスをしたら困る」


自分を見つめる灰田の目に、有紗はただ従い続ける。


「有紗との時間は、あっという間だな。まだ離したくないのに……」

「部長」

「この忙しさが一段落したら、もう少し……」


有紗は灰田の胸に顔をうずめ、無言のまま首を振る。


「私は、このままで十分です。こうして部長を支えることが出来たら、
それで十分ですから」

「有紗……」


有紗は、この先がどうなるのかなど、今は考えたくないと思っていた。

学生時代、バイトで知り合った人や、

社会人になってからも、それなりに男性と付き合いをしてきたが、

灰田と出会ってから、その感情は全てひっくり返された。

灰田以上に、男を感じる人に出会ったことがないと思えるほど、

その行動力に気持ちが入り込んでいく。

この人には、妻がいるのだということなどどうでもいいと、有紗は灰田を見る。

灰田ほどの男が持つ時間に、自分が入り込めているという優越感。

今の有紗を支え、自信を持たせているのは、そんな思いだった。

灰田は有紗の顎にそっと触れ、その思いに応えようともう一度唇を合わせた。



『黒木祥太郎さん発見! さらなる飲み会を開始します』



灰田と別れて電車を待つとき、有紗は真帆からのメールに初めて目を通した。

『結婚式』から話が動いたという軽い内容に、どういう意味だろうかと考える。

それでも、親友の真帆が気にしていた男性を見つけ、

さらに楽しめるのならと思い、有紗は明日は仕事が早く終わり、

電話に出るので詳しく教えてと返信した。





陽菜の元に、真帆から連絡があったのは、それから3日後のことだった。

『結婚式』の日、飲み会は嫌だと言っていたのは自分だけではなかったので、

おそらく有紗からも反対されるだろうと思っていたのに、真帆の返事はそうではなく、

有紗は快く引き受けてくれたというものだった。

となると、有紗の返事待ちをしていた陽菜も、断るわけにはいかなくなり、

真帆が計画をした『結婚式アフター会』は、1週間後の金曜日、

行われることに決まった。





「本当に決めたのか、飲み会」

「あぁ、決めたよ。なんだかさ、祥太郎と俺のこと、勘違いしていたらしいんだ。
いきさつを聞いていたら、こういうきっかけもおもしろいんじゃないかと、そう思って」


司は仕事の帰りに大輔を呼び出し、来週の金曜日だとそう報告した。

大輔はその日は仕事だと、そう切り返す。


「知ってるよ、『新町幼稚園』とやらの遠足……だろ。前に話をしていたじゃないか。
だからそこにした」


司は出されたお刺身に醤油をつけ、その上に軽くわさびを乗せる。


「そこにしたって、どういう意味だよ」

「お前の仕事は、フリーカメラマンだからさ、普段は、急に仕事が入ったりして、
なかなか約束出来ないだろ。でも、今は富永さんの縁で、『フォトカチャ』にいるから、
急に仕事で飛び出すこともないと思って」


司は、しばらく幼稚園の仕事が続くのかとそう尋ねる。


「まぁ、毎年頼まれている雑誌は、秋以降の撮影だからね。何か動きがなければ、
夏くらいまでは……」

「ふーん」


司は運ばれてきた野菜サラダを、大輔の前に押し出していく。


「なんだよ」

「お前、ちゃんと食事しているのかなとそう思って」

「どういう意味だ」

「いや……長い間、文乃さんに頼り切っていただろ。一人暮らしを始めてから、
こう、食事のバランスとか取れているのかどうか」

「余計なお世話」


大輔はそういうと、自分だって一人暮らしだろうとそう言い返す。


「俺は心配してくれるファンが、たくさんいるので」


司はこれでも、『愛』には恵まれているからと、ふざけてみせた。



【3-4】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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