4 再会の日、うわの空の心 【4-4】

【4-4】
「祥太郎、こっち!」

「司……」


祥太郎が財布を取り出して、何か買おうとすると、司が肩を叩く。


「いいよ、俺出すから」

「いいよ、そんな」

「この間、餃子までおごらせた」


司は席にいろと声をかけ、ブレンドを2つ注文した。

祥太郎は、先に席に座り、戻ってきた司に悪いなと声をかける。


「いやいや、お前がしかめっ面して歩いているからさ、これは何かあったなと。
また、親父さんとやったのか」


ブレンドのカップが、司の手から祥太郎に渡る。


「今、ケンカをしてきたというより、続いている状態だね」

「ほぉ……」


司は空になった1杯目のカップを横に置き、新しいものを前に置く。


「大学卒業してさ、もう何年だと思っているのかと腹が立つよ」

「店のことか」

「そうだよ。自分で大学を出たら好きなことをしていいって、そう言ったのに。
今でもまだ、就職がどうのこうのって……」

「『好きなこと』っていうのが、店だと思っていなかったんだろ、親父さんは」

「そんなもの、親父の勝手な言い分だ」


祥太郎は怒りの言葉を押し出したまま、ブラックのままのコーヒーに口をつける。

思ったよりも温度が熱かったのか、少し驚いたように唇を離した。


「お前もさ、大学の勉強、適当にやっておくくらいのことしないからだよ」


司は、祥太郎はいつでも真面目で、成績も優秀だったから、

親としてはもっと別の道をと思ってしまうのだろうと、そう言った。


「勉強は、ただ嫌いじゃなかったから、それだけだよ」

「嫌いじゃなかった……か。俺は、人生で一度も言ったことがないセリフだな」


司は、そういうとまたコーヒーに口をつける。


「店の売り上げだけだと、10年前より確実に落ちているから、
まぁ、親父が考えるのもわかるんだ。先のある商売じゃないって、そう……」


祥太郎は、自分だって考えがあるのだと、そうつぶやきだす。


「考え?」

「うん……うちの店、幸いなことに駅が近いし、1本前の通りには結構企業もあるだろ。
だから、今のように平屋で店の利益だけに頼るのではなくて、
上を賃貸にして、家賃収入も得る」

「賃貸……マンションにするのか」

「うん……1階が店で、2階より上が賃貸とかさ。方法はあれこれあるだろう。
専門家に相談しないと計算が出来ないしね。最上階を自宅にするのかとか……」


祥太郎の計画を、司は初めて聞いたと驚きの顔を見せる。


「そりゃそうだよ、今初めて話したし」

「言ったのか、親父さんに」

「だから、そんな話をする事が出来ないほど、グダグダ言われるわけ。
もう少し具体的に考えたいけれど、どういう人に相談したらいいのか、見当もつかないし。
変なところに相談したら、何も決めていないのに、走り出されそうで」

「まぁ、そういうこともあるな」


祥太郎は小さなやけどがいくつかある、自分の手をじっと見る。


「俺はさ、『華楽』の親しみやすさを守っていきたいんだよね。
だから、他に収入を得られるところがあれば、店は今の雰囲気のまま、
続けていけると思うから。ファミレスとは違う、個人経営の店のよさって、
絶対にあると思うしさ」


祥太郎の言葉を聞きながら、司は小さく頷いた。

大学の就職担当の先生が、祥太郎が何もしないことを知り、

頭を抱え込んでいたことを思い出す。


「お前、大学のほら、あの就職担当……」

「駿河先生」

「そうそう。あの人の寿命、間違いなく縮めたよな」


司はそういうと、昔を思い出すのか口元に手を置き笑い出す。


「何笑っているんだよ、ほら、そろそろ行こう司。遅れたら悪いだろ」

「はいはい。昔も今も、お前が一番真面目だよ」

「バカにしてるだろ」


二人は残ったコーヒーを飲み干すと、トレイを持ち、カウンターに戻す。

店を出て右に行こうとした司を掴まえ、左だと祥太郎は指差した。





「はい、大丈夫ですよ、お待ちしています」


その頃、陽菜はまだ『新町幼稚園』にいた。

遠足終了後、退園バスに乗った子供の親が、時間を間違えてしまい、

バス停に姿を見せないトラブルが起きたため、園児を下ろすことが出来ず、

また幼稚園に戻ってきてしまった。

幸い、親と連絡がつき、こちらに向かっているという報告を聞いたため、

陽菜は玄関前で遊んでいる園児に、すぐにママが来るからねと、そう声をかけた。

何事もトラブルがなければ、とっくに幼稚園を出ているはずだったが、

主任という立場もあり、それが出来なかった。

陽菜は、結婚式という共通点で集まるメンバーよりも、

店で接待をしようと、自分たちを待ち構えている瞬のことが気になりだす。

無邪気に遊んでいる子供を見ながら、これから迎える時間が、とんでもなく重い気がして、

気持ちを落ち着かせようと、大きく息を吐いた。



【4-5】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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