4 再会の日、うわの空の心 【4-6】

【4-6】
「赤尾陽菜です。『新町幼稚園』で先生をしています。
まさか、ここで今日ご一緒した白井さんにお会いするとは思わず、ビックリしました」

「俺もです」


大輔は足元にあるカメラのバッグが邪魔だと思い、自分の方に寄せる。


「大丈夫ですよ、白井さん。あまりそっちに寄せると、座りにくいし」

「でも……」

「平気ですから」


陽菜は真ん中に置いてくださいと大輔に言った後、飲み物のメニューを見る。


「二人とも、結婚式で会ったとは、全く思わなかったの?」


真帆の問いかけに、大輔は陽菜の顔を見た後、全然わからなかったと頷き返す。

陽菜は立ち上がると、カウンターの中にいる瞬に向かって、声をかけた。


「青葉さん。ミモザください」

「了解」


瞬はそういうと、ピザの皿を陽菜に渡す。

少しこげているチーズの香りが、お腹をすかせてきた陽菜に向かう。


「美味しそう」

「これは俺からのサービス。ほら、あたたかいうちに配ってやれ」


瞬はそういうと、また別のお酒を作り出す。

陽菜は頭を下げると、ピザの皿を持ち、席に戻っていく。

司や有紗が仕事の話をしていたので、一番隅の席でそれぞれ分を切り分け、

重ねてあった小皿に入れていく。


「あれ? ピザ、頼んだの?」

「ううん……青葉さんがサービスだって」


陽菜が分けた小皿を、大輔が隣の司に渡していく。


「悪いな、サービスだなんて」

「大学時代の先輩なんです。お世話になっていた教授を通じて、
よくしてもらっていたので」

「へぇ……」


真帆はそこまでしか言わずに、奥にいる有紗と祥太郎に小皿を送った。

陽菜は残ったピザのお皿を、前に置く。


「何かあったのですか、あれから」


大輔は、遠足が終わってからずいぶん時間が経ったのでと、そう言った。

陽菜は、帰りのバスでトラブルがあったことを話す。


「親が忘れた」

「はい。みなさん働いていたり、少しの時間を使って買い物をしたり、
お母さんたちも、慌しいようで。いつもの時間と少しずれたりすると、
よくあるんです。子供を渡す人がいなくて、戻ってしまうこと」

「へぇ……」


陽菜はウエイターに届けてもらったグラスを持ち、軽く口をつけた。

司が話した内容に、有紗も真帆も笑い出し、そこに祥太郎が相槌を打つ。


「あ、そうだ。昼間はおにぎり、ありがとうございました」

「あ……いえ」


大輔は、陽菜が取り分けたピザを食べると、横に置いてあった紙ナフキンを使う。


「元々、3食しっかりと食べる習慣がないやつでして。
まぁ、食べられるときに食べたらいいだろうとしか考えていなくて」

「夜も食べないのですか?」

「いや、食べますよ。でも、食事というより、そこらへんにあるものを食べたり、
店で何か買ったり……」


大輔は、自炊というものが全く出来ないのでと照れくさそうに話す。


「なぁ、大輔。先輩、どうして俺たちを呼ぶのかなって、言っていたよな、結婚式」

「ん?」


隣に座る司が、結婚式に呼ばれるほど親しい気がしていなかったと新郎のことを話し、

それに乗った真帆も、私たちも着物を着て受付をしてって言われて、

正直、驚いたのだと話を続けていく。


「いや、俺はともかく、司は呼ばれるだろう。何かというと、お前だったし」


陽菜と話をしていた大輔も、向こう側の話しに巻き込まれたため、

陽菜はその様子を見ながら、グラスに口をつける。

その視線の前を瞬がカクテルを持って通り過ぎ、

テーブルに座る女性客に、何やら話をする。

陽菜は、顔と体は、結婚式で縁を作った人との飲み会に参加しているつもりだったが、

心は、目の前を歩く瞬の姿を、捉え続けた。

瞬がテーブルから顔をあげ、陽菜の視線に入り込む。

目を合わせていてはいけないと思った陽菜は、すぐにグラスを見つめ、下を向いた。


「よし、男たちは席を移動しよう」

「移動?」

「そう。ズレないとこっちと向こうじゃ、会話がしづらいだろう」


司はそういうと、祥太郎に向こうへ回れと指示をする。

陽菜の前に座っていた大輔が、カメラがあるので動くのが面倒だとそう言ったが、

動いた祥太郎に促され、横にひとつだけ椅子をずらした。


「ねぇ、陽菜。黒木さんのお店『華楽』の五目チャーハン。
とっても美味しかったの」


真帆は、そういうと、あらためて食べに行きますと祥太郎に言った。

祥太郎はいつでもどうぞと言いながら、空になったグラスを振った。

祥太郎と司を間違えてしまい、店まで出かけた真帆は、それなりに話をするが、

陽菜は、誰に何を話しかけ、話題を広げたらいいのかもわからず、

ほとんど聞き役に徹していた。開始から1時間もすると、

それなりに空のグラスがテーブルを占拠し始めるので、陽菜は時々席を立ち、

グラスをカウンターに戻す。


「陽菜」


陽菜が振り帰ると、そこには瞬が立っていた。


「どうしたんだよ、あんまり話しをしないけれど。具合でも悪いのか?」

「そんなことないです」

「本当に? お前がそういう顔をしているときは、疲れているんだと思う。
無理するな」


瞬はそういうと、陽菜に微笑みかけ、店の奥に入った。

陽菜は何も言わないまま、席に戻る。


「そういうこともあるんですね」

「あるある……」


元々、話を進めるのがうまそうな司と有紗の会話は、

美にこだわる女性の話しになっていた。

男の院長より、女の院長の方が、全体的に度胸がある人が多いと語る。


「へぇ……そうですか」


有紗は、司の話を興味深そうに聞き、さらにそれでと続きを聞きだそうとする。


「お店を?」


真帆の『五目チャーハン』話から、

親と話し合いも出来ない不満の風船がパンとはじけた祥太郎は、

隣になった大輔と、自分の前に座る陽菜に向かって、

これからは多角経営にしないとならないと持論を展開する。


「店をおろそかにしようとしているわけじゃないんだ。
ただ、それだけで生活を成り立たせようとすると、難しいところがあるから」


祥太郎は、親が自分を信頼し、もっと相談してくれたらいいのにと、

お酒の勢いに任せて、さらに愚痴を続けていく。


「祥太郎、こうなったらさ、お前が色々調べてみればいい」


席の移動で正面になった有紗と話をしていた司だったが、

離れた祥太郎が、大輔や陽菜に愚痴っているのが聞こえてきたため、

すぐにそう口を挟んだ。

司の声に顔を上げた祥太郎に、何か知り合いの業者はいないのかと言い、

それを聞いた有紗は、どういうことなのかと聞き返す。


「祥太郎の家は、中華料理屋なんだ。で、跡を継ぐ気持ちになっているのに、
親は大学を出たのにもったいないと、そう言っていて」

「あら……」

「ですよね。普通、跡を継ぎたいって言ったら、喜ぶでしょう」


有紗と対角線上になり、席が離れた祥太郎は、少し身を乗り出した。


「あの……賃貸って……」


3人の真ん中をキープしていた真帆は、

以前『信用金庫』に働いていた経験があり、しかも担当が『融資』だった。

もしかしたらと思うことがあり、もっと詳しい内容を知ろうと祥太郎に話しかける。

しかし、祥太郎は、先に興味を持ったように見えた有紗に対して、

説明することで目一杯になってしまう。結局、真帆の声は届かないまま、

それぞれの声が重なった。



【5-1】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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