5 平然とウソがつける人 【5-2】

【5-2】
「白井さんと、あまり話せなかったな……私」


有紗は、あっさりと帰ってしまった大輔の出て行った扉を見る。


「どうしよう、少し怒っていたように見えたけど……」

「心配することないよ。あいつはね、ああいう態度しかしないから。
怒ってはいないんだな、あれでも」


司の言葉に、有紗はそれならいいけれどと、財布に触れながら言った。

陽菜は、今のタイミングで出て行けた大輔の行動が、うらやましく思えてしまう。


「赤尾さん」

「はい」

「大輔のこと、よろしくお願いします」


祥太郎はそういうと、あいつは愛想がないけれど、

真面目ですからと、急にフォローする。


「どうした祥太郎」

「だって、大輔、赤尾さんの幼稚園で仕事をするんだろ。だから……」

「大丈夫です」


陽菜はそういうと、財布から会費を取り出しテーブルに置いた。





駅までは一緒のメンバーもいたが、陽菜だけは都心から離れる方に向かうため、

電車に乗った瞬間から、一人になった。

陽菜は、次は誰が結婚するのかと茶化した瞬の言葉を思い出し、

やはり、自分が思っているような感情は、彼の中にないのだと痛感する。

忘れるためには、もう顔を見せないほうがいいだろうと思うのに、

縁を切ってしまうことが、どこか怖い気もして、決断が出来なかった。

空いた席に座り、携帯にライトが光っていることを確認する。

届いているメールは2つあり、片方は『緑川司』だった。

これはきっと、メンバー全員のアドレスを送ってくれているのだろうと思い、

もう一人の方を見る。



『青葉瞬』



陽菜が、一人になることをわかっている瞬からのメール。

陽菜は、司のメールよりも先に、瞬からのメールを車内で開いた。



『陽菜は、あの3人のうち、誰を選ぶの』



瞬はまだ、店で仕事をしているだろう。

その中で、これだけの文章を陽菜に送って寄こした。

全く気にしていないと思っていたのに、どこか意味深な文章がそこにあり、

また気持ちが、相手の思うままに乱される。

選びたかったのは誰なのか、陽菜は瞬がそれを知っていて、揺さぶっているのか、

それとも、そうではないのかがわからず、すぐにメールを閉じる。

司の寄こしたメールを開くと、『お疲れ様でした。また会いましょう』の文字とともに、

確かにメンバー全員のアドレスが記されてあった。



『白井大輔』

『黒木祥太郎』

『緑川司』



あの日、先輩の結婚式に出ていなければ、

こうしてお酒を飲むことなどなかったはずの3人。

陽菜はとりあえず、連絡ありがとうございましたと司に向かって、

返信メールを打ち込んだ。



『黒木祥太郎』



その頃、別の電車の中では、真帆が祥太郎のアドレスを見ていた。

最初のきっかけは、確かに司のことを祥太郎と間違えてしまったことだったが、

実際に店に向かい、話した本物の祥太郎の印象は、思っていた以上にいいものだった。

さらに、店を変えていきたいという話しに、過去、『信用金庫』にいたという、

自分の知識がいかせるのではないかと思い、前に出ようとしたが、

その声は祥太郎に届かないままになってしまった。

祥太郎は、最初に話をした有紗を、気にしているように見えた。

姿勢がいいことに始まり、自分の計画に興味を持った有紗に対して、

熱心に説明している姿が、真帆の脳裏に蘇る。


「はぁ……」


そういえば、昔からこうだったと、真帆はため息をついた。

別に、男性に言い寄ったりするわけではないが、

男の人たちは有紗に気持ちを持っていかれることが、昔から多かった。

秘書という仕事柄もあるのか、男を立てるという行為が、

自然に身についているからなのか、話を聞くこともうまい有紗は、

真帆の知らない人の番号を知っていることがあり、

スタートは張り切るものの、結局、真帆の気持ちはいつもしぼんでしまう。



『私、信用金庫の融資にいました。
そういうお話なら、何かお力になれるかもしれません』



たったそれだけのことが、結局言えないまま、真帆は外の景色を見ながら、

意味なく携帯のスクロールを続けた。





同じように、司からのメールを受け取った有紗は、

それぞれの連絡先を確認だけして、すぐに『灰田』宛てに文章を打ち込んだ。

明日は、予定していなかった打ち合わせが入るけれど、忘れていないかなど、

あくまでも文章は、仕事の内容だけに抑える。

しばらく車内に揺られていると、その灰田からすぐに返信が届く。



『明日は忙しいからね、頼むよ』


当たり前の文章が届き、有紗はさらにその続きを読む。


『どうだった? 飲み会は』


有紗は、灰田が寄こしたメールに、

飲み会を少しでも気にしてくれた言葉が入っていたため、満足感を味わった。

そもそも仕事の連絡など、明日一番にすればいいのだけれど、

こうして気にしてもらえることで、自分が愛されているのだと、そう感じ取る。

有紗は、数合わせに出かけただけですからとまたメールを打ち込み、

冷静なふりを装ったまま、灰田に返信した。



【5-3】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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