6 白と黒、オセロとは限らない 【6-1】

6 白と黒、オセロとは限らない
【6-1】
陽菜が憂鬱な気持ちを抱えながら、電車に揺られている頃、

大輔は、社長から思いがけない仕事の話を持ち込まれていた。


「『フォトラリー』の仕事ですか」

「そうだ。昨日、宮石から連絡があってな。口が堅くて、
しっかりと動ける男をと言われて。これは大輔しかいないとそう思ったんだ」


大輔が社長の富永に残れと言われたのは、この仕事についての相談だった。

『フォトラリー』とは、男性向けのビジネス情報誌で、部数もここ数年伸びている。

時代の流行にも影響するような力強さと、

時には、政治家などのスキャンダルにも切り込む鋭さがあった。

今、『フォトカチャ』の代表をしている富永は、

元々、この『フォトラリー』を出版する会社の別雑誌、『スカッシュ』の編集長だった。

白井大輔というフリーカメラマンを知り、写真のよさを認め、

仕事をくれたのもこの富永で、

経済誌の中にある、コーナーの写真を2年近く担当させてもらった。

しかし、時代の流れか、『スカッシュ』は休刊となる。

今回、仕事を依頼してきた『フォトラリー』の編集長宮石は、

当時、『スカッシュ』にいて、富永の下で働いていた編集者だった。

『スカッシュ』の流れを受け継ぎ、

さらに時代に鋭く迫る雑誌を築こうと誕生したのが、『フォトラリー』になる。


「詳しい話しは、宮石がするから、ようはお前がやれるかどうかなんだよ」

「どこか、戦闘地帯にでも行くとか?」

「いやいや、そんなことじゃないんだ。
ただ、大手企業のクーデターが起こるかもしれない話しだからね。
相手のあることだから、急な呼び出しも数回では済まないかもしれないし。
絶対に、やり遂げるという意思がないと、難しいと思うから」


富永は、幼稚園の園児を追うのとは、仕事の内容が全く違うと話し続ける。

大輔はその話を聞きながら、大きく頷いた。


「富永さん、やりますよ、俺」


大輔は、元々、『ノンフィクション』に興味を持ち、写真を撮ってきたため、

多少、困難であっても、やりがいのあるものなら引き受けたいとそう告げる。


「そうか、それならまずは宮石に会ってくれ」

「はい」


富永は、事務所の電話を取ると、すぐに宮石へ連絡を入れた。





大輔は富永に話をつけてもらい、次の日の朝『フォトラリー』の宮石を訪ねた。

この出版社を訪ねるのは、久しぶりになる。

正面玄関に入り受付に立ち名前を告げ、宮石のことを話すと、

すぐに内線電話がつながった。


「宮石は4階の『フォトラリー』編集部におります。どうぞ、お入りください」

「はい」


大輔は入社許可書のようなものを受け取り、それを首からぶらさげると、

そのままエレベーター前に向かった。

Tシャツ姿で大あくびをしている人がいるかと思うと、

ミニスカートで、高いヒールを履いた女性もいる。

出している雑誌、仕事の内容によって、着る服装や態度が違うのは、

出版社どこでも共通部分だと思いながら、大輔は開いたエレベーターに乗り込んだ。

誰も4階のボタンを押さないため、少し前に出ると、ひとさし指で4の文字に触れる。

大輔を乗せたエレベーターは、静かにゆっくりと上昇し始めた。



「白井大輔です」


大輔は編集部に入ると、すぐに出て来てくれた宮石に頭を下げた。

宮石は、入り口から少し入った場所にあるソファーに座れと、

誰が置いたのかわからないクッションを軽くはたき、

どこかに放り投げながら、そう言った。


「富永さんはね、僕にとっても先生のような人だから。
白井さんが、富永さんの紹介というのなら、間違いないよ。はい、面接終わり。
ここからは雑談でもしよう」


宮石は、大輔の顔を見ながら笑顔になる。

しばらくは、大輔がどんな仕事をしているのかなど、世間話が続けられた。

どこかからアイスコーヒーが届き、それがほとんど空になる頃、宮石の表情が変化する。


「ということで、そろそろ本題に入ることにするよ」

「はい」


宮石が出してきたのは、『リファーレ』の名刺だった。

社名の横にある『ロゴ』を見て、大輔はこの間の飲み会で会った有紗の顔を思い出す。


「『リファーレ』でね、クーデターが起こるんだ。創業者一族の中で、
直系と言われている息子、これがとにかくダメらしくて。
それでも、父親がいた頃はまだ光る目によってどうにかなっていたが、
昨年、その重石が病気で倒れてね。今まで、しばりつけられていた息子は、
これで自分の天下だと、いきなりおかしなことをし始めた」


宮石の話しによると、すでに地下で『創業者一家』を追い出すという、

次のステージに向かう準備は進められているらしいのだが、

次に出てくる勢力の中でも、また色々と小競り合いがあるのだと説明をされる。


「あいつを信用しようと、表向きは動かしているけれど、
実はって……まぁ、権力を持つとさ、疑わしくなるんだろうな」


宮石は、単純に生きれば、人生もっと楽しいのになと大輔に語る。

大輔は、自分にはあまり縁のなかった話題に、肯定も否定も出来ずに黙ってしまう。


「で、追いかけて欲しいのは、この男なんだ」


宮石が出してきたのは、1枚の写真だった。



【6-2】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
みなさんのコメント、拍手、ポチなど、お待ちしてます。

テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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