6 白と黒、オセロとは限らない 【6-2】

【6-2】
どこかの立食パーティーで撮られたものだろうか。

ターゲットと言われた男性の周りには、数名の人物が立っている。


「『リファーレ』の広報部長、灰田啓次」

「広報部長ですか」

「うん。彼は元々、色々な企業のコーディネーターを引き受ける男だったけれど、
このクーデターを企てるリーダーが見込んで、引き抜いたという素材なわけ」


宮石は、写真に写る男の顔を、そばにあったペンで軽く叩く。


「まぁ、この顔だからね。女にもとにかくもてる。
学生時代から自家用クルーザーを乗り回すような、お坊ちゃまだからさ。
金回りもいいし、今も、愛人と言えるような存在が、数名いるんじゃないかな」


宮石は、それでも灰田の妻は、動じることなどないのだと、笑い出す。

大輔は写真を見ながら、どうして動じないのですかと問いかけた。


「妻は職業婦人だからね。忙しいんだよ。外国に行ったり、自由気ままさ。
子供もいないだろ、だから、旦那に擦り寄って来る女のことなど、
お手伝いくらいにしか思っていないそうだから」

「お手伝いですか」

「そうそう。私がやらなければならない旦那の色々な面倒を見てくれて、
ありがとうね……てなものでしょう」


宮石は、同じ地球に生きているけれど、全く理解が出来ないと数枚の用紙を取り出した。

そこには、色々な店やホテルの写真と地図が入っている。


「で、仕事の具体的な中身だけれど、とにかく、これから数ヶ月間、
この灰田の動きを追って欲しいんだ。普段から彼は積極的に外へ出るタイプでね。
テレビ局、スタジオ。それから業界関係者との食事会など、まぁ、顔も広い。
そこに『リファーレ』を変えようとした男たちが目をつけたわけなので、
おおよそのスケジュールは、調べてもらったけれど、
これ以外にもすぐに情報が入り次第、動いてもらいたい」

「全てですか」

「いやいや、全て追っていたら、君の生活が成り立たないよ。
実際、灰田を追ってもらうカメラマンは、あと数人いるんだ。
白井君に追って欲しいのは、この丸をつけた日」


宮石はそういうと、スケジュールの欄にいくつか丸をつけ始めた。


「おそらくクーデターが起きたときには、この灰田が表面に出てくるのだろうけれど、
それが目立つ存在だから、こうしてネタを取っておこうといううちの方針も、
わかるようなわからないような……ねぇ」


宮石はそういうと、大輔に契約内容について語り始める。

大輔は最後まで読み終えると、わかりましたと書類にサインした。





『リファーレ』の秘書課。

有紗は灰田のスケジュールをチェックし終えた後、

撮影現場近くにあるコンビニを確認する。

タレントなどには色々と気をつかうスタッフも多いが、担当企業の上司になると、

身内なのか区別がつきにくくなる。

有紗は、休憩時間に灰田が好むコーヒーをすぐに買える場所を考え、

あらかじめしるしを入れる。


「山吹君」

「はい」


灰田からの声がかかり、有紗は他のメンバーに頭を下げると、秘書室を出た。



車に乗り込み、灰田の横に座ると、有紗は今日の予定を確認しようと、

手帳を取り出した。CM撮影の陣中見舞い、

テレビ局では提供時間に放映される次のドラマについて、話を聞くことなど、

漏れたり間違えたりのないよう、しっかりと時間を読み上げる。


「あぁ……わかった。その都度、山吹君が指示を出してくれ。
撮影現場などにいると、つい、時間を忘れてしまうから」

「はい」


有紗は手帳をバッグに入れる。

有紗の空いた右手を、灰田がそっと包み込む。


「頼りにしているよ」


その手のぬくもりに、有紗は小さく『はい』と頷いた。





「なんだこれは」

「なんだじゃないよ。俺が色々と考えたことだ」


その頃、『華楽』では、祥太郎と父親の明彦が言いあいになっていた。

今まで、自分の考えを押し殺してきた祥太郎だったが、先日の飲み会で、

酔っていたとはいえ、メンバーに自分の考えを披露し、

それはいいのではないかと、後押しをされたことで自信を持った。

まだ、具体的な業者などに話をしているわけではないが、この家を建て直して、

賃貸料金を得る方法を取れば、自分が跡取りになっても、やっていけると宣言する。


「バカ言うな。賃貸マンションなんて、タダで建つ訳がないだろう」

「タダって……当たり前だろう、そんなこと。そこまで俺はバカじゃない」

「いや、お前はバカだよ。大学まで出してやったのに、何が中華料理屋だ」

「お父さん」


母親の圭子は、こういったとき、いつもどちらの味方につくこともなく、

オロオロするだけだった。今日もまた、どちらにもつかず、

目をあちこちに動かすのだろうと思っていたら、圭子は祥太郎の前に立つ。


「お父さん、私は祥太郎が店を継いでくれるということを、嬉しく思ってますよ」

「……は?」


それは、母、圭子の初めての自己主張だった。

思いがけないところから援護射撃を受けた祥太郎は、

これはこの勢いに乗るべきだと、さらに訴える。


「父さんは、成功した例を知らないから、怖がっているんだ。そういったビジネスで、
成功している人はたくさんいる。僕の知り合いにもいるし」

「知り合い?」

「あぁ……」


祥太郎はそういうと、具体的に調べてくると胸を張る。

半信半疑の明彦に比べ、圭子は、息子の成長を喜び笑顔になっていた。



『山吹有紗』



飲み会の時、有紗本人から名刺をもらった。

その後、メールアドレスをまとめた司から、

女性メンバーのアドレスが、一斉に送られてきた。

祥太郎は、有紗のアドレスを呼び出すと、

一緒に知った携帯番号に回してみようかと考える。

しかし、時間を見ると、まだ昼前だった。

秘書をしている有紗は、今頃、電話など出られないかもしれない。

祥太郎は電話を取りやめ、アドレスを呼び出すと、先日は楽しかったという挨拶から、

実はお願いしたいことがありますと、文章を打ち込んだ。



「おぉ、やはり黄原さんはしっかりしているな」

「いえ」


その頃、『原田運送』では、真帆が社長の出した書類のミスを指摘し、訂正の最中だった。

仕事を終えると、昼食を買ってきますと事務所を出る。

歩いて2分もすると、一番近いコンビニがあるので、

真帆は、ほとんどその店で昼食を買っていた。

店内を歩き、お弁当のコーナーで足を止める。

から揚げ弁当や、いなり寿司の近くに、『五目チャーハン』があった。

真帆は左手で容器を取る。

先輩の結婚式で、司と祥太郎を間違えたまま、ただ、出会いかもしれないと、

勢いで『華楽』へ向かった。その時注文して食べた『五目チャーハン』。

美味しいイメージだけは残っているものの、食べ切れなかったことが、

今の気持ち同様に、どこかもやもやしていた。

結婚式の出会いがあり、6人で飲み会まで開き、連絡先も交換したのだから、

今度は、堂々と食べに行くことも可能なのだけれど、真帆には逆に、

『華楽』が遠くなった気がしてしまう。

座る場所もあっただろうし、有紗が知り合いの話をしたからかもしれないが、

祥太郎の目は、明らかに有紗を中心に捕らえていた。

『銀行の融資』という得意分野の内容だったのに、参加できなかったことが、

どうも悔やまれ、そして、敷居を高くしてしまう。

真帆は『五目チャーハン』の容器を下に戻すと、その隣の列にあった、

ミートソースのスパゲッティーを取り、レジに向かった。



【6-3】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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