6 白と黒、オセロとは限らない 【6-3】

【6-3】

「先生、さようなら」

「みなさん、さようなら」


本日、午前保育の『りす』組では、陽菜が終わりの会を終え、

バスの園児と、お迎えの園児をそれぞれ振り分けた。

バス担当の助手に園児を渡し、お迎えに来た母親の世間話に耳を傾ける。

全ての園児が手から離れ、自由な時間を持つことが出来たのは、

『さようなら』の挨拶から1時間後のことだった。

職員室に戻り、持ってきたお弁当を開く。

携帯を取り出し、メールをチェックすると、『青葉瞬』の印が目に入った。

陽菜はすぐにメールを開く。



『陽菜 ごめん、色々と悩んだあげく、こうしてメールを送ってしまった。
僕が今更、君のプライベートを気にするのはおかしいだろうけれど、
どうしても気になってしまって。一度店へ来ないか』



『君のプライベートを気にするのはおかしい……』

陽菜は、それがすぐに司のことだとわかった。

今まで、店への誘いなどはあったものの、

これだけしっかりと内面を見せてくれたメールは、久しぶりに受け取る気がする。

『擬似カップル』を演じることに決めた相手とはいえ、司は、陽菜から見ても、

女性の扱いに慣れているように思え、話す内容も楽しく、

一緒にお酒を飲んでも、退屈するようなところが全くなかった。

おそらくあの日も、笑い声が店に響いていたはずで、さすがの瞬も、

『気にする』状態だったのかと思うと、なぜか笑みが浮かぶ。

どうせなら、もっと焼き餅を焼かせ、気持ちの奥を知りたいと思った陽菜は、

瞬にメールを送る前に、司へ、誘いのメールを入れた。



『先日は、ごちそうさまでした。また、お会いできますか』



陽菜からの誘いのメールは、司に届けられた。

司は、電車を待つホームで、すぐに返信をする。



『ありがとうございます。いつでも受けますよ』



契約だとわかっていても、どうせなら楽しいほうがいいと思い、

司は近日中の再会を約束した。





有紗は午前中の仕事を終えて、灰田ととあるテレビ局へ向かった。

編成部長と呼ばれる男性と、数名の社員が並ぶ中、

同じように番組を提供する企業のメンバーと、会議室に入る。

出てくるまでの間、少しの休憩時間があったため、有紗は1階にある喫茶店に入り、

アイスティーを注文した。

メールをチェックしていると、そこに祥太郎からのものを見つける。

祥太郎は、先日、有紗が言った『先輩の実家の話』を覚えていて、

それを具体的に聞くことが出来ないかと、そう送って来た。

有紗は、祥太郎があの結婚式からわきあがった、飲み会の仲間というのは覚えていたが、

『先輩の実家の話』をどう話したのかまで、正直、覚えていなかった。

昔から、人に合わせて頷いたり、拍手をしたり、楽しいふりをすることは得意だった。

それでも、祥太郎にあらためてどういうことですかと聞くのは申し訳ないと思い、

有紗は真帆に電話を入れる。

呼び出しが数回鳴り、真帆の声が聞こえてくる。


「あ……真帆、ごめん仕事中に、私」

『どうしたの有紗』

「あのさ……」


有紗は、先日の飲み会で出会った祥太郎のことを話しだした。

真帆は、祥太郎が有紗に告白でもしたのかと思い、急に鼓動が速くなる。


「あの黒木さんって、どんな話をしていたっけ」

『エ?』

「あのさ、中華料理屋さんの人だよね。結婚式に出なかったっていう」

『うん』


有紗は、おおまかなことは覚えているようだったが、細かい話しは覚えていないと、

そう言い始める。


「メールが来たのよ。なんだか『先輩の実家の話し』って……」

『あぁ……』


自分に関係ありそうだと思った真帆には、祥太郎の話がしっかりと頭に残っていた。

それはと言おうとしたが、言葉が止まる。


『黒木さん、なんだって?』


真帆は、そう有紗に聞いた。


「だからわからないんだけど、その話をしてくれないかって……つまり、
会いましょうってことだと思うの」


有紗は、会うのは構わないのだけれどと、言い始める。


「話しの内容がわかっていなくて会うのは失礼でしょ。だから真帆に聞いたのよ。
なんだっけ、彼の話し」


真帆は、祥太郎が有紗に『再会メール』を送ったと聞き、

やはりそうなのだと、受話器を持ちながら頷いていく。


『そっか……再会しましょうってことだよね』


最初にきっかけを作り、『華楽』に向かったのは自分だったが、

真帆を通り越した祥太郎の目は、やはり有紗を見ていたのだと、そう思う。


『黒木さんのお店、ほら、賃貸にするって話し……』

「賃貸?」


有紗の問いかけに、真帆は一生懸命あの日のことを語り、

祥太郎がなぜ有紗に連絡をしたのか、それを話し続けた。



【6-4】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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