6 白と黒、オセロとは限らない 【6-5】

【6-5】
「向かう合うって……だって陽菜」

「わかっているよ。向こうは結婚した。それはしっかりわかっている。
だから、覚悟を決めたいの」


陽菜は、瞬が自分をどう思っているのか、自分自身で確かめたいと、

そう言い始める。


「どう思っているって……」

「言葉の通り、どう思っているのか……。青葉さんから言葉として聞けたら、
それで諦められると思う。『君とは終わっているだろ』とか『昔のことだから』とか。
真帆の言うとおり、いつまでも同じ場所にとどまっているのは、
精神的にもよくないしね」


陽菜はそういうと、インスタントの味噌汁が美味しいんだよと、真帆に勧めていく。


「うん……」


真帆もお椀を持つと、味噌汁を飲んだ。

陽菜に明るく言われたため、とりあえず頷いてみたが、

真帆は納得できたわけではなく、お椀を持ちながら陽菜の顔を見る。

陽菜は、醤油が少ないかもしれないと、立ち上がった。


「陽菜、ねぇ……」

「何?」


醤油差しを持った陽菜が動きを止め、振り返る。


「もしさ……もし、青葉さんが今でも陽菜のことをって、言い出したらどうするの?」


真帆は、結婚したけれど、陽菜のことを瞬自体が諦めていないと言ったら、

どうするつもりだと問いかける。

陽菜は、あらためて醤油を入れると言うと、そのままキッチンに向かった。

真帆の言いたいことも、心配するのもわかるだけにいい返事が出来ない。


「……どうするの?」


真帆は、もう一度問いかける。


「……だから聞くの」

「だから?」

「そう……このままではダメだと思うから。
色々な意味で、中途半端は終わりにしたいと思うから聞くの」


陽菜は、どういう状況になっても、白黒ハッキリさせたいのだとそう話す。

真帆は、陽菜に対して、これ以上、聞きだそうとすると、

聞いてはいけないところまで入り込みそうな気がしてしまう。

陽菜の性格からも、今まで思いを引きずっていることからしても、

どこかでわかっていたことなのに、真帆は、口に出したことを後悔する。

それは、瞬の気持ちさえ確認できたら、前へ進むのだという、陽菜の無言の宣言。


「ねぇ、どう? 味」


真帆は、インスタントもバカにならないねと笑い出す。

陽菜はそうでしょうと、嬉しそうに頷いていく。


「ところで真帆はどうしたのよ」


陽菜は、急に来るなんてと真帆に話を振っていく。

ここへ来る前は、あまり細かく気持ちを語ろうと思っていなかった真帆だったが、

陽菜の正直な思いを先に聞いてしまったため、自分も心のトゲを抜くべきだと、

有紗からのメールのことを話しだす。


「再会?」

「うん……黒木さんが有紗に会いたいってメールしたみたいなの」

「ふーん」

「それはいいんだ。誰が誰を選ぶかなんて、私に言えたことじゃないし。
ただ、有紗ったら、黒木さんが何を話していたのか、覚えていなくて。
でもね、有紗のことだから、きっと、うまく話をあわせるとは思うの。
ただ、その話がこういうことだったんだよと、一生懸命フォローした自分自身が、
なんだか情けなくてさ」


真帆は、コップに入った麦茶を飲んだ。

陽菜は、真帆の言葉の端々から、祥太郎に対し恋愛感情を持ったことに気付く。


「母から、また『公務員』さんのお見合い写真が届いたの」

「うん」

「毎度、毎度、話しに出てくるのは、不況に強いから絶対に生活に困らないから、
真面目だからってこればっかり。それなのに、公務員である父のことは、
面白みがないって平気で言うくせにね」


真帆は、そばにあったクッションを膝に抱える。


「でもさ、いらないって毎度突っぱねるくせに、私、自分に自信がないのよ。
これがきっかけだ、縁作りだって、動いているときは楽しいの。
でも、その動きがどうなるのかって予想がついた瞬間、
自分自身が、どうしたらいいのかわからなくなるというか……」


真帆は、私ではない人のところに行ってしまうのは、

自分に魅力がないからだけれどと、自嘲気味に笑う。


「真帆……」

「何もかも中途半端なんだよね、私。もっと思い切って恋愛していけば、
みっともなく振られちゃうことも覚悟して頑張れば、色々なことに強くなるだろうし、
こなせる力もつくのかもしれないけれど、こう……臆病というか」


真帆は、『結婚』という形を取った瞬に対し、

立ち向かうと言った陽菜の顔を見た後、すぐに目をそらす。


「臆病? そうじゃないでしょう。それが真帆のいいところじゃない。
実際、お嫁さんにしたら、真帆が一番いいよって、いつも有紗と話していたよ」

「ウソ」

「ウソじゃないって。人に気をつかえるし、初めての人でも気軽に話せるし」


陽菜は、私が褒めても嬉しくないよねと、笑ってみせた。



【6-5】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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