7 隠している思いを見た男 【7-1】

7 隠している思いを見た男
【7-1】

「エ!」


有紗のメールを受け取った真帆は、思わず声をあげた。

『原田運送』の社長と部長が、何かあったのかと、慌てて立ち上がる。


「すみません、大丈夫です」


真帆は、有紗が勝手に自分をメンバーに入れ、

しかも『元信用金庫』にいた過去を、知らせたことに戸惑っていた。

祥太郎自身が、真帆の情報を必要としてくれるのなら構わないが、

店のことなど、有紗と会うための口実だと思っていたので、

自分の存在が邪魔ではないかと考え出す。


「もう……」


有紗の勝手な行動に怒りを覚えながらも、どうせ会うことになるのなら、

祥太郎に喜んでもらえるようにと、

真帆は、融資について、自分自身でも調べなおすことにした。





そして、陽菜と司が会う約束の日。

陽菜は時間よりも早く店についた。

扉を開くと、迎えてくれたのは瞬ではなかったが、カウンターの奥にその姿を見つける。

瞬は、陽菜に近付いた。


「陽菜……」

「青葉さん、後で話しましょう。私、待ち合わせなので」


陽菜はそういうと、以前も使った席を選んだ。

そして、カウンターにいる瞬が見える場所に座る。

ウエイターが来たので、相手が来てから頼みますとそう話す。

5分もすると、司が店に姿を見せた。





「また俺の方が遅いね」

「そんなことないですよ、十分間に合ってますから」


司は陽菜の前に座ると、ウエイターを呼ぶ。

それぞれの注文をした後、荷物を横に置いた。


「覚えましたよ、赤尾さんの基本情報」

「はい、私も覚えました、緑川さんの基本情報」


それぞれそう言いきると、自然と笑みが浮かぶ。

実際に会うのは、来週の週末で大丈夫かと、司は陽菜に尋ねた。


「はい。なんとか頑張ります」

「まぁ、僕があれこれ話しますから。とにかく存在があれば納得するでしょう。
本当に面倒なことだと、自分自身思いますけれど、営業マンの辛いところです」

「いえいえ」


陽菜はそういうと、グラスに口をつける。


「そうそう。この間、真帆が家に泊まりに来て、緑川さんのメモを見て、
驚いていました。もちろん事情は説明しましたけど」

「真帆……あぁ、黄原さん」

「はい」

「そういえば、今度4人で会うことになりました。祥太郎の家のことで」

「家? 建て直しのことですね」

「はい、そうです」

「真帆も話してましたよ、黒木さんの家のこと」


陽菜は、真帆は昔、信用金庫の融資にいたので、

きっと役に立つ情報を持っていると、そう話す。


「そうらしいですね。山吹さんのメールにそう書いてあったって。
でも、それならこの間の飲み会で、言ってくれたらよかったのに」


司は、真帆はそんな話をしなかったと、言い始める。


「あぁ……そうかも。でも真帆って、すごく人なつっこいんですけど、
実は、臆病なところもあって」

「臆病……ですか」

「はい。その日も、黒木さんが有紗に一生懸命話しているのを見て、
きっと、自分が出て行くのは悪いとか、そう思っていたようで」

「悪い? いやいや、どうして。理想と空想だけで走っている祥太郎には、
今、現実を知っている人の知識が一番必要でしょう」


司は、そんなこと気にすることないのにと、少しだけネクタイを緩める。


「いえ、それが真帆なんです。私が口を挟むのは邪魔かな……とか」


陽菜は、昔からそうだと思い出話をし始める。


「真帆がいると、すごく場が和むんですよ。男性でも女性でも楽しく話ができて。
でも、ちょっと考えたり気にしたりすると、とたんに引いてしまうんです。
自分は下がってしまうというか……。いや、下がりすぎてしまうというか」


司は、そういう人なのかと頷いた。


「下がってしまうか……。より人に気をつかうんだね」

「はい」

「そっか……黄原さんって、そんなところもある人なんだ」

「そうなんです」


陽菜は、笑ったり落ち込んだりする真帆の顔を思い出す。

何かがあると、いつも潤滑油のように動いてくれたのは、真帆だったと、

知り合ってからの出来事を、頭の中で振り返る。


「そんな不器用な人こそ、幸せになれるといいですけどね」


司はそういうと、軽く笑って見せる。

陽菜は、言葉を出した瞬間、司がどこか遠くを見た気がしてしまう。


「そっか、彼女、そういう人なんだ……」


その日の二人は、互いの話をしながら、楽しい食事の時間を持った。





「それじゃ、当日」

「はい」


陽菜は司と挨拶を終えると、駅に向かう素振りをした。

陽菜は、司の姿が見えなくなった後、あらためて『ミラージュ』へ戻る。

店はまだ終わりではないけれど、それほどの混雑もないため、

カウンターの中にいる瞬に声をかけた。

瞬は、店のことを別の店員に任せ、陽菜と一緒に近くの公園に向かった。



【7-2】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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