7 隠している思いを見た男 【7-4】

【7-4】
「何? 司、赤尾さんと付き合い始めたの? エ? そうなんだ。
あ、そうか、今、赤尾さんがどうのこうのって……」

「何を慌てているんだよ。カップルは2週間限定だ」

「……何それ」


司と真帆は顔を見合わせて笑い、祥太郎はどうして笑うのかと不機嫌な顔をする。


「ごめん、ごめん。ちょっと俺が頼みごとをしてさ。
赤尾さんに協力をしてもらうことになったわけ」


司は、取引先のお嬢さんから好意をもたれたこと、

親もなぜかその気になっていることなど、話しの流れを順序良く語る。

それを跳ね返すための『擬似カップル』だと語ると、

祥太郎はそういうことなのかと、頷いた。


「あの……」


真帆は、祥太郎の顔を見る。


「ごめんなさい。有紗からメールが入って。20分くらい遅れるって。
秘書課って、予定通りになかなか終わらないから」


真帆は、有紗が遅れるということを話すと、祥太郎がガッカリするのではないかと思い、

有紗自身はこっちにこようと思っていたのにと、懸命に事情を語る。


「いいよ、いいよ。仕事は仕方がない。よし、それなら3人で先に始めようか」

「あぁ……」


祥太郎もファイルを横に置き、真帆は、司がいた場所に移動する。


「すみません」


司が手をあげると、ウエイトレスがすぐに気付いてくれたため、

3人は先に注文をし始めた。





「この書き方だと、おそらく……」


最初こそ遠慮していた真帆だったが、祥太郎から計画案を見せられ、

それならばとわかる限りのことを、アドバイスし始めた。

お酒も入ったからなのか、話もスムーズに進む。


「そうか、返済の目安ね」

「はい。銀行にとっては、確実に返済できるという根拠が欲しいんです。
でも、黒木さんの『華楽』は、土地も黒木さんの家のものですし。
実際、あのあたりだと……」


真帆は、家賃相場の話を持ち出し、そこら辺も調べた方がいいと、語り続ける。


「家賃ね」

「はい。家賃収入がしっかり入ることがわかれば、融資もされやすいですし」

「うん」


司は、二人の話を聞きながら、邪魔にならない程度の相槌を入れていく。

きっかけは、祥太郎の『華楽』だったが、そこから話しは学生時代のことに広がった。


「同じ大学ですか」

「そう。俺たち揃って、『秀南大学の経済学部』」


司は、自分と大輔は、いつもスレスレで進級したけれど、

祥太郎は学年でもトップを取り、表彰までされたのだと、昔話を披露する。


「偶然だよ、なんとなく」

「なんとなくで表彰されるか。お前は真面目だからさ」


司は、それなのに就職活動もしないで、実家を継ぐ気になっているのは、

おかしいだろと、真帆の顔を見る。


「いや、おかしいというか……」


真帆は祥太郎を思わず見てしまい、すぐに視線をそらす。


「ほら、祥太郎。お前はおかしいって、黄原さんが見ただろ、今」

「違います。そうではなくて」


真帆は、手を左右に振りながら、

就職しようという気持ちはなかったのかと、祥太郎に尋ねた。


「就職かぁ……何も思わなかったな」

「何も、ですか」

「うん。小さい頃から店の仕事が好きで。
正直、大学に行かなくてもいいと思っていたからね。
でも、父親は大学を出ないと後悔するって言うし。まぁ、それなら行くだけ行って。
後は好きなことをさせてもらおうと思ったんだ」


司は真帆に向かって、変わり者だろとつぶやいてみせる。


「企業に入ってする仕事も、素晴らしいとは思うけれど、
俺は、『中華料理』を作る人が、下だとか、そういう思いはないんだ。
小さい頃からそれをずっと見てきたし。子供の頃からかっこいいと思えたしね。
人生は一度しかないのだから、やりたいことがやれたほうがいいわけで」


真帆は、祥太郎が『安定』や『名誉』や『給料』で、

仕事を選ばなかったということを知り、黙って頷いていく。


「新しい時代の経営を、してみたいわけ」


真帆は、祥太郎の仕事に対する考え方を知り、

自分の知っていることなら、全てを話そうと考えた。

ここまで考えているのなら、

もう少し具体的に書類を書きなおしたほうがいいのではと言おうとしたとき、

有紗が入ってくる。


「ごめんなさい、遅れてしまって」

「あ……こんばんは」


有紗はすみませんと両手を合わせると、空いていた祥太郎の左隣に座った。

ウエイトレスが注文を取りに来たので、有紗は同じようにビールを頼む。


「黒木さん、お誘いありがとうございました。あれから先輩に連絡を入れて、
もし、必要なら、具体的にどんな形で進めたのか、聞いてもいいようなことを……」


有紗は、祥太郎の顔を見ながら、すぐに話を切り出した。

真帆は、有紗が出てきたので、自分の役目はここで終わりだと思い、

飲みかけのビールに口をつける。


「これ……何?」

「あぁ……これ、俺がなんとなくこんなふうにしたいって、
親に話をするために書いた計画書なんです」


祥太郎はファイルから取り出すと、有紗の前に置く。


「へぇ……なんだかすごい」


有紗は、目の前に座る真帆を見た。


「真帆、話を聞いてあげた?」


有紗は、真帆が昔、信用金庫に勤めていたから、

こういう数字が得意だと祥太郎に話す。


「うん、それで、今、色々と……」

「あ、そうなんだ。だから、ここに何か書いてあるのね」


有紗は、書き込みがあるのはどうしてなのかと思ったと言い、

その紙をもう一度確認する。


「それならよかった。真帆がアドバイスをしたのなら、その方が役に立ちますよ」


有紗の横に、注文したグラスが届く。


「よし、それじゃ4人揃ったので、あらためて乾杯ということで」


司の声に、それぞれがグラスを持つ。

乾杯の声とグラスの触れた音が、4人の耳に届いた。



【7-5】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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