9 あの人にいつか来る日 【9-5】

【9-5】
「あの時は飲んだ勢いでさ、黄原さんに、
俺の計画書を見直してくれだなんて頼んだけれど、よく思い直してみたら、
ずうずうしかったなと反省して。昨日も司を呼んで、どう思うのか聞いてみたんだ」


祥太郎は、話しているうちに、理解してもらえた気がしてと、

厨房から出てくると、大輔の隣に腰かける。


「理解?」

「うん……うちはさ、何を話そうとしても、
親父がとにかく大学を出たくせにの一点張りだろ。
でも、彼女は、安定の信用金庫をやめて、配送会社の事務になった。
なんとなくだけれど、形にこだわるだけじゃない気がして、話しやすかったんだよね」


祥太郎は、始めは、有紗と話をするつもりで呼んだのにと、笑い出す。


「ほら、彼女。『リファーレ』で秘書をしているって言っていただろ。
飲み会でもすごく気をつかってくれたし、まぁ……綺麗かなと思ったし」


祥太郎の話しを、大輔はただ聞き続ける。

確かに、初めて6人で会った飲み会の日。途中で席替えをしたものの、

祥太郎が、主に有紗に対して話をしているのがわかり、自分の席を変わった。


「こんな飲み会を開くから、その時に会いましょうって言えば、
わざわざ計画書を取りにいきたいですけど、出来てますかなんていう必要もないし、
また、みんなでわいわいやる席で、話も聞けるかなと」


祥太郎は、そうしていいかと、あらためて大輔に聞いてくる。


「どうぞどうぞ、姉ちゃんがくれたものだし。祥太郎の役に立つのならいいんじゃない?
二人とも元気かって、気にしていたから」


大輔の言葉に、祥太郎は『うん』と頷き、一度横を向く。


「二人って……」

「お前と司に決まっているだろう」


大輔の言葉に祥太郎は、『そうだよな』と笑い出す。


「なぁ、文乃さんって、あれからずっとホームの寮なの?」

「あぁ……突然決めてきて、突然引っ越して。24時間の態勢だからね。
仕事、きついだろうに……」


大輔はそこまで話し、さらに続けようとしたが、

そのおかげでもらった酒だと、言葉を止める。


「文乃さん、優しいからな。お年寄りにも人気があると思うよ。
仕事だってきっと、精一杯やるだろうし……」

「なんだか、見合いしないかって、入居者の女性に言われているようだった」

「見合い?」


大輔は、祥太郎の声のボリュームが上がったことがわかり、横を向く。


「あ、ごめん。予想外の話で」

「まぁ、俺にも予想外だったけれど、でも、そうでもしないと姉ちゃん、
ずっと結婚しないよな……って、今、思いながらここへ来た」


大輔は、結婚寸前まで行った相手との別れが、今でも傷になっているのだろうと、

祥太郎が出してくれたお茶を飲む。

祥太郎は『そうかもな』と言いながらも、大輔とは別のことを考えた。


「文乃さんの見合いの相手って、どんなやつ」

「気になる?」

「なるよ。俺たちにとっても、文乃さんはお姉さんみたいな人だからさ。
大学時代、世話になっただろ。レポート書くためにあのアパートに泊まり込んで、
それに……」

「そうだったな、そういえば」


大輔も学生時代のことを思い出し、あの頃に戻れたらなと、寂しそうに笑う。


「足……あんなふうにさせることもなかったのに」

「大輔」

「だからこそ、姉ちゃんには絶対に幸せになってほしいんだけど」


大輔は、見合いしないかと言ってきたのは、入居者の金田ハルさんという女性で、

都内に『イタリアンレストラン』を10店舗経営している話、

実際、見合いをするかもしれないのは、次男だということも話し続ける。


「金田って……」


祥太郎は席から立ち上がると、自分のスマートフォンを持ってきた。

何やら指を動かしながら、調べ始める。


「金田って、これじゃないのか? この……『ファミエッタ』」

「ん? そうなのか」

「いや、そうだって。創業者はこの金田ハルさんのお父さんだと思う。
業界じゃ有名な……」


大輔は祥太郎のスマートフォンを横から奪い、ホームページを見る。


「これなのか」

「あぁ……」


そういえば、『アプリコット』の最上階は個室が3つしかない。

広さも、他の部屋とは倍くらいの差があった。

大輔は、これくらいの店を経営する人がいても、おかしくはないと考える。


「これは……」

「文乃さん、その気になれば、大逆転の大金持ちだな」


祥太郎の言葉に、大輔は画面をそのまま見続ける。

祥太郎は、大輔が真剣な顔をしていると思い、横から携帯を奪い返した。


「あ……」

「お前が熱心に見てどうするんだよ。文乃さんは嫌だって言うんだからさ」


祥太郎は、とりあえず6人で会おうとまた話を戻していく。

大輔もそうだよなと言いながら、またお茶を飲んだ。





祥太郎は、大輔が店を出た後、しばらく店に一人で残っていたが、

ポケットから携帯を取り出すと、司へ連絡を入れた。

司はすでに部屋にいて、ソファーの上に寝転がっていた状態で、受話器をあける。


「新潟の日本酒? お前、どこから調達した」

『大輔だよ。というより、文乃さんがお世話になりましたって、
以前、施設にいた人の家族からもらったらしいけど』


『文乃』の名前を聞き、司は思わず『エ……』と声を出してしまう。


『俺とお前も元気にやっているのかって、心配していたって』


祥太郎は、大輔に許可を取ったから、また6人で集まろうかと思うと、言い始めた。

女性陣には自分がメールを入れるので、

都合が悪いところだけ教えて欲しいと、司に尋ねる。


「文乃さん、元気なのか」

『俺に聞くなよ。会ったのは大輔だって』

「あ……そっか」


司は、自分でも変なことを言ってしまったと思ったが、何も言えなくなる。


『司……』

「何だよ」

『文乃さん、見合いを勧められているらしいよ』


祥太郎の言葉に、司は感情の入らないまま『ふーん』と言い返した。



【9-6】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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