11 子供と親の微妙な距離 【11-1】

11 子供と親の微妙な距離
【11-1】
「引き抜きで広報部長か。会社の軸になる場所を任されるのだから、
ものすごい信頼だね」

「はい」

「灰田部長って、どんな人?」


司の問いと有紗の答えに、大輔は乗せるようなタイミングを選びそう尋ねた。

灰田啓次という男は、どういう男だと、

有紗がここで説明するのか、聞いてみたくなる。


「灰田部長は、元マーケティングの会社にいて、
どちらかというと、業界の全体像を見ていた人です。
だから、うちの悪いところをしっかりわかっていて、建て直しに走り回るような、
タフな方です」


有紗は、あまり表情を変えずに、そう淡々と答えた。

陽菜は、有紗の分のチャーハンを前に置く。


「企業の建て直しか」

「ねぇ、秘書って変わるものなの? 数年経つと交代とか」


一緒にチャーハンを入れた陽菜も、そう尋ねる。


「ううん……基本的には、年数で変わることはないはず。あくまでも会社の考えだから、
急に秘書はつけないってこともあるかもしれないけれど、基本は仕事の区切りとか、
退社とかの理由がないと、かわらないかな」

「それじゃ、相性が合わないと最悪ね」


陽菜のつぶやきに、大輔は有紗の表情を見る。


「そうね、確かに」


有紗は、レンゲを使い、チャーハンを食べ始めた。

塩加減が絶妙で、テーブルのあちこちから『美味しい』の声があがる。


「当たり前でしょう、俺が作ってるんですよ」


祥太郎が得意げに立ち上がり、それぞれから拍手をもらう。

目の前に座った真帆は、あの日、途中になってしまった『五目チャーハン』を、

色々な思いを混ぜながら、しっかりと味わった。





「それじゃ、おやすみなさい」

「どうも」


駅につき、それぞれの方向に進みだす。

大輔が改札を抜けると、陽菜は真帆と一緒に、反対側のホームへ向かった。

振り返り、こっちにいるメンバーに向かって手を振ると、

その姿はだんだんと小さくなる。

初めて6人で会った時には、飲み会自体を楽しめていないように見えた陽菜だったが、

今日は気心が知れたからなのか、笑い声もあり、

自分からも相手に問いかけるなど、積極性もあった。

大輔は、相変わらず愛想のない自分に比べて、陽菜の変化は大きく、

遠足で楽しそうに園児と歩いていた姿を思い出す。



『幼稚園には行っていないんですか』



灰田を追い続け、夜の街に繰り出すことが増えた大輔は、

太陽の下で、素直に笑い声を上げる、園児たちの顔がなぜか懐かしく感じられる。


「大輔」

「ん?」


司は、文乃が見合いをすると聞いたけれどと、そう尋ねた。

司に文乃の見合い話の話を振られ、大輔は、誰から聞いたのかと言おうとしたが、

すぐに祥太郎の顔が浮かぶ。


「祥太郎が言ったのか」

「うん……。あいつ、すぐに相手のレストラン、調べてた」

「あ、そういえば、俺が話をしたときも見ていたような……」


大輔は、文乃から軽く聞いただけで、

実際に行われるかどうかもわからないと言いながら、

悪い話ではないだろうけれどと、口を結ぶ。


「真面目な人なのかもしれないけれど、調べてみたらあまりにも家が大きくて驚いた。
姉ちゃんにしてみたら、入居者の家族だと思って接しているからさ。
まぁ、見合いはしないだろうけれど」


大輔の言葉に、司は『そうか』と頷く。

『しない』方向に傾いている気がして、少し安心する。


「でも……あの場所にいたら、これからも出会いがないだろうし。
そういうことでもないと、ダメなのかなとも思うんだ。あの性格じゃ、
積極的に探すこともなさそうだし」


大輔は、大学時代の延長で、一緒に住み続けたのがまずかったなと昔話をし始める。


「大学を出た後、カメラマンですって言っても、最初の頃は、見習いみたいなもので、
俺、収入少なかったからさ。ついもう少しって、姉ちゃんに甘えていた。
今思うと、もっと早く一人暮らしをして、解放していたらって……」


大輔は、介護施設に逃げ込むようになったのも、

自分を頼るなという意味かもしれないと、苦笑する。


「頼りにならない弟を持ってしまったから……」

「……違う」

「エ……」


司がつぶやいた瞬間、ホームに電車が入り、その大きな音が言葉をかき消してしまう。


「今、何か言ったか」

「いや、何も……」


司は、今ここで大輔に語るわけにはいかないと、焦りや後悔の念を心の奥に押し込んだ。

電車の扉が開き、降りた客の流れが止まった後、乗り込んでいく。

司は、大輔に対し、文乃にお酒のお礼を言ってくれと頼むと、

ますますこれから暑くなるだろうなと、外の景色が映る窓の前に立った。



【11-2】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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