12 信頼が崩れだすとき 【12-4】

【12-4】
その後、大輔は宮石から呼ばれ、『フォトラリー』編集部へ向かった。

そこには、大輔と同じように、宮石から仕事を頼まれた2人のカメラマンが座っている。


「おぉ、白井君、こっち」


大輔はカメラを抑えながら、他の2人に会釈した。

他のカメラマンたちも、『お疲れ様』と声を出す。

互いに名刺を取り出すと、それぞれの立場で挨拶をした。

大輔は、二人からもらった名刺を見た後、初めてカメラを下ろし、

中のデータを宮石に渡す。

宮石はさっそくタブレットを取り出し、

それぞれが狙った写真をタブレットの画面に登場させた。


「『クーデター』はこの週明けに決まった。そうなると、この黒幕たちの中にいる、
『灰田啓次』にもスポットライトが当たることは間違いない。
なんせ、コーディネートの会社を仕切っていた男が、一流企業の広報トップになり、
さらに創業者一族を敵に回すクーデターにまで参加しているのだから、
注目度は抜群だろう。となると、いよいよ、撮りためた写真や記事が、
ものを言う段階まで来たというわけだ」


宮石は、灰田がこの出来事の顔になることは間違いないと言い、

タブレットに出てくる写真を選び出す。


「長い間、関係を続けている間宮あかり。近頃売れてきているモデルとも、
灰田は付き合いがある。もちろん色恋沙汰ばかりじゃないぞ、
彼にはそれだけの実力があるわけで……」


そう話していた宮石の言葉が止まった。視線の先にあるのは、

大輔や他のカメラマンが撮りためていた、灰田の写真になる。


「しかし、全く同じ男に生まれてどうしてこう違うのかと、情けなくもなるな」


宮石は、タブレットに移った灰田を取り巻く女性たちの写真に、

ため息と苦笑を同時に送り出す。大輔の目の前に、

有紗とホテルのエレベーターに乗っている、灰田の写真が呼び出された。

有紗の腰に回された灰田の手が、二人の関係を物語る。

それと並ぶように、視界に入った写真たちは、

有紗以外の女性とも親しげに話す姿や、

先ほど姿を見かけたあかりのマンションの窓際で、灰田がタバコを吸う姿だった。


「これ……」


大輔は、男女の関係性がありそうな写真を、

これだけの距離でよく撮れたという目で、隣のカメラマンを見る。


「あぁ、これね。うちの事務所の女性が隠し撮りをしたんだ。
男がいると怪しまれるけれど、女には結構ノーマークだからね」


大輔の他に写真を頼まれていた2人の男は、

長い間こうしたスクープ写真を仕事にして生きてきた、ベテランだった。

大輔のように、カメラを被写体に堂々と向けることはほとんどなく、

バッグや携帯に忍ばせたカメラで、撮りにくいものを狙っている。

大輔は、あらためてもらった名刺を確認する。

確かに、雑誌名を見ると、その仕事ぶりが納得できた。


「でも宮石さん。間宮以外の女性との写真は、
あまり意味がないと言われませんでしたか」


大輔はつい、そう聞いてしまった。

『結婚式』で偶然出会っただけの間柄だとしても、

知っている有紗がこうして撮られた事がわかり、仕事というだけでやり過ごせなくなる。


「まぁな。今回の特集にはあまり意味がない。俺もそう言ったけれど、
彼らから言われて、保険として撮り溜めてもらったんだ。
実際、灰田が過去に仕事のトラブルを生み出したとき、女性を盾にしたことがあってね。
その話しを別のところから聞いたもので」


宮石は、灰田が自分のところに火の粉が降りかからないように、

いざという時には、一番そばにいる女性に、

責任を転嫁できる展開を、作るかもしれないと思ったことを白状する。


「政治家でもあるだろう。秘書が勝手に動きましたって、あれだよ、あれ」


宮石は、まぁ、今回は話が大きいので、そうはならないだろうと言いながらも、

また、灰田のモテぶりにため息をつく。


「こういった写真を撮るときに感じる、スリル感と、覗き見根性?
人が隠していることを暴くことって、結構さぁ……癖になるよ」


一人のカメラマンは、こういった写真を撮るようになると、

人の表には興味がなくなるねと、笑いながら飲み物に口をつける。

大輔は有紗の写真から目をそらし、メールの届いた携帯を開いた。



『大輔 明日『華楽』に来られないか』



そこに入っていたのは、司からのメッセージだった。

瞬間、どうして『華楽』なのかと思ったが、

もしかしたら、祥太郎が改築に乗り出すことが決まったのかもしれないと考える。



『わかった』



大輔はここで長いメールを打ち込むわけには行かず、

それだけを返信し、携帯をポケットに押し込んだ。





灰田に肩透かしをくらった有紗は、その日の仕事を終え、自分の部屋に戻った。

以前から、これからは忙しくなると言われていたため、

灰田が社外で活動することに、疑問を持ったことはなかったが、

今日は何か重要な動きがありそうな雰囲気の場所に、自分ではない女性が、

あまりにも当たり前のような態度でそばにいたこと、そこにショックを受けた。

喫茶店で待ち合わせをした時、灰田の名刺と一緒に見せられた名刺は、

確か業界紙のものだった。

あの女性がマスコミ関係者だとすると、そこに『それなりのネタ』があることになる。



『山吹君……』



有紗は、急に灰田が何をしているのか、怖くなり始めた。

資料を渡しなさいと言った灰田の顔は、

普段見せてくれるような穏やかなものとは違っていて、

そこに信頼関係や、愛情などまるでないように感じ、

初めて灰田が遠く離れた場所にいるように思え、一歩が出なかった。



【12-4】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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