13 親友に語られる秘密 【13-1】

13 親友に語られる秘密
【13-1】
司と大輔が待ち合わせたという話を聞き、

祥太郎は二人に、カウンターではなくて座敷に座れよと声をかけた。


「まだ店じまいじゃないだろう。いいよ、ここで」

「いや、でも……」


祥太郎は、司の顔を見る。

司は誰もいない、座敷の方を見た。


「大輔……奥に行こう。せっかく祥太郎がそう言うのだから」


司にそう言われ、大輔はそれならと出してもらったつまみの皿を持ち、

奥にある座敷に向かう。


「何か作るよ。何がいい、餃子とかさ……」


祥太郎は二人が座る場所のテーブルに、コップ2つとビールの瓶を1本置いた。


「とりあえずいいよ、祥太郎」


司はそういうとカバンを横に置く。


「……うん」


祥太郎はそれならば、食べたいものが決まったら呼んでくれと言い、

大輔は、いつもと違う司の様子を気にしながら、

仕事で何か失敗でもしたのかと、ビールの栓を抜く。


「あ、あのさ……大輔」


司から感じる雰囲気を読み取った祥太郎は、自分もここに座り、

一緒に飲もうかと言い始める。

大輔は、まだ仕事中だろうと、祥太郎からコップを取り上げ司の前に置いた。

ビールの注がれる音を聞きながら、司は、祥太郎の慌てぶりに気付き、

落ち着けよと声をかける。


「じゃ、まずは……」

「いや、今、乾杯はいい。先に話しを聞いてくれ」


司はあらためて正座をすると、目の前にいる大輔を見た。

大輔は、司がどうしてそんな態度を取るのかわからずに、

乾杯しようと手に持ったコップを下ろす。


「なんだよ、急に。どうしたんだよ。何が起こるわけ?」

「今日は、何もかも、全てをなくしても仕方がない覚悟でここへ来た」

「……覚悟?」


大輔の不思議そうな顔を見た祥太郎は、真剣に前を見る司に視線を移す。

司のただならぬ態度とセリフに、もしかしたらの予感が、確信に変わっていく。

それに対して大輔がどういう態度に出るのかがわからず、

自分がどの場所に立てばいいのか、どうしていれば、二人の役に立てるのかと考えながら、

離れることも出来ず、座敷の縁に腰を下ろした。


「文乃さんのことなんだ」


突然出された姉の名前に、大輔はすぐ司を見た。

司が自分を呼び出したのが、姉、文乃のことだと言われた大輔は、

これからどういう話が出てくるのかわからず、ただ司の顔を見続ける。


「姉ちゃんの話? どうして司が……」

「大輔、お前……文乃さんの結婚が破談になってからの動きを、
ずっと不思議に思っていただろう」


司は、せっかく見つけた仕事をすぐにやめ、

『アプリコット』の仕事を選んだ文乃のことを『不思議』だと表現した。

大輔は、司を見たまま、『あぁ』と返事をする。


「俺には……その理由がわかる」

「ん?」


祥太郎は、司が文乃のことを好きだと、そう告白するだけだと思っていたので、

何かありそうな展開に、さらにどういう態度をとればいいのかわからなくなった。

祥太郎は、大輔と司を交互に見る。

大輔は、どこかおどおどしている祥太郎の態度が気になり、

何か秘密があるのかと思い始める。


「なんだよ、妙な空気だな。祥太郎も知っているのか」

「いや、祥太郎もわかってはいない。これから話すことは、
俺と文乃さんしか知らないことだ。こいつが慌てているのは、
俺の気持ちに気付いていたから、だから……」


祥太郎は、自分の予想していたこと以上の話をしそうな司を見た後、

大輔に視線を動かした。その動きに、大輔も祥太郎を見る。


「気持ちって……」


司は大輔をしっかり見ながらそうだと頷く。


「俺が……ずっと文乃さんを好きだったこと」


司の告白に、大輔は声が出せないまま、口を開いた。

司からの突然の告白に、大輔はどういうことなのか、

なぜ今、そんなことを言うのかと、頭の中だけは言葉が動くものの、

声という形になっていかない。


「お前と大学で知り合ってから、文乃さんと会って。
もちろん、最初は友達の姉さんだとそう思っていた。
でも、知れば知るほど、素敵な人だと思えてきて、一緒にいることが正直、辛かった」


司は、それでも文乃には、婚約者がいたため、

自分の思いをなんとかコントロールしてきたと、そう語っていく。


「でも、あの山の事故があって、九段さんとの結婚が破談になった。
最初聞いたときには、どういうことだという怒りと……そう、不謹慎かもしれないが、
正直……嬉しくもあった」


司は、それでも、文乃の心情を思い、自分の気持ちを告げる時期ではないと、

リハビリに付き合いながら考えていたことも話す。


「文乃さんのリハビリ時期は、大輔に少しずつ仕事が増えてきたときで、
泊りがけも多かっただろ。文乃さんを気にして、電話をくれた時から、
やっぱり、諦めたくないという気持ちが、前に出てくるようになって」


祥太郎は、司の告白を聞きながら、当時のことを思い返した。

確かに、文乃のリハビリに付き合ったのだと、よく司から話を聞いた。

店以外の用事を済ませた母、圭子が、裏の扉から姿を見せたが、

大輔と司のただならぬ様子に、祥太郎の顔を見る。

祥太郎は向こうに行っていてと、圭子を店から出そうとする。


「その頃だったと思う。別れたはずの九段さんが、
リハビリをしている文乃さんのところに現れて、
よりを戻そうかという話をしに来た。俺は偶然、その場にぶつかって。
それで、文乃さんに気持ちを確認したら、もう戻るつもりはないと言うし、
それならって、俺が……彼氏の代わりを名乗り出たんだ」


リハビリに付き添う中で、九段和臣とも何度か会っていた司は、

自分なら、元々、大輔の友達としてそばにいたし、

新しく付き合い始めたと言ってもおかしくないからと、文乃に言ったことも話す。


「フリだと言う事はわかっていた。でも、俺は嬉しくて……
ずっと好きだった人の役に立てるのならって、喜んで演じた。
互いにこの状況を楽しもうと思って、映画に誘ったり、食事をしたり……。
九段さんは、俺たちの演技に騙されて、文乃さんのアパート前から、
肩を落として帰っていった」


大輔は、司の話を聞きながら、

当時の文乃がどんな様子だったかを思いだそうと、記憶を必死に呼び起こした。



【13-2】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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