13 親友に語られる秘密 【13-5】

【13-5】

『リファーレ』の一大事。

そんなニュースを、真帆は『原田運送』の職場でテレビの画面から知る。


「いやぁ……本当にクーデターだよ。これだけの会社でこんなことがあるんだな」

「これだけだからあるんでしょう」


社長と部長は、今まで跡取りとして贅沢な暮らしをしていた男が、

どうなってしまうのかと、他人の心配をし始める。

真帆は、会社が取っているスポーツ新聞記事の中で、今回のクーデターのために、

実際、人事異動があったという裏話を読んでいた。

その中に『灰田啓次』という名前を見つける。

『広報部長』の肩書きに気付き、確か有紗の上司ではなかったかと、心配になる。

真帆は携帯を取り出し、有紗宛にメールを打った。

しかし、有紗からの返事は何も戻らないまま、その日の仕事を終える。

真帆は、返り際もう一度携帯を取り出すと、

返信のないまま、何度目かのメールを送信した。



行きつけの定食屋『つつみ』では、大輔がこの新聞記事を読んでいた。

用意周到に準備された、見事な逆転劇と記事には記されている。

大輔は、宮石から仕事を振られ、こうなることは予想していたものの、

そこにまつわる人たちが、どういう行き先をたどるのかまで、考えていなかっただけに、

先日、レストランの前で不安そうに歩いていた有紗のことが気になっていく。

奥さんが、頼んだ料理を運んでくるのが見えたので、新聞を閉じると、

ポケットに入れた携帯が、急に揺れだした。

相手は、『フォトカチャ』の後輩、吉田になる。



『白井さん、ヘルプです。来週の『新町幼稚園、じゃがいも収穫』、
変わってくれませんか』



それは、『新町幼稚園』の行事、『じゃがいも収穫』の撮影を頼まれていた、

吉田からのSOSだった。昨日、新しいテレビを買い、それを設置しようとしていたら、

バランスを崩し、足の上に落としてしまったという。



『病院に行ったら、驚いたことに中指が折れてました。
なんとか歩けるのは歩けるのですが……』



歩けるけれど、園児たちの速い動きについていけないかもしれないと、

そう文面には書いてある。


「何やってるんだ、あいつ」


普段なら、呆れてしまうところだが、灰田の動きばかりを追い続け、

少し色々な面で滅入っていたところのある大輔にしてみると、太陽の下、

子供たちの笑顔に触れられる仕事は、どこか楽しみでもあった。

大輔は予定表を確認し、吉田にメールを入れる。

吉田からはすぐに、ありがとうございましたと書かれた返信が戻ってきた。





真帆から数回のメールを受け取った有紗だったが、

その他に、親や親戚からもメールが入っていた。

なるべく心配のないようにと返信をするつもりだったが、

受信の相手に、高校の同級生を見つけてしまう。

地元に帰ると、時々、お茶を飲みにいく中の一人だったが、

有紗はその名前を見つけた瞬間、そこまでの気持ちが一気に冷めてしまった。

数ある中から、同級生のメールを開く。

文面は、有紗は大丈夫なのか、これからも仕事が出来るのかと心配する内容だったが、

有紗はその裏で、彼女が笑っている姿を想像してしまう。

同級生たちの中でも、有紗の就職した『リファーレ』は、大手だった。

さらに広報部長の秘書となった話をした時、

ほとんどの友人がその仕事内容に興味を持ったが、

彼女だけは明らかに嫌そうな顔を見せたからだ。

当時は変わらなかった立場が、大学、就職を経て、色々と変化する。

有紗は、どこかで誰かが笑っている姿を想像してしまい、

返信をしようとしていた指を止めてしまう。

頼りにしていた灰田は、この出来事で時の人となってしまい、

クーデター前から微妙に開き始めていた距離は報道の包囲網によって、

さらに開いてしまった。

有紗は、何を支えに立っていればいいのかわからずに、ただ目の前の仕事に取り組んだ。





『また、お世話になります』



陽菜が大輔からこのメールを受け取ったのは、火曜日の朝だった。

金曜日に行われる幼稚園の『じゃがいも収穫』。

毎年、子供たちが持ち帰るじゃがいもを楽しみにしている親もいるし、

また、収穫したじゃがいもを使って作る、『カレー給食』の日は、

いつもお世話になっているからと、近所の商店街におすそ分けをしていて、

『新町幼稚園』にとっては、結構、大きなイベントだった。

陽菜は、担当カメラマンは吉田だと聞いていたので、どうしたのかと大輔に返信する。

すると、吉田の負傷に関する詳しいメールがすぐに戻ってきた。

陽菜は、大輔が言っていた通りちょっと変わった人だと思いつつも、

お大事にという言葉を、吉田に届けて欲しいとまた返信する。



『ありがとうございます』



大輔からの返信メールを受け取った陽菜は、

今日も一日子供たちと頑張ろうと思いながら、職員室を出た。



【13-6】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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