17 絶対に変わらない思い 【17-3】

【17-3】
『新町幼稚園』の盆踊りの日。

そして、文乃と司が、再会をする日がやってきた。

大輔は朝から支度を済ませ、カメラ関係の荷物を持つと早めに家を出る。

最初は二人が緊張するので、一緒の席に座るつもりだったが、

仕事があるのでと、途中で抜けることを決めていた。

待ち合わせの駅前で待っていると、文乃が改札を抜けてくるのがわかった。

大輔はすぐに手をあげる。


「姉ちゃん」

「大輔……どうしたの、それ、仕事?」

「あぁ、今日は幼稚園の盆踊りがあるんだ」


文乃はそれなら、今日でなくてもよかったのにとすぐに心配し始める。


「いいんだよ、夕方からだからさ」


大輔はそういうと、司と待ち合わせた店はこっちだと、文乃に声をかける。


「この間、司が写っている写真、置いて帰っただろ」

「うん」

「あの中にいる女性3名のうち、一人が今日の幼稚園で先生をしている人なんだ」


大輔は、陽菜のことを文乃に話し出した。

園児たちを見る目がとても優しくて、仕事にいつも誇りを持っているように見えると、

自然と褒め言葉が並ぶ。


「遠足の写真は、もちろん売るためにあるけど。
中には園児の顔が全部下を向いてしまったり、たまたま半分に切れてしまったりして、
売り出しはしないものもあるんだ。
その先生、赤尾さんがあまりにも楽しそうな顔をしているから、
この間、特別にプリントしてあげた」


大輔は、普段ならそんなことはしないけれど、

こうして知り合いになったからと、そう理由を説明する。

文乃は、大輔の話を聞きながら、あの写真に写っていた、どの女性だろうと、

陽菜の存在が気になりだす。


「いいの? 特別にあげたりして」

「いや……社長にはダメだって言われるからさ、もちろん内緒」


大輔はそういうと、数枚だから問題ないでしょうと、楽しそうに笑い出す。

文乃は、大輔から久しぶりに聞く女性の話だと思いながら、黙って聞き続けた。





『リトルライラック』


店の前に到着すると、文乃は大輔の腕をつかんだ。

大輔はどうしたのかと振り返る。


「大輔、一緒にいてよ」

「わかってるよ、だから来たんだろ」

「うん」


文乃はそうねと頷き、大輔に続いて店の中に入る。

すると、視界の隅で、立ち上がる人がいたので、文乃は自然と顔をあげた。

『緑川司』との、久しぶりの再会になる。

あの頃と同じように背が高く、あの頃と同じように自分を見つめる目があった。

文乃は、しっかりと確実に成長して見える司に比べ、

見えない自分の顔が、この数年でふけてしまったのではないかと思い、

時の流れが辛くなる。


「姉ちゃん」


大輔の声に、文乃は一歩ずつ前に進んだ。

司はここに文乃が来てくれたという事実に、胸がいっぱいになる。

二人の様子に気付いた大輔が、文乃を奥に座らせた。

司と文乃は向かい合う位置になる。


「お久しぶりです」

「はい」


緊張した二人の一声は、短いものだった。

大輔は、今日はこの後、『新町幼稚園』に向かうと司に話し出す。


「あ……赤尾さんの?」

「うん。『フォトラリー』の仕事が一段落したからさ、また向こうに」

「へぇ……」


司は、先輩の結婚式で互いに呼ばれていて、そこから偶然縁を持ったと、

前に座る文乃に説明した。文乃は、大輔が写真を見せてくれたとそう話す。


「写真……」

「ほら、この前、『華楽』で撮っただろ」

「あぁ、あれか」


司は、酔っていたから赤い顔をしていたと、笑い出す。

文乃は、写真に写った祥太郎の髪型が、昔より短くなっていたと話した。


「あぁ、そうです。あいつ、厨房に入るようになって、短い方が楽だからって、
全てを石鹸で洗えるようにしたんです」

「全て?」

「上から下までいっぺんに洗えるって」


大輔のフォローに、文乃はそうなのかと笑い出す。

司は、文乃の笑った顔を見られたことに、さらに気持ちを前向きに変える。


「数年ってものは、色々と人を変えます。昔は、先輩の仕事を必死に見て、
なんとか自分でもと思いながら営業していましたが、
今は、営業所で3本に入る成績が取れるようになりました」


司は、『アモーラ』での自分の姿を、そう話し出した。

大輔は司が、文乃と話をするつもりなのだろうと思い、携帯を見るふりをしながら、

スッと席を立つ。文乃は大輔の行動に気付き、少し慌てたものの、

司の言葉を無視できずその場に残る。


「文乃さんと大輔がいる、アパートにもぐりこませてもらっていた頃には、
乾杯をするのも、酔いつぶれるのもいつもビールでしたが、今は、一人になると、
日本酒を飲みます。つまみもから揚げとかそういうものではなくて、
量などなくても、満足できるものをと……」


止まっていた数年間。

司はそれを必死に埋めようと、文乃に語り続ける。


「この間の日本酒、とっても美味しかったです。ありがとうございました」


司の言葉に、文乃はいいえと首を振る。

司は、もっと語らないとならないのに、文乃の姿を見ていると、

用意してきた言葉が全て頭の中から飛んでいく気がしてしまう。

それと同時に、しまいこんできた気持ちには何もあせたところがなく、

今でも当時のままになっていることにも、あらためて気付く。


「えっと……それに」


司は、膝に置いた左手を握り締め、また話を続けた。



【17-4】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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