17 絶対に変わらない思い 【17-6】

【17-6】
「いらっしゃい……って、おぉ……司」


文乃との久しぶりの再会を終えた司は、そのまま部屋へ戻ることはせずに、

『華楽』へ向かった。自分で食事を準備することが面倒だったこともあるが、

司の思いに気付き、大輔への告白時も自分をかばってくれた祥太郎に、

ことの流れを説明したいとそう考えた。

祥太郎は、とにかく座れと、カウンターの前をそばにあった布巾で拭き始める。


「今日の昼、文乃さんと会えた」

「エ? 今日だったんだ」

「うん」


祥太郎は、厨房に戻ると文乃さんは元気だったかと、中華なべを洗いながら質問する。


「うん……相変わらず綺麗だった」


司の言葉に、祥太郎は思わず笑みを浮かべる。


「……ほぉ、言いますね」


祥太郎は、真面目にそう言われると、茶化す気持ちにもならないと笑う。


「大輔がさ、今日『新町幼稚園』の盆踊りを撮影する仕事があって、
うまい具合に、席を外してくれたから。色々と話すことが出来て」

「うん」


司はコップを取り、自分でお冷を入れる。

一口と思い口をつけたが、コップの水は一気になくなった。


「俺の腕の傷、やっぱり気にしていたからさ、
それは文乃さんが大輔に思う気持ちと一緒だって、そう話をした」


司は、過去の謝罪、自分がこの数年でどう動いていたのか、生きていたのか、

それを語りながら、文乃への思いだけは変わらなかったことを話したと、

祥太郎の背中に向かって語り続ける。

祥太郎は、時々大きく頷きながら、親友の明るい話に心からほっとする。


「文乃さんって、大輔君のお姉さんよね」

「そうだよ……俺も大学時代とか世話になっただろ」

「あぁ、はいはい」


司の話を聞いていた母圭子も、厨房の中で料理を作っていた父明彦も、

文乃のことは覚えていた。物腰の柔らかい、優しそうな人だったと、

昔会って感じた記憶を呼び起こす。


「正直、逃げるように入ってしまった職場だけれど、介護の仕事は、
文乃さんにとって、今、充実したものらしいんだ」

「うん……」


祥太郎は、何を食べるかと、司に尋ねる。


「あ、ごめん。俺……」

「中華丼でも作ってやろうか」


父明彦が司にそう声をかける。

祥太郎は、突然参加してきた父に、戸惑いながらも、そうすればと司に言う。


「お願いします」

「おぉ」


明彦は横に立っている祥太郎に、司の話を聞いてやれというと、

中華丼の材料を、なべに入れていく。


「うん」


祥太郎はそれならと厨房から出て、司の横に座った。


「で?」

「で……って?」


祥太郎は、自分の分のお冷を入れると、

それからの話しはどこまで進んだのかと、司に問いかける。


「進んだって……いや、今日はそんなにガツガツ行かなかった。
というより、いけなかった。目の前に座ってくれたことが、
俺が話すことに耳を傾けてくれていることが正直、信じられていないところもあって。
また、前に出ようとしたら、文乃さんが辛いんじゃないかとか……」


司は、そこはやはり時間の流れがあったからだなと、

席を立ち、コップにお冷を入れる。


「そうか、それじゃ」

「でも、次に食事をしましょうという誘いには、OKもらった」

「おぉ……」


祥太郎はそれならと嬉しそうに頷き、よかったと言いながら司の肩を何度か叩く。


「お前が興奮してどうするんだ」

「だってさ……」


祥太郎は、それだけ司のことも、文乃のことも、

そして大輔のことも気になっているからだと、そう答える。


「……祥太郎」

「俺さ、一人っ子だろ。大輔と会って、文乃さんにお世話になってから、
本当にお姉さんみたいな思いがあって……。だからさ、嬉しいんだよね、
文乃さんが明るく笑ってくれていたという話を聞くだけで」


祥太郎は司が大好きな餃子を焼くと、そう宣言し、また厨房に入っていく。

『華楽』の扉が開き、近くで野球を楽しんでいた中年のおじさんたち数名が、

ユニフォーム姿でもいいですかと、明彦を見る。


「あぁ、どうぞどうぞ」

「すみません」


そこまで2、3名だった『華楽』には、12名の男性が入ってきた。

静かだった店内は、一気に賑やかになり、厨房を抜けて話をするつもりだった祥太郎も、

抜け出せないくらい忙しくなる。


「ほら、司」

「あ、すみません」

「もう少ししたら、しばらく俺の味も食えなくなるから。しっかり味わっておけ」

「エ……」


明彦は、司の前から離れ、圭子が注文を取った料理名を聞き取り、

そばにあったメモに書き始める。

司は、料理と一緒に出てきたれんげを持ち、

直前に明彦から飛び出した、セリフの意味を考えた。



【18-1】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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