19 不安定な立場にいる女 【19-2】

【19-2】
『華楽』の改築許可。

嬉しい報告を、瞬間的には自分のことのように思った真帆だったが、

あらためて思えば、父親を含め、黒木家が団結して考えればいいことだった。

心の奥に芽生えた寂しさ。

それは黒木家が団結するイコール、祥太郎と真帆が会う理由が、

無くなるということにもなる。


『おふくろも、なんだか嬉しそうでね……』

「えぇ……」


今までは、『元信用金庫』ということを理由に、それなりにアドバイスをしていたけれど、

本当の専門家が登場してくれば、自分など必要がなくなってしまう。

真帆は、もっと嬉しそうな言葉を言わなければと思うのに、

ごたついた頭の中からは、何も出てこなくなる。


『いやぁ……本当に今の今なんだ。だからまだ、具体的には決まっていないけれど、
そう、みんなにも話をしたいから……また、6人で会わない?』


真帆は、祥太郎が『一番』に電話をしてくれたことは嬉しかったものの、

『6人で会う』ことを選択したことに、焼き餅とも思えるような、

複雑な感情を抱いてしまう。


『会場はさ、またうちでいいと思うし……。ほら、改築し始めたら、
しばらく店も休まないとならないしね』


真帆は、話が進む前には、2人だけで会うことも何度かあっただけに、

もしかしたら自分にだけは、

先に説明してくれるのではないかという期待が、心のどこかにあった。

有紗が大輔に会って、あらためて謝罪をしたいと思うように、

電話だけではなく直接会って話すことも出来なくはないのに、

祥太郎は『6人になって』話すことを選んた。

自分はあくまでも『6人』の中の一人なのだと、あらためて考えてしまう。


「そうですね、そうしましょう。またみんなで……」


真帆は、今、有紗と食事をしているのだと、情報を提供する。


『エ? 山吹さんが? なんだ、顔でも出したかったな。
山吹さんにも色々と考えてもらったし、経過も説明したいし』


祥太郎は、そういうと楽しそうにケラケラと笑い出した。

真帆は窓の向こうから、まだかかりそうなのという顔をした有紗に気付き、

すぐに行くよと口を動かす。


「それじゃ、また連絡します」

『うん……山吹さんによろしく』

「……はい」


真帆は受話器を閉じると、そのままレストランへ戻った。

有紗は届いたデザートを、先に食べ始めている。


「ごめんね、先に食べてる」

「ううん……いいって、そんなこと」


有紗は、電話の相手が祥太郎だとは気付かないため、電話の内容を聞こうとはしない。

真帆は、自分から相手が祥太郎だったと、そう話した。


「黒木さん?」

「そう、ほら、話していたでしょう。お店を改築して、上を賃貸にするって話」

「……あぁ、あったね」

「あれが決まったって。反対していたお父さんが、許可してくれたらしい」

「へぇ、よかったね」


有紗はそうなんだと言うと、またデザートを食べた。

真帆はスプーンを持ち、バニラアイス部分をすくい口に入れる。

祥太郎の話を聞いた目の前の有紗は、どんなふうに話しが動いたのかとか、

どうして急に許されたのかなど、真帆に聞いてはこない。

真帆も、自分からあれこれ語るのは違う気がして、また一口食べ進める。


「ねぇ、真帆。これ美味しいよ」

「うん……」


真帆は、これからまた6人で会うことによって、

頑張って祥太郎と応援してきた自分と、世間話のように受け取る有紗が、

同じタイミングで話をされるのかと思い、自分自身、心が狭い気がしながらも、

また寂しさが募っていく。バニラアイスの甘い香りと、冷たい感覚が喉を通り、

真帆にしっかりしなさいとそう声をかけたように思えた。


「黒木さん、有紗と今一緒だよって話したら、来たいようなことを言ってたよ」

「ここに? 私はいいけれど。だったら呼んであげようか」


有紗は、真帆にすぐ連絡をすればいいと言い始める。


「いいよ、それは無理でしょう。きっと、お店の後で疲れているし」


真帆は、すぐにそう言葉を返した。

今、ここで有紗と3人で会うのなら、まだ6人で会った方がいいと考える。


「そう? なんだか黒木さんが楽しそうに語るところ、見たい気もするけどね」


有紗はそういうと、またみんなで会うからいいかと笑ってみせる。


「そうだよね、みんなで会うしって、あ……でも、少し先にしてね」

「先?」


真帆は、どうしてと尋ねる。


「私が白井さんに謝るのが先。そのために会うことにしたのだから」


有紗はそういうと、コーヒーカップを持つ。

真帆はそうだねと答えながら、アイスを食べ続けた。



【19-3】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
みなさんのコメント、拍手、ポチなど、お待ちしてます。

テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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