20 伝わらないもどかしさ 【20-2】

【20-2】
有紗は、陽菜が以前も年長の子供たちを卒園させて、大泣きだった話をする。


「そうなんですか。あぁ、でも、あの雰囲気だと、さぞかし大泣きだったのかなと、
想像できる気がします」


大輔は気になっていたからと、陽菜のことを語ったが、

有紗にしてみると、その様子を聞いている大輔自身が嬉しそうに見えた。

お酒が届いたことをきっかけに、話題を変えようと考える。


「白井さん。先日はすみませんでした」


有紗は、灰田の写真を大輔が撮っていたことを知り、自分勝手な発言をし続けたことを、

あらためて謝罪する。


「あ……いえ、もう本当に気にしてませんから」


有紗は、会社の状態が自分の想像以上に変化してしまい、気持ちがついていかないこと、

これからどうなるのかわからないのが不安なのだと、大輔に語り続けた。

大輔は、有紗の気持ちを黙って聞き続ける。


「白井さん、本当は色々とご存知なんですよね」


有紗は、写真を撮っている間に、色々と気付いたことがあるだろうと、

そう大輔に迫った。大輔はそれまでのにこやかな表情を消してしまう。

有紗は、やはり自分の予想は間違っていないとそう思う。


「ご存知だからこの間、私に部長のことを話したのでしょ。
仕事は出来るかもしれないけれどって」


有紗は、そういうと、すがるような目で大輔を見た。

知っていることを知らなければ、これ以上どこにも進めないとそう訴えかける。


「教えてください。白井さんが知っていること……今日はそう思ってここへ。
あんな言い方をしておいてとも思いましたが、気になるんです」


有紗の目を見ていた大輔は、一度視線を外す。

灰田がどんな人間で、有紗だけではなく、他の女性とも付き合いがあること、

それはもちろん仕事の中で知った情報なのだから、

教えてくれと言われて簡単に言えるようなものではないことくらい、

大輔にもわかっていた。

しかし、先日、灰田を信用し懸命に庇い続ける有紗の態度に、

つい意味深なことを言ってしまったのも事実になる。

大輔はサワーに口をつけると、一度大きく息を吐く。


「確かに、あの日、俺が余計なことを言ったと、そう思います。
だから、山吹さんが何があるのか探りたくなるのも、わかります」

「だったら」

「でも、俺がここでわかったことを話して、それで納得できますか」


大輔は、ここまで必死に知ろうとするのなら、

きちんと灰田自身と向き合うべきではないかと、そう有紗に言い返す。


「向き合うべきです。他人からあれこれ言われたとしても、
山吹さん、あなたはきっと納得できない」

「白井さん」

「それを確認しようと思うことになるでしょう。だったら、直接聞いたほうがいい。
話してくれるはずですよ。あなたを……山吹さんを大事な人だと、彼が思うのなら」


大輔は、灰田の名前を出さずに、そう訴えた。

有紗は、『大事な人』という言い方を選んだ大輔の言葉に、

どこかで気付いている自分の考えが、間違いではないのだろうと肩を落とす。


「中途半端になってすみません。でも、このまま流されているのは、
山吹さんのためにもならないのではないですか」


大輔は、有紗に対して、勇気を出すようにそう告げる。


「私のため……」


灰田が何を考え、どう動こうとしているのか、有紗自身が確かめること。

大輔はその重要性を訴えた。



「あなたはもっと……自由な人生を歩めるはずだから……」


大輔はそういうと、有紗を見る。

すると、大輔のお腹が『キュー』と音を立てた。

互いに下を向いていた顔が、パッとあがる。

緊張感の中に飛び出した音に、大輔は自分のお腹を触る。


「すみません、こんな時に。あの……何か食べてもいいですか。
よく考えてみたら、俺、昼間も食べていなかったなと」

「昼も食べてないのですか」

「はい。あ、別にダイエットをしているわけではないんです。ただ、なんとなく、
仕事の区切りがうまくあえばいいですが。前の仕事が押したりすると、
つい……こう……」


大輔は、このままお酒を飲んでいると、酔ってしまう気がすると笑い出す。


「何かありましたよね、ここも」


大輔は、テーブルの横に立てかけてあるメニューを見る。


「白井さん。この間は、私たちが先輩にあれこれ頼んでいたので、
種類がありましたけど、きっとピザとか、簡単なものだと……」


有紗は大輔の持ったメニューを手から抜き取ると、元の場所に戻す。


「白井さんがよかったら、ここを出て別の店に行きませんか?
夕食になりそうなお店、私、いくつかわかりますよ」


有紗はせっかくだから『美味しいお店に』とささやいた後、

口の前に指を立てて笑って見せた。





その頃、瞬と陽菜は車の中にいた。

妊娠した妻に離婚を切り出した瞬は、開き直っているのか、

運転しながらも時折鼻歌を歌った。

待つ立場の陽菜は、離婚を切り出された相手の子供を、

産みたいと言っている妻の思いを知り、切り替え方がわからなくなる。


「時間……いいよね」

「エ……」


瞬は、高速と平行している道から曲がると、少し寂しげな道路に入っていく。

商店街から住宅街を抜け、山道を登る途中にホテルが姿を見せ始める。


「ねぇ……」

「ん?」

「今日は……やめておかない?」


陽菜の言葉が聞こえていないのか、

瞬は道幅が狭くて途中で止まれないからと、あるホテルの駐車場に車を入れた。



【20-3】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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