21 笑顔が作れる仕事 【21-6】

【21-6】
『陽菜のこと……好きになっているとか?』



大輔に向かってつぶやいた有紗のセリフは、

店の改築について、懸命に説明している祥太郎には届かなかったが、

最初から有紗の行動を気にしていた真帆には、当然届いたセリフだった。

真帆は少し表情を硬くした大輔の顔を見た後、有紗の膝を叩く。


「有紗……もう酔ったの? ねぇ、黒木さんが説明しているでしょ。
ちゃんと……」

「聞いています」

「聞いているって……」


すると、真帆と有紗の態度が少しおかしいと感じた祥太郎が、

どうしたのかと話を止めた。

有紗は、自分のピッチが速いことを、真帆に怒られたと笑顔を見せた後、

すみませんと舌を出す。


「うん……」


祥太郎は、どう聞き返せばいいのかもわからなかったので、

とりあえず『うん』と頷いた。

司は祥太郎が持ち出したファイルを前に広げ、続きを説明してくれと言い始める。

祥太郎はそうだよねとファイルを持つ。


「これが、イメージで描いてもらった家なんだ」


真帆は、ファイルから出された完成予想図を見る。

その場に押された『野口工務店』という印鑑と、パソコンで打ち込まれた仮見積り。

あれだけ、てこずっているように思えた改築話は、本当に進み始めた。


「なんかすごいな」

「いやいや、これはあくまでも理想。金額もこれじゃオーバーだ。
銀行は出せると言ってくれたけれど、あまり調子に乗るのもさ」


取引先の銀行がGOサインを出したとなると、さらに加速していくはずで、

真帆は、自分の出番などもう無くなったのだと、あらためて実感する。


「なぁ、工事、いつからだよ」

「それは、親父と打ち合わせして決めるよ」

「賃貸マンションって、これくらいで出来上がるのか」


工事の期間が、おおよそではあるが記入してあり、

司はいつまで店を開けているのかなど、質問をぶつけていく。

祥太郎の方を見て、興味を示している真帆の横で、

有紗はさらに次の缶を飲み干してしまった。

あまり食事には手をつけているようには見えない有紗の態度に、

大輔は、自分が食べていないものの皿を前に出していく。


「山吹さん、何か食べながら飲んだ方がいいよ」


大輔の言葉に、有紗は『そうね』と答えて見せた。

しかし、進むのはお酒だけで、箸を持つ気配すらない。


「よかったな、ここまできて」


司の言葉に、祥太郎はしっかりと頷いた。

そして、斜め前に座る真帆を見る。


「黄原さんのおかげだ。本当に助かりました」


祥太郎はそういうと、あらためて頭を下げた。

司もそれはそうだと納得しながら、シュウマイを口に入れる。


「私なんて……何も……」


真帆はそう言いながらも、祥太郎が言ってくれた気持ちは、とても嬉しく感じていた。

司は隣に座る大輔に、祥太郎が見せた仮の計画書を渡す。


「部屋数は、どれくらいになるんだよ」

「まだ具体的には決まっていないけれど、3階建てだと、6部屋くらいかな」

「ほぉ……」


大輔が祥太郎の説明に納得していたとき、携帯にメールの届く音がした。

大輔はすぐに相手を見る。

メールを寄こしたのは陽菜だった。

大輔はすぐにメールを開き、中身を確認する。



『ご心配かけてすみません。警察が来てくれたので、色々と動くそうです。
誰もけが人はいませんし、子供たちも大丈夫です。
でも、片付けが思ったよりもかかったので、まだ幼稚園にいます。
みなさんによろしくお伝えください』



「色々と動くって……書いてある」

「ん?」


大輔が携帯を見ながらそう言ったので、司もその文面を確認した。

真帆は、犯人がわかったのかなと心配する。


「まぁ、とにかくよかった。まだ幼稚園みたいだけれど、
みなさんによろしくだって」


大輔はもう一度文面を読み直すと、それをテーブルの上に戻す。


「なんだよ大輔、お前赤尾さんにメールしてたんだ、いつの間に」


祥太郎はそういうと、笑顔を見せる。


「幼稚園で何度も仕事をさせてもらっているからさ。窓が割れたとか聞いたら、
なんだか気になってさ」

「それだけですか?」


大輔の前に座る有紗は、大輔の言葉が終わらないうちくらいにセリフをかぶせ、

チューハイの缶で自分の赤らんだ頬を押さえていく。


「白井さん、幼稚園が気になっているのか、それとも陽菜が気になっているのか、
どっちですか……」


有紗はテーブルに置いてあったサワーの缶と、梅酒の缶を2つ並べ、

大輔の方を見た。真帆は、有紗の膝を軽く叩く。

有紗は、真帆がどういう意味で自分の膝を叩いたのかがわかり、

『クスッ』と小さな声を漏らす。


「何よ真帆。別にいいじゃない。陽菜は私たちの大事な友達でしょ。
好きになってもらえた方が、嬉しいじゃない」


有紗は、チューハイの残りを飲み干し、『ふぅ』と息を吐く。



「でも……陽菜には、好きな人がいますけどね……」



有紗はそういうと、前にいる大輔を見る。

その横にいた司の目も、その向こうにいる祥太郎の目も、

あまりにもハッキリと語った有紗の方を向いた。



【22-1】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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Comment

ももんた

拍手コメントさん、こんばんは

>うわ……言ってしまったという感想です。

はい、有紗は気持ちの乱れから、爆弾発言です。
毎日楽しんでもらえて、とっても嬉しいですよ。
これからも、よろしくお願いします。
  • URL
  • 2017/03/23 23:40

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