23 二人の思いがけない日 【23-4】

【23-4】
「あ……『ポカホンタス』だ」

「ん?」

「いえ、少し前に流れていた曲です。映画のタイトルが浮かばなくて」


真帆は、気になっていたのですっきりしたと自分の胸に触れる。

昔、ビデオで借りましたと話しているうちに、渋滞もなかったため、

真帆のマンションが近付いてきた。雨の神様に味方されたのか、

建物を出たときには激しかった雨が、少し小降りに変わっている。

真帆は、あっという間についてしまったと思い時計を見るが、

それなりに時間が経っていることに気付く。


「すみません、私、話に夢中になっていて。結局、ここまで」

「気にしないでください。最初から決めていたと言ったでしょ。で、次は?」

「あ、そこを曲がれば……」


真帆に言われた通り角を曲がると、少し広めの場所があった。

そこに1台の車を見つける。


「ここ?」

「……はい」


真帆には、その車が誰のものなのか、すぐにわかった。

祥太郎は、真帆の気持ちに気付かないまま、車を空いている場所に止める。


「あの……黄原さん」


祥太郎がそう言ったとき、目の前の車から一人の女性が姿を見せた。

そのままこちらに近付くと、

女性はいきなり真帆が座っている助手席の窓をガンガンと叩く。

祥太郎は何が起きたのかと、すぐにその女性を見た。


「すみません、私の母です」

「エ?」


遅れるようにして、妹の美帆も車から姿を見せた。

真帆は、二人がどうして揃っているのかわからないが、

このままでは祥太郎に迷惑がかかると思い、『ありがとうございました』と頭を下げ、

車から出ようとした。しかし、真帆の母は、運転しているのが男性だと気付き、

矛先を真帆から祥太郎にチェンジする。


「すみません……」


車の中にいる祥太郎にも声が届いたので、祥太郎は出た方がいいと判断する。

真帆も慌てて助手席から外に出た。


「お姉ちゃん……タイミング最悪」


美帆の言葉に、真帆は顔を睨みつける。


「あなた、お名前は」

「黒木祥太郎です」

「どうして娘と一緒に、ここへ?」


真帆の母は、自分のことなど名乗りもせずに、ただ目の前の祥太郎に問いつめた。

真帆は、カバンから折りたたみの傘を取り出し広げると、祥太郎を中に入れる。


「お母さん、そんないきなり質問して失礼よ。
黒木さんは、今日雨が降って大変だからって、ここまで」

「何をしていたの、今まで」

「何って……」

「映画を見て、食事をしてきました」


祥太郎の言葉に、真帆の母は品定めをするように、視線を上から下へと移動させる。


「あなた……ご職業は」

「お母さん!」


真帆は、母がどんな態度に出るのか予想が出来たため、

失礼なことを言わないで欲しいと腕を引っ張った。

そばにいた妹の美帆は、別に隠すことではないでしょうと、

さらに揉めそうなセリフを間に放り込む。


「『華楽』という中華料理店を、親と一緒にやっています」

「……お店? あら……そうですか」


真帆を見た母は、一度大きくため息をつく。


「真帆。『お友達』なのだから、こんなふうにご迷惑をおかけしてはダメよ。
女性のマンション前まで送ってもらうなんて。
そこからどんなふうになってもいいのかと、男性に勘違いさせてしまうでしょう」

「……お母さん、何を言っているの。黒木さんに謝って」

「どうぞ、このままお帰りください。ですが、今お話したとおり、
これ以上のお付き合いは……」

「お母さん!」


真帆は、申し訳ないという表情で祥太郎を見た後、その手に傘を握らせた。

そして、自分は傘もささずに濡れながら、母親を離そうとする。


「わかりましたよ。あなたがこんなふうにだらしがないことをするからでしょう。
ほら……」


真帆の母は、祥太郎から離れ、マンションの入り口に向かおうとする。


「ちょっと待ってください」


祥太郎は真帆と母親の間に入り、持っていた傘を真帆に戻そうとする。

真帆はそれはいいと首を振った。

祥太郎はそれならばと、真帆を自分に近付け、一緒の傘に入る。


「あ……あなた」


目の前で真帆を引き寄せた祥太郎に、

母親はどういう態度なのかと表情をさらに険しく変える。


「僕は、『華楽』という、親が守ってきた店を誇りに思っています。
だからこそ、自分で継いで行こうと決めましたし、その努力もしているつもりです。
どういう感情をお持ちになったのかわからないですが、
それだけは言わせてもらいます」

「何も別に言いませんよ。あなたと真帆は『お友達』なのでしょ」


母親はそういうと、真帆と離れてくださいと、祥太郎との間に入ろうとする。


「今時……個人経営の店なんて……」


母親のそのつぶやきに、今度は真帆が反論する。


「お母さんは、何も知らないのに……全て決め付けないでよ。
私の行き方、考え方まで、強制しようとしないで」


真帆はそういうと、祥太郎の方を向き、『ごめんなさい』と謝罪した。

祥太郎はその真帆の手を強引に引っ張ると、助手席の扉を開ける。


「話したいことがある、乗って」

「エ……」

「いいから」


真帆はそのまま半分押し込まれるようになり、祥太郎は運転席に戻った。



【23-5】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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