24 全てを聞き終えた後 【24-3】

【24-3】
立ち尽くす陽菜の横を追い抜いていく人たちとの、何も重ならない視線。

陽菜はそこから下を向いたまま、ただ歩み始める。

すると、前から来た男性に肩が触れた。

大きな荷物を持っていた男性は、すぐに『すみません』と謝罪してくれる。


「いえ、こちらこそ、ボーッとしていて」


陽菜は、その男性に頭を下げた後、肩に下げていた大きなカバンを見た。

いつもカメラを入れた大きなカバンを持っている大輔のことを思い出す。



『赤尾さんの生き方を、俺は応援します』



思う人がいると、しかもその相手が妻のいる人だと話した後、大輔は陽菜にそう言った。

陽菜はそこからしっかりと顔をあげ、瞬が残る店の方向をもう一度見る。

妻などもう愛情がないと言ったのに、子供など必要ないと言いきったのに、

その同じ口で、瞬は『愛しい』という言葉を使った。

どう考えても、何を動かしても、正しいのは自分の方だと、

陽菜は、店の方向に背を向けると、前に向かって歩き出した。





別れを迎えた有紗や陽菜と違い、真帆は幸せの中にいた。

昼休みになると、すぐに携帯を確認する。

祥太郎からのメールをチェックし、その返事を打ち始める。

お客様に変わった人がいた。新しいメニューが出来そうだ。

話題はこんなたわいもないことだったが、真帆にとってみると、

その情報が自分のところだけに来ているという事実だけで、十分満足できた。



『次の休みには、どこに行こうか』



真帆はコンビニに昼食を買いに行く間も、会社で昼食を食べている間も、

何度もメールを読み直し、次はどこに出かけようかと、思いを巡らせた。





その日の夜、ミャンマーへの出発が1週間後に迫った大輔は、

姉、文乃の住む『アプリコット』の寮へ向かった。

文乃も毎年大輔が秋から半年間、雑誌の仕事を請け負っていることはわかっていたが、

今年は外国だと知り、普段よりもさらに心配癖を強くする。


「去年は日本国内だったでしょ。今年もそうすればよかったのに」

「だから前にも話したよね。俺が企画を決めているわけじゃないんだ。
外国だって初めてじゃないし」

「そうだけれど……ミャンマーでしょ。あまり便利なところではないし」

「だから意味があるんだろ。小学校を建設して寄贈して、喜んでもらえている。
そんな子供たちの笑顔を、撮りたいと思うから」


大輔は、『フォトカチャ』で園児たちの顔を撮ったことが大きかったなと、

味噌汁のお椀を持つ。

文乃は、幼稚園と聞き、陽菜のことを思い出した。


「ねぇ、大輔」

「何」

「大輔……今、お付き合いしている人、いないの?」


文乃は、何気なくそう聞いたつもりだったが、大輔は文乃の顔を見る。

文乃はおかわりあるけれどと、視線をそらした。

大輔は『いいよ』と断り、一度箸をおく。


「司から何を聞いた?」

「……何も」

「本当?」

「本当よ、司君は何も言ってません」


文乃は、大輔もいい年齢だから気になるだけだとそうごまかし、

お茶の支度をすると、一度席を立つ。


「俺のことはいいよ。姉ちゃんが、こうして幸せになってくれたら、
まずはそれで」


大輔は、自分の方が若いのだから、いずれ出会いがあるよと笑って見せる。

文乃はそれ以上聞くのも責め立てるような気がして、話題を別のものにした。





次の日、有紗は仕事を終えて、ほぼ定時に『リファーレ』を出た。

駅までまっすぐに歩いていると、『すみません』と後ろから声をかけられる。

スーツ姿の物腰が柔らかそうな若い男性は、有紗にとある駅まで行くには、

どういう経路で行けばいいのかと、尋ねてきた。

有紗はそんなことは駅まで行って、駅員に尋ねてくれたらいいのにと思いながら、

男性の出した路線図を覗き込む。

すると、その男性は手帳に挟んでいた1枚の名刺を取り出し、有紗の前に出した。



『フォトラリー』



有紗は、その雑誌名にすぐ反応した。

灰田のプライベートを追い続け、カメラマンとして大輔を使った雑誌になる。

男性の名前は、名刺を信じると『栗田大悟』であり、編集者となっている。

有紗はまた、『クーデター』に興味を持ち、聞きだそうとしているのだとわかり、

名刺を受け取ることなく歩き出す。


「あなたの協力が……必要なんですが」


大悟は有紗としばらく並ぶように歩き、そう声をかけたが、

それを無視した有紗は、そのまま顔を見ることもせずに駅へ向かった。



『フォトラリー』

電車に乗ってからも、有紗の頭の中には、ずっとこの名前が残っていた。

会社の事件は決着を見たし、灰田との関係が崩れた以上、

もう何も関わりたくないというのが本音だった。

それでも、なぜ自分を待っていたのか、どうして協力が必要なのか、

その思いも、簡単には消し去れなくなる。



『白井大輔』



有紗は、大輔ならば何か知っているかもしれないと思い、

電車を途中で降りると、ホームで電話をかける。

何度か呼び出していると、『はい』と大輔の声がした。



【24-4】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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