24 全てを聞き終えた後 【24-5】

【24-5】
「今日、山吹さんから電話があってさ」

「あぁ、うん」

「この間はごめんなさいって、そう謝っていた」


大輔と司は、互いにコップを持つと、軽く視線を合わせ、そのまま飲み始める。

簡単な炒め物を作る祥太郎は、そばにある調味料をお玉ですくい入れていく。


「明日、会ってくれないかって言われたから、あの店で会うことにしたんだ」

「あの店?」

「うん……一番最初にみんなで会った、あの店」


司は、『ミラージュ』のことだと気付く。

お嬢様に婚約者と演技してもらうため、陽菜と何度か待ち合わせをしたことも思い出す。


「赤尾さんにも会ったんだ」


そのタイミングで、二人の前に祥太郎が作った『肉野菜炒め』が置かれた。

店はまだ営業中のため、あらたに3人の客が店に入ってくる。


「……で?」

「好きな人がいるって、そう言っていた」


大輔はその相手が誰であるとか、具体的な状況などは何も語らずに、

ただ、自分の思いは届かなかったことだけを司に話した。

司は、そうかと一言言うと、コップのビールを飲み干していく。


「自分自身は考えてもいなかったんだ。この集まりがあるから、仕事でよく会うから、
そんなふうに思っていたのに、山吹さんに言われて、ふっと冷静になったとき、
自分自身が彼女のことを考えていたことに気付いて」


大輔は、小皿を受け取ると、1枚を司に渡す。


「文乃さんが気にしていた。私のことを心配ばかりしているから、
大輔は自分のことを何も考えないって」


司は、空になったコップにビールを入れた。


「やっぱり司か。姉ちゃんが急に『お付き合いしている人はいないのか』って聞くから、
おかしいなと思ったんだ」


大輔はビールを一口飲むと、箸たてから割り箸を取る。


「ちょっと待て。俺は文乃さんに何も言ってないぞ。
いや……前に『赤尾さん』はどの人だって、
ほら、お前が撮った写真を出してきたことはあったけれど」


司は、大輔が言ったんじゃないのかと、そばにあったメニューを見ると、

厨房にいる祥太郎にシューマイをオーダーする。


「言わないと思うけど」

「いやいや、わからないって。まぁ、いいよ。人を好きになれたのは一歩前進だ」


司は、肉野菜炒めを、小皿に取る。


「となると、あとはあいつか」

「祥太郎?」

「あぁ……」


司は、厨房にいる祥太郎を指差すと、『どうかな』と首を傾げて笑った。





「そうなのか」

「うん」


夜9時を回り、『華楽』は暖簾をしまった。

料理は祥太郎が自分も食べるからと数種類作り、司と大輔も奥にある座席に移動する。


「黄原さんのお母さんがさ、結構強烈な人でね。
まぁ、中華料理屋なのって、冷たい目で見られたけどね」


祥太郎は、それでも逆に気持ちが入った気がすると、

あらためて目の前にあるファイルを見る。


「なんて言った、お前」

「……何が」

「何って、黄原さんになんて言ったのか聞いているんだ」


司は、酔った勢いで話せと、祥太郎にビールを勧めた。

祥太郎は、そういう話しはここでするものではないからと誤魔化そうとするが、

司は自分が酔った勢いもあり、どう話したのかと何度も聞いていく。


「あぁ、もう、うるさいな。何って、付き合ってくださいってだけだよ」

「ほぉ……」


司が目を細めて、体を少し後ろにそらすような仕草をする。

その声と態度に、祥太郎はバカにしているだろうと、不機嫌な顔を見せた。


「バカになんてしていないよ。そうか……と思った」

「だったら、司は文乃さんにどう言ったのか、ここで言えよ」


祥太郎は、同じく文乃に告白したのだから、自分も教えろと司に迫った。

司は近付く祥太郎の顔を、左手ではらってみせる。


「何、それ」

「俺は、全てをアイコンタクトで済ませたから」

「……は? ウソつけ」


祥太郎は、そうやっていつも司は適当なことを言うと、座敷に寝転んだ。

大輔は、いつもと変わらない二人の様子を見ながら、リクエストしたシュウマイを食べる。


「大輔、ミャンマーは治安、どうなんだ」


横になった祥太郎を無視して、司は大輔に聞いた。

今まで、外国旅行は何度かしたことがあるけれど、ミャンマーはないなと箸を動かす。


「治安は悪くないよ。さすがに戦闘地域にはいけない。カメラを向けるだけで、
つかまってしまう場所もあるって聞くし。
俺はそういう写真を撮りたいわけじゃないからさ」


大輔は、実際に訪れるのは、ミャンマーにあるイラワジ川の上流だと話す。


「イラワジ川」

「うん」


大輔は、都心部ではなく山の上だと簡単に説明した。


「そこにはすでに活動しているNPOがあって。その人たちと一緒にしばらく生活する」

「NPO?」


横になっていた祥太郎は、大輔の話に興味が出たのか、姿勢を戻す。


「うん。少し前に出版社で担当の一人と会ったな……えっと……」


大輔は名刺をもらったと、バッグから出そうとする。


「いいよ大輔。俺たちはお前のことが知りたいだけだから」


司は、自炊も出来ないのに大丈夫なのだろうかと、文乃が心配していることを話す。


「昨日も言われたよ。でもそれは先に話をした。
『NPO』の人たちと生活を一緒にするから、あまり考えなくていいですよって、
そういうからさ」


祥太郎は、ミャンマーまで料理は作りにいけないぞと、笑ってみせる。


「まぁ、全て日本にいるようにはいかない、不便なことは覚悟している。
料理だけじゃないよ。飛行機を降りたら、嫌と言うほど車に乗るらしいし。
道も日本のように整備されていないから、乗り心地なんてものじゃないはずだ」


祥太郎は、体には気をつけろよと、大輔に声をかける。


「なぁ、黄原さん、お前のどこがいいって?」

「……うるさいよ。司」


祥太郎は、隣に座っている司を自分がされたように払おうとする。


「どこがいいって?」

「しつこいぞ」


祥太郎は、それでも嬉しそうな笑顔を見せる。

大輔は、二人のじゃれている様子を見ながら、空いた瓶を下に置いた。



【24-6】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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