25 お酒と本音とため息と 【25-6】

【25-6】
大輔は、飲み会の日、有紗が言った一言から陽菜への思いを認識したと、

そう言っていた。今、陽菜もまた、有紗の指摘から自分の思いを感じ取る。

真帆が言うとおり、青葉瞬とタイプは全く違うが、

大輔の言葉や態度が、傷ついて折れかけていた自分の『幼稚園の先生』という仕事に対し、

確かな道しるべを与えてくれた。

それはただ、仕事を持つもの同士の励ましだと捕らえていたが、

もしかしたら、もっと深いものがあったのかもしれないと、そう考える。

『あなたの生き方を応援します』と言ってくれた大輔の言葉が、

突然の瞬との別れを、影で支えてくれていたのではないかと陽菜は考える。


「陽菜」

「うん……」


陽菜は『マカロン』を持つと、二人の待つ部屋へ戻り、中心に広げて見せた。





陽菜の部屋で開いた飲み会の後、真帆は終電前の電車に乗り、部屋へ戻った。

本来なら自分の話をするつもりになっていたが、二人の状況がわかり、

どこか自慢話になりそうで、言い出すことが出来なかった。

有紗も、抱えている現実に、まだ気持ちが追いついていないように思え、

真帆は、しばらくみんなで集まるのは難しいのではないかと考え始める。

明日の日曜日、祥太郎と出かける予定を立てていたので、

その日は、重い気持ちを抱えながら、ベッドに入った。



有紗と真帆が帰った後、一人になった静かな部屋で、

陽菜は以前、大輔からもらった写真を出した。

子供たちの顔がうまく写っていなかったので、商売写真としてはNGだったものを、

陽菜の表情がいいからと大輔が言い、サービスでともらったものになる。

大輔に、子供たちと一緒にいる姿が、とても素敵だと褒めてもらえたことは、

陽菜に、『幼稚園の先生』としての喜びを、プラスしてくれるものだった。

絶対という確信はなかったが、確かに、大輔に好意をもたれているのではないかという、

薄っすらとした予感は、夏休みにお泊り会で会ったときから、

持っていたような気がする。

『好きな人がいる』と話した時、大輔は相手が誰なのか、

どういう人なのかとは、何も聞いてこなかった。

飲み会の日、酔った勢いとはいえ、有紗から聞き予想もしていただろうし、

結果的には、陽菜自身が発表したわけだけれど、

大輔は、恋愛の形が『不倫』であるという現実を責めることなく、

『生き方を応援する』とエールをもらった。

写真とは形を変えた方法だけれど、陽菜はまた、大輔に励まされた気がしてしまう。

自分が大輔に感じる思いは、どういうものなのかわからないまま、

陽菜は一人、ただ写真を見続けた。





大輔がミャンマーに出発してから半月が経ち、『新町幼稚園』では、

秋の運動会に向け、練習の真っ最中だった。

陽菜は、年中の子供たちのお遊戯担当として、正面の台に立ち、

見本の踊りを披露する。本番には揃いのポンポンを持ち、踊ることが決まっていたので、

子供たちはその姿を親たちに見せようと、毎日張り切って練習をした。


「はるな先生、また明日」


バスが出発し、騒がしかった園内が静かになる。

陽菜が時計を見ると、午後2時半を示していた。

お遊戯の指導で声を出していたため、コップに水を入れ軽くうがいをする。

何度かうがいをしたあと、陽菜は職員室へ戻った。



その頃、『アモーラ』の司の前には、見覚えのあるお客様が訪れていた。

受付の女子社員は、『茶山樹里』の名前を、紙に書く。


「は?」

「お嬢様です。緑川さん……」


司は書類棚の影に隠れ、そっと窓の外を見た。

確かに樹里らしき女性が一人、立っているのが見える。

しかし、以前は綺麗なストレートのロングだった髪型は、

肩より少し長いくらいになり、印象も違って見える。

司は時計で時間を確認すると、営業所の扉を開けた。


「あ……緑川さん」

「樹里さん、どうされましたか」

「はい。今日はご報告に」

「報告」

「そうなんです。私、なりたい職業が決まったので」

「……はぁ」


司は、樹里があまりにも嬉しそうにしているので、

とりあえずどうぞと、営業所の中に入ってもらうことにした。

奥にあるソファーへ座らせると、その前に自分も座る。


「すみません、お忙しいのに」

「あぁ、いえ」


司は、思いを寄せてくれていた頃の樹里とは違う表情に戸惑いながらも、

どういう話なのかと、そう聞きだした。


「はい。私『幼稚園の先生』になろうと決めたので」


樹里は、あまり何も考えずに入学した大学だったが、

調べてみると、幼稚園教諭や保育士になれる資格が取れることがわかったと、

そう言い始めた。司は、そうですかと頷きながら聞いていく。


「緑川さんのお相手の……えっと赤尾さんに出会ってから、
そこから少しずつ興味を持ちました。
今までは、大学生活に目標を持っていませんでしたし、
卒業だけ出来たらと考えて、単位もそれほど真剣に考えていませんでした。
何気なく見ていて、資格が取れることに気付いて、
そこから先生に色々と相談をしています」


樹里は、最初の授業から必死に聞いていると、楽しそうに笑い出す。


「自分が世間知らずで、何も出来ないと不安ばかりでしたけれど、
いざ、取り組んでみると、頼りにされることがとっても嬉しくて……」


大学の教授が、親しい友人の経営している『認可保育園』を紹介してくれたので、

この夏休みに少しアルバイトをしたのだと、樹里は嬉しそうに語っていく。


「そうですか」

「はい。子供たちの目が、キラキラしていました」


司は、それはいいことですねと話を合わせた。

現状が不満だと、背伸びしていた時の樹里からすると、前向きになったからなのか、

表情も魅力的に見えてくる。


「それで、緑川さんにお願いが……」


司は、嫌な予感がしながら、

『どういうことでしょうか』と聞くことになってしまった。



【26-1】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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