27 彼の手のファインダー 【27-3】

【27-3】

そして、大輔の帰国日。

今、仕事をしている出版社に、

仕事の途中経過の報告をしてから『華楽』に来ることが決まっていたため、

残りのメンバーは早く揃い、準備をしっかり整えて、

大輔が驚くような迎え方をしようということになる。

『華楽』の営業は昼間のみとし、圭子は早めに暖簾を下げてくれた。

その時間に合わせるように、陽菜と真帆が到着する。


「結構な荷物だね」

「かさばっていますけれど、軽いから平気ですよ」


主役登場まで時間がないからと、いきなり飾りつけが始まった。


「本当にお店の工事、始まるのね」

「エ? 赤尾さん、冗談だと思っていたの?」

「そうじゃないけれど」


祥太郎は、かわいらしい折り紙のリボンを手に取ると、満足そうな顔をする。


「いいね、いいね。なんだかかわいらしい。大輔驚くかな」

「笑うだろうな」


同じように到着していた司は、幼稚園風の飾りつけを見ながら、

陽菜に準備するのが大変だっただろうとそう言った。

陽菜は、実は少し前に行った誕生会でのお下がりを、

同僚からもおすそ分けしてもらったから大丈夫だと、セロテープを切りながら言う。


「へぇ、誕生日か。そんなもの祝ってもらうものじゃなくなったな」


司は伸びているリング上の飾りを、右から左に流していく。


「……あ!」


祥太郎は急に厨房から飛び出すと、そばで飾り付けをしていた真帆を見た。

真帆は陽菜の横に立ち、テーブルに紙の飾りを並べている。

司は、祥太郎が急に声を出したので、料理でも失敗したのかと聞いた。


「いや、いいんだ」


祥太郎は、また厨房に戻り、冷蔵庫から材料を取り出していく。


「何でもないなら、急に大きな声を出すな」


司はそういうと、厨房をのぞき込む。


祥太郎は、自分が交際が始まったことを浮かれている間に、

真帆の誕生日が過ぎてしまったのではないかと、心配になり始める。


「祥太郎」

「何」

「黄原さんの誕生日は、2月だ」


司の言葉に、祥太郎は『そうなの』と真帆を見る。


「違いますよ黒木さん、真帆の誕生日は3月です」


二人のやり取りを聞き取った陽菜は、口元に右手を置き、祥太郎に向かってそう言った。

真帆は、思わず祥太郎の方を向く。


「そうなの?」

「……うん」


祥太郎は、それならよかったと、また鍋を振り始める。


「そうか、3月か……黄原さん、2月っぽい気がしたのにな」

「2月っぽい人って、どういう人ですか」


陽菜は、司の言い訳がおかしくて、飾りをつけながら笑い出す。

真帆は、あまり笑うと脚立から落ちるよと、陽菜にアドバイスをした。


「黒木さん、誕生日以外にもプレゼントはOKですよ、ねぇ、真帆。
クリスマスもあるしねぇ」

「……陽菜」


陽菜のコメントに、真帆は思わず下を向く。


「全く、やっぱりそうだったんだ。真帆ったら何も言わないから」


陽菜は飾り付けを終えると、脚立を降り、厨房にいる祥太郎に向かって、

真帆をよろしくお願いしますと、頭を下げる。

祥太郎は火を止めると、こちらこそと陽菜に対して返礼をした。


「赤尾さん、こいつら二人でコソコソ付き合い始めたんですよ。
メンバーが揃ったら、色々と語らせてやりましょう」


司はそういうと、祥太郎に『なぁ』と声をかける。


「こそこそってなんだよ。そんなつもりじゃ……」


祥太郎は厨房から声を出し、司の言葉を否定する。


「あ、それなら緑川さんも語ってくださいね。白井さんのお姉さんのこと」

「……ん?」

「エ? なに、それ」


真帆の驚きに、祥太郎もそうだと厨房から出てこようとした。


「お前は、真剣に料理してくれよ。ほら、大輔来るぞ」

「なんだよ、それ」


賑やかな準備から30分後、有紗が姿を見せた。

メンバーはあらためて必要はないと言ったが、

有紗はけじめだと言い、テーブルの前に立つ。


「この間は、本当にごめんなさい。自分自身本当に嫌な人間だと思って、
反省して、正直、今日ここに来るのも考えたのだけれど」


有紗は、そこで言葉を止めると、前回、身勝手に飛び出した時のことを思い出した。

どう声をかけていいのかわからなくなったメンバーと、

それをわかっていて、勝手に乱れた自分。


「今日は、白井さんがきっかけを作ってくれたと思って……」


有紗は、またよろしくお願いしますと、頭を下げる。


「人間、色々あるよ、必死に生きていたら」

「そうそう」


司と祥太郎の声に、有紗は小さく頭を下げる。

真帆は今日は楽しく飲むんだからねと、有紗に声をかけた。


「わかってます。言われなくても」


有紗は、空いている一番前の席に座り、時計を見る。

大輔が来ると言っていた時間は、10分くらい前に過ぎていた。

準備を整えたメンバーは、料理のセッティングも終了し、主役を待つ。


「仕事の報告、長引いているのかな」

「かもしれないな。ここで色々と話しておかないと、
来週また来てねってわけにはいかないだろうし」

「そうだな」


そんな話をしていたとき、『華楽』の扉がカラカラと音を立てた。

メンバーの視線が、全て扉に向かう。


「……どうも」


姿を見せたのは大輔で、『華楽』が思っていたような雰囲気ではないことに驚き、

足が止まる。


「何、これ」

「何これじゃないよ、お前の誕生日会だ」

「は?」


どういう意味なのかわからずに、大輔が困惑した顔を見せたとき、扉がさらに開く。


「こんばんは……」


大輔の横から顔を見せたのは、藍田志穂だった。



【27-4】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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