27 彼の手のファインダー 【27-4】

【27-4】
「あれ?」


祥太郎は、つい声が出てしまい、慌てて口を閉じる。

予想外に大輔以外の人間が登場したことで、

驚かせようとした面々が逆に驚き、何も言えなくなった。

志穂は微妙な空気を感じ取る。


「すみません、勝手にお邪魔して」

「いえいえ、そんな」


大輔だけだと思っていたところに現れた志穂は、最初こそ驚きの視線に囲まれたが、

本来の明るさと、積極さで、一気に、その日の主役に躍り出た。

本来なら、祥太郎と真帆の付き合いが始まったことや、司と文乃のことなど、

話題になりそうなことはあったはずなのに、誰もが『藍田志穂』が誰なのか、

そこに興味が集中する。


「とにかく、乾杯」


司の声に合わせて、6人ではなく7人の飲み会が始まった。

志穂の席は、大輔に近い誕生日席のような形になる。


「祥太郎の料理はうまいから、食べて」

「うん……」


志穂は大輔から小皿を受け取ると、それでは遠慮なくいただきますと、料理を食べ始めた。

美味しいですと両手で丸を作る。


「あ、ありがとうございます」


祥太郎はそう答えると、大輔に志穂を紹介して欲しいとそう言った。

大輔がそうだねと立ち上がろうとする。


「あ……大輔いいよ。自分で話す」


志穂にとっては、何気なく言った言葉だったが、大輔以外のメンバーは、

『大輔』と呼ぶ志穂に、さらに驚かされた。

真帆は『大輔って……』と思わずつぶやいてしまうが、

椅子を引き、立ち上がろうとしていた志穂や大輔には、その声が届かない。


「すみません、ではあらためて自己紹介をさせていただきます。
NPO『アスナル』のメンバー、藍田志穂と申します。
今は、ミャンマーの小学校建設事業に関わっていて、
地元の運営スタッフたちと、日々、よりよい学校づくりを目指して、色々と奮闘中です。
大輔は、その記録を撮り溜めてくれているだけではなくて、
スタッフたちとも、それに現地の子供たちともとても気さくに接してくれるので、
みんなチームという思いで頑張っています。あ、そうです、年齢は26です」


志穂は、大輔からこの会のことは聞いていますと、話し続ける。


「『結婚式』から偶然に広がった縁だなんて、おもしろいねって話をして。
で、日本に戻ったときに会うと聞いたので、迷惑なのかもしれないと思いつつ、
ずうずうしくお邪魔しました」


志穂はそれだけを話すと、席につく。


「藍田さんは、この活動、長いんですか」


志穂の挨拶を聞いた司は、すぐにそう聞いた。


「私は2年くらいです。もっと最初に土地探しからしていた先輩は、
本当に大変だったようですけど、ある程度出来てから向かったので」


それでも、向こうは日本と教育的なシステムも違うし、

役所などの登録もあやふやなところがあって、記録を残すことが大変だと、

苦労話をし始める。


「そういえば、大輔が文乃さんによこした手紙に、写真……」

「写真?」


志穂は、手紙を見たという司の言葉に対して、

隣に座る大輔に、どんな写真を送ったのかと聞く。


「ほら、食事会の後、みんなで撮っただろ、あれ」

「エ……あれ? あれって私作業用の服だったでしょ。やだ、大輔、
送るのならそう言ってよ」


志穂は、大輔の肩を『ポン』と軽く叩く。

司や祥太郎は、志穂から初めて聞く話に興味を持っているように見えたが、

真帆はコップを持ちながら、

志穂から何度も出てくる『大輔』という呼び名が気になっていた。

9月の半ばに出発してから1ヶ月半、

外国という閉ざされた環境で、さらに一緒に仕事をしているとしたら、

気の合うことがわかれば、互いに寄り添う関係になってもおかしくないと思いながらも、

陽菜や有紗がどう思っているのかわからず、どんな反応をしていればいいのか、

隣にいる友達の顔を見てしまう。

そんな真帆の視線に気付いているのかいないのか、次の言葉を出したのは陽菜だった。


「白井さん、幼稚園にもハガキ、ありがとうございました」

「あ……いえ」


陽菜は職員がみんな喜んでいたと、そう話す。


「何だよ大輔。赤尾さんにだけ、ハガキ書いたのか」


祥太郎は素直に反応し、そう言った。

大輔は、『だけ』ではないと、説明する。


「新町幼稚園に出したって、今赤尾さんが言っただろ。
というか、仕事で世話になっていたところには、みんな出した。
幼稚園も、それから保育園も、あと出版社も!」


大輔は、どうしてそういう言い方をするのかと、一番前に座る祥太郎を見る。


「幼稚園の先生……なんですか」

「あ……はい」


志穂は、陽菜の返事を聞くと、斜めに座る大輔のことをチラッと見た。

大輔の視線は、祥太郎の方に向いている。


「大輔言っていたもんね。現地の子供達と遊びながら、
園の子供たちと同じような笑顔だって」

「……うん」


志穂は、大輔が幼稚園の運動会のことを気にしていたと、陽菜に話した。


「あ、無事に終わりました。吉本さんも張り切ってくれて。いい写真が撮れて。
そうです、『りす』組、年中でリレー優勝したんですよ」


陽菜の報告に、大輔はそうですかと笑顔を見せる。


「あの……」


サワーを半分くらい飲んだ真帆は、

話の流れでどうしても気になることを、思い切って聞くことに決めた。



【27-5】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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