28 話し手と聞き手の距離 【28-6】

【28-6】
『フォトラリー』

有紗が栗田に連絡を入れると、栗田本人から出版社に来て欲しいとそう言われた。

有紗も、予想外の水島の態度が気になっていたため、寄ることにする。

この雑誌で仕事をしていた大輔が知らない『栗田大悟』という男は、

いったいどういう人物なのだろうとそう考える。

以前、文句を言うためにかけたときは、あまりにも横柄な態度だった。

それでも、あの水島の態度が、ただの見せかけには思えず、

『栗田』という男に、色々な意味で興味がわいていく。

出版社に着いたら、そのまま5階まで来て欲しいと言われていたので、

特に受付を通すことなく、エレベーターで5階に下りる。

すると、有紗の到着を待っていた栗田自身が、エレベーターが開くのを待っていた。


「どうも」


有紗は軽く頭を下げる。

栗田はジーンズ姿というラフな格好だったが、

軽い挨拶の割には、最初にあったときのようなふてぶてしさは感じられない。

有紗が栗田の後を着いていくと、『会議室』と書かれたプレートがあり、

その扉が目の前で開いた。

有紗が入ってくることがわかり、2名の男性が立ち上がる。

一人は、社内で『退職願』を預かったという水島で、

もうひとりは栗田と同じジーンズ姿に、髭をたくわえた見たこともない男だった。


「山吹さん、この人は『フォトラリー』編集長、宮石さんです」


宮石は有紗に向かって名刺を出すと、どうぞとソファーを示した。

有紗は名刺だけを受け取り、姿勢はそのままになる。


「どういうことでしょうか。私には何もわからないので」

「わかるように、これから説明します」


水島はそういうと、あらためて有紗に座ってほしいと、そう言った。

有紗は、これから何が始まるのかわからないまま、ソファーに座る。


「昼間はすみませんでした。もう少しことがしっかり動いてからと思っていましたが、
山吹さん、あなたの決断が思ったよりも早くて、少し焦りました」


水島はそういうと、ポケットから有紗の『退職願』を出した。

それを有紗に向かって手で押してくる。


「これは、なかったことにしてください」

「どうしてですか」

「昼間、説明したとおりです。あなたが会社を去ることを、
今一番期待しているのは、灰田部長だからです」


水島は、ここにいる宮石と栗田は、全ての流れを知っているとそう話す。


「あなたのいる会社『リファーレ』では、創業者一族を排除するクーデターが起きました。
それ自体は成功し、これから新しく生まれ変わる……社員はそう思っているはずです。
いや、それは間違いないのですが……中で、個人的な利益を生み出している面々が、
ヒーロー面をしていることが、問題なのです」


宮石は、この情報をどこから探っていこうかと思っていたところ、

数いる女性たちの中から、有紗がターゲットになったとそう話す。


「灰田啓次という男は、山吹さん、そもそもあなたに保険として近付いたんです。
もう、お気づきかと思いますが、灰田部長には間宮という長年の愛人がいます。
その他にも数名、それは昔から代わりません」


水島は、コンサルティング会社をしている頃から、そういう状態だったと、

灰田の女性関係を暴露した。有紗は、すでにわかっていることだとはいえ、

これだけハッキリ言われてしまうと、何も言い返せなくなる。


「灰田部長は、確かに仕事の出来る方です。
でも、それは、手段を選ばないという条件があってのことです。
今までも、闇の部分にかかる付き合いの数々が、噂されていました。
法律を知り尽くし、網にかからない方法を使う人間は、少なからずいます」


水島は、前回小さな会社を利用したときには、

社長の借金を帳消しにするという条件をつけ、すべての情報を封じました。

その社長も会社を畳み、本来なら全てなくなるお金を、

なんとか押さえたわけですから、灰田さんに文句など言いません。


「灰田部長は、『リファーレ』の『クーデター』という大きな仕事に、
過去の部分も全て隠してしまおうと、そう考えていました。
しかし、政治家を動かし、会社の重鎮を黙ったまま排除するとなると、
そこにはお金が動きます。その動きを最終的には擦り付ける相手が欲しかった。
それが……あなたです」


水島は、灰田が使途不明金を出していて、

経理から追及される手前にあるのだと、そう言い始めた。

『リファーレ』は社員が立ち上がり、

これまでの創業者一族が経営をするという、世襲制にメスを入れた企業として、

本年度新卒が望む企業のランクを上げていた。

来年、再来年と優秀な社員を取るために、今、イメージを損ねたくないので、

使途不明金があるのはわかっても、

それは内部だけの動きにとどめたいと考えているのだと言う。


「マスコミに公になるのはまずいので、何か出来事をつくり、
処理してしまおうとそう考えています」


水島の前に座る宮石は、有紗の目を見ながら、ここからが大事ですよという顔をする。


「あなたと自分の個人的な関係を利用して、灰田は、資料の持ち出しや、
書類の書き換えなどの仕事を、全て、山吹さんがやったということにし、
逃げるつもりです」


罪などない有紗に、なすりつけようとしていること。

それは有紗とって、初めて聞かされる事実だった。



【29-1】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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