30 6人の一番長い日 【30-3】

【30-3】
午前11時40分。

次の電車が駅に入ってくるが、真帆は乗らないままベンチに座り、

スマホでニュースを調べた。

祥太郎から聞いたような『第一報』的な記事が、検索リストに色々と上がっている。

『ミャンマー』や『イラワジ川』など、文字として見るまでは、

どこか真実味のなかった真帆だったが、

こうして、写真が貼り付けてあるものを見てしまうと、

やはりそうなのだとしか思えなくなっていた。


「はぁ……」


祥太郎には強気に、励ます言葉を並べることが出来たのに、

今は、最悪のことしか頭に浮かばなくなっている。

真帆にとって大輔の存在は、それほど近いものではなかったが、

親友のピンチを聞いた祥太郎にとっては、

おそらく片方の腕をもがれてしまうくらいの辛さがあるはずで、

そのことを思うと、ただ涙が浮かび始める。

この前、一時帰国をした日、ミャンマーでどんな活動をし、写真を撮っているのか、

大輔は、楽しそうな顔でみんなに披露してくれた。

自分では行けるはずもない場所で、活動している大輔や志穂のことを、

尊敬に近い思いで見ていたのは、ついこの間だったのにと真帆は大きく息を吐く。

真帆は、会の後、大輔が送ってくれたメールの中に、

祥太郎のことを頼むと書いてあったことを思い出し、さらに涙がにじんだ。

真帆は、一度立ち上がり、反対側ホームに向かおうとしたが、

このまま一人で戻り、部屋にいる気持ちにはなれなくなる。

真帆は、電話番号を呼び出し、受話器を耳に当てた。





午後11時50分。

陽菜は、朝から部屋の掃除をしていた。

掃除機をかけながら、今日は何を作ろうかと考える。

思っているよりも気温が低くなっているので、温かいものがいいだろうと思い、

そうなると鍋というのが一番選択しやすかった。

しかし、一人だとどうも考えてしまう。

こたつとテーブルが一緒になっている家具を、横にずらそうと一度掃除機を切った。

すると、今まで気付けなかった携帯の音に気付く。

陽菜は出ようと思い受話器を取るが、一歩遅かったのか電話は切れてしまった。

相手は誰だろうと思い確認すると、『真帆』となっている。

また、遊びにでも来るのかなと思い、すぐにボタンを押す。

するとタイミングが悪かったのか、今度は話し中になっていた。

陽菜は、用事があるのならまたかけてくるだろうと思いながら、

携帯を置き、あらためて掃除機のスイッチを入れる。

自然と鼻歌を歌いながら、陽菜は掃除の続きを開始した。



「エ……」

『携帯のニュースにも出ているの。だから、私』


先に陽菜へ電話をかけた真帆だったが、掃除機の音に消され、

電話に出てくれることがなかったため、そのまま有紗に電話をかけた。

陽菜と同じように部屋にいた有紗は、受話器を耳につけたまま、

テーブルの上に置いてあるタブレットを取り出し、ニュースを検索する。


『出版社から、白井さんの実家にも連絡が入ったんだって。
とにかく電話が通じないし、現地がどうなっているのか、行くことも出来ないみたいで』


真帆は、祥太郎には『大丈夫だ』と言ったものの、

一人で考えていると辛くなると、有紗に話す。


『陽菜に電話したら、出なくて』


有紗は、大輔がミャンマーに出発する前、陽菜への思いがあることに気付いたと、

自分に語ってくれたことを思い出す。


「……真帆、陽菜にはしない方がいいよ」

『エ……』

「だって、決まっていないしわからない。それでも今、私たちはこれだけ不安なんだよ。
だから、陽菜を変に不安にさせても……」



『正直、驚きましたけど、山吹さんの問いかけに、自分自身目覚めた気もしました』



有紗の脳裏に、大輔が言ったセリフが蘇る。

人から指摘されたことで、

あらためて自分自身の思いに気付くこともあるのだということだったが、

大輔は、堂々と陽菜への思いを、語ってくれた。


『それもそうだよね、いい話とは言えないから。知らないなら知らないほうが。
陽菜に言っても、どうなるわけでもないし……』


真帆は、聞いても嬉しくないことだったのに、ごめんねと有紗に謝ってくる。


「そんなことないよ。全く知らない人の話じゃないのだもの」

『うん』

「ただ、陽菜は……」


大輔は、陽菜が瞬と付き合いを続けていると思い、ミャンマーへ行ってしまった。

しかし、陽菜と瞬の関係は終わりを迎えている。

有紗は、陽菜の中にも、まだハッキリとした形ではないが、

大輔への気持ちがあるのではないかと、そう思っていた。



もしも、本当に最悪のことが起きた時、他の4人が知っていて、

自分だけ知らなかったとしたら……



有紗は、そんな状況が起きたら、陽菜はどう思うだろうかとあらためて考えた。



【30-4】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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