30 6人の一番長い日 【30-5】

【30-5】
午後12時53分。


「何か、食べたのか」

「いや」

「じゃぁ、作ろうか」

「いい……」


大輔の情報を朝一番に知った司も、

真帆と同じく一人で部屋にいるのは落ち着かないと思い、

祥太郎のいる『華楽』へ来た。店は営業中だったが、

その日は雑音のいる中に身を置くことが出来ず、

解体が来週に迫った家の中で座り続ける。


「文乃さん、家に着いたかな」

「どうかな……」


何か新しいことがわかったら連絡をくれるはずだからと、司は携帯を見る。

今なら、もしかしたらという思いから、司と祥太郎だけで二桁になるくらい、

大輔の携帯へ連絡をしたが、つながる気配はどこにもなかった。

二人の前に置かれた湯飲みから、お茶の湯気だけが上がり続ける。


「大輔のこと、真帆に、言うことになっちゃってさ。
今日、二人で会うつもりだったから」

「うん」

「今考えたら、何か他の理由だってウソついて、言わなければよかったかなって」


祥太郎は、きっと他の二人にも伝わっただろうなと、ぽつりとつぶやく。


「うん」


司は、大輔と一緒に色々と話したことを思い出した。

『華楽』では、文乃のことを謝罪し、初めて聞く過去に驚きはあったものの、

むしろ嬉しいと受け入れてくれたこと。

そして、再びの出発前に会ったとき、文乃を頼むと言われたことなど、

一つ一つの出来事が、鮮明に思い返される。


「何が頼むだよ……そんな、あいつらしくないこと言うからだ」


司は、手を顔の前で組むと、言葉に出来ない思いを握り締める。


「はぁ……どうして何も出来ないんだ」

「……司」

「どうしてここにいないとならないんだよ、俺は」


司はそういうと、両手を頭の下に置き、今度は横になり天井を見る。

祥太郎も何も言葉がないまま、ただ時計を見た。

長い針が1周まわり、文乃が連絡をくれないかと思うが、

その思いはすぐにかき消され、かかってこないほうがいいと考える。

何も答えは出ないまま、黙った二人の向こう側で、いつもの『華楽』が動いていた。





午後1時30分。

真帆は陽菜の部屋に到着した。

インターフォンの音に陽菜は立ち上がり、ゆっくりと扉を開ける。


「陽菜……」

「うん」


真帆は、キッチンのフライパンに、途中になったままのチャーハンを見た。

自分の電話から、作業が止まってしまったのだろうと考える。

真帆は、おじゃましますと靴を脱いだ。


「時間的にどうかなと思って。駅前でサンドイッチ買ってきた」


真帆はビニール袋を陽菜に見せると、テーブルに置く。


「陽菜に電話がつながらなくて、その後有紗にかけたの。
そうしたら、有紗が、陽菜には言わない方がいいって言って」

「うん」


陽菜は、黙ったまま頷いた。

真帆の気持ちも、有紗の気持ちもわかる気がしてしまう。


「でも……やっぱり陽菜にも知ってもらって、願った方がいいって」


真帆は、大輔の無事を、全員で願ったほうがいいとそう付け加える。


「うん……」


願ってことがうまく動くのなら、それこそ必死で願うと陽菜は思っていた。

他のメンバーもおそらく同じ気持ちを持っていて、

出来ることなら何でもしたいと考えているだろうと、ため息をつく。


「私、本当はこの間、白井さんに言わないとならないことがたくさんあったの。
運動会のことも、夏休みに引越ししてしまった子からもらった手紙のことも……
でも、あの日、藍田さんと一緒に来ていた白井さんには、何も言えなくて」


大輔が志穂を連れてきたことで、確かに予定が変わってしまった。

真帆も、祥太郎とのことが話せなかったことを思い出し、『うん』と小さく頷いていく。

止まった時間と、何かしていないと持たない時間が繰り返し訪れる。

時計は午後1時50分を過ぎ、陽菜は急に立ち上がる。


「陽菜……」


陽菜は、無言のまま、シンクの中を磨き始めた。

料理は途中のままだったが、ただ熱心にシンクを磨き続ける。

何かをしていても状況は変わらないが、そうして動きたくなる陽菜の思いは理解できた。

真帆はスマートフォンを取り出し、それから新しい情報が入らないだろうかと、

何度かネットを確認する。

それは『華楽』にいる司と祥太郎も同じだった。

入れたお茶を飲んでみたり、ぬるくなったから変えてみたり、

そして、急に思い立ったようにスマートフォンを開き、ネット検索をする。

さらに、部屋に残りクッションを抱え座る有紗も、

大輔が無事であるという一報を、ただ待ち続けた。



【30-6】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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