30 6人の一番長い日 【30-6】

【30-6】
午後3時。

司の携帯が鳴りだした。文乃からの連絡だとわかり、一瞬出るのが遅れる。

祥太郎もすぐに気付き、司の顔を見た。


「もしもし……」


司は震えそうになる手に力を入れて、しっかりと受話器を握る。


「そう……無事に着いてよかった。うん……」


祥太郎はちゃぶ台の前に座り、両手を組んだ。

あらゆる神様に願うつもりで、司の表情を見続ける。

文乃は、とりあえず実家の両親に大輔の今を教え、連絡を待っていることを話す。


「そうか、まだなんだ」

『うん……ごめんね』

「いや、それは仕方がないよ。とにかく何時でもいいから、必ず連絡して」

『わかった』


文乃との電話は、数分で切れる。

祥太郎は、何かわかったのかと尋ねた。

司は『何もわからない』という意味で、黙って首を振る。


「まだ新しい情報はないらしい。とにかく実家について、
ご両親に大輔の仕事の話をしたって、そう言っていた」

「そうか……」


祥太郎は大きく息を吐くと、また大輔の番号を呼び出し、電話をかける。

朝から何度かけても、状態は変わらなかった。


「大輔がいることなんて、当たり前だと思っていたのにな」


祥太郎の言葉に、司は黙ったままになる。


「あ、そうだ」


祥太郎はまた大輔の電話番号を回し、しばらく待った。


「祥太郎、電話はつながらないって……」

「司、あいつ土砂崩れに巻き込まれているかもしれないだろ。でも、
この呼び出し音が鳴れば、周りの人が気付く。ここに大輔が……いや、
人がいるって。この音が、助けになればって……」


祥太郎は、鳴らし続けていたらと言った後、思い出したことがあったのか、

トーンが下がる。


「そっか……呼び出しされてないんだった」

「うん……おそらく、電話は機能していない」


文乃が実家から連絡を受けたのは、朝8時だった。それから9時間が経過している。

司は、認めたくないけれど、認めなければならないときが来たのかもしれないと、

時計を見た。





午後4時。外は夕焼けが広がり、カラスの鳴き声が聞こえた。

真帆は舞ちゃんが陽菜にくれた絵を見る。


「これって陽菜なの?」

「……うん。夏休み前に退園した子が、くれたものなの」

「そうなんだ」


真帆は、こういうのを見ると、幼稚園の先生は素敵な仕事だと思うと、

また絵を元の場所に戻す。


「その頃、青葉先輩の奥さんが妊娠したことを知って、私の気持ちはどん底だった。
信じて着いていこうという反面、幼稚園の先生として、
最低な生き方をしようとしているって、毎日苦しんでいた」


陽菜の言葉に、真帆は横にある写真を見つける。


「これ……」

「白井さんが撮ってくれたの。その日は盆踊り大会で舞ちゃんが最後の日だった。
別れが互いに悲しくて、そんな姿をこっそり撮ってくれて……」


陽菜の脳裏に、初めての遠足でおにぎりを渡したこと、その後の飲み会で再会したこと、

仕事の中で色々な話をしたことなどが、鮮明に蘇ってくる。


「人を笑顔に出来る仕事だって……白井さん、褒めてくれた」


陽菜はテーブルに両手を置き、しっかりと合わせた。

こんなことをしても、どうにもならないことはわかっているけれど、

それでも、祈らずにはいられなかった。


「いつも励ましてもらった。仕事を通してだから、押し付けるような言葉じゃなくて、
でも、私にはそれが勇気になったから」


真帆は、陽菜が気持ちを語っているのを聞きながら、

こんな思いのまま、大輔が消えてしまったら、

また陽菜が恋愛から遠ざかってしまうと、手を握り締める。


「私には……まだ、話をしないとならないことがある」


陽菜は、そういうとただ手を合わせた。

少しでも陽菜の気持ちが楽になればと思い、

『大丈夫』という言葉を口にしようとしたとき、真帆の携帯が鳴る。

相手を見ると、祥太郎だった。


「祥太郎さんだ」


真帆の声に、陽菜は一度頷く。

真帆は、震える手で通話ボタンを押した。


「はい……」

『もしもし、俺』

「うん」

『とにかく結論だけ言う。大輔は……病院にいることがわかった』

「……本当?」

『間違いない。文乃さんから連絡があった』

「うん……」


真帆は、携帯を口元から離す。


「陽菜、白井さん助かっているって」

「……本当?」

「うん、今、祥太郎さんから……待っていてね。詳しいことを聞くから」


真帆はそういうと、あらためて祥太郎の声を聞こうと、受話器を耳にあてた。



【31-1】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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