32 素直になったら見えるもの 【32-6】

【32-6】
出された写真は、有紗と灰田が並んで歩く姿や、エレベーターに乗り込む姿、

そして、ホテルの部屋に入る寸前のものまであった。

人に見られているわけがないと思っていた場所での写真が出てきたことに、

有紗は言葉が続かなくなる。


「灰田さんを追っていたということは、
『フォトラリー』の掲載記事などでもご存知ですよね。
まぁ、これくらいのしつこさがあるものなのですよ、実際」


栗田は、その闇社会に強い男との接点は、

すべて共通点のある日に持たれていたのだと、そう話す。


「灰田さんは、最初から何かがあった時のために、あなたを利用していた。
だから、あなたと会うこと、会う時間、全てその男に告げていました。
そして……あなたと会っているということを、隠れ蓑にしようとしていた」

「……話しが見えません」


有紗は、幸せだと思っていたあの頃の時間すべてが、

灰田の計画通りだったという言葉を聞きながら、必死の抵抗をしているつもりだった。

今こそ、流れでこういう状態になっているけれど、

愛されていた時もあるし、必要とされているときもあったはずだと、

自分自身思いたくなる。


「あなたと会う場所に、必ず必要なものを持ってこさせていました。
実際、会っていたのは自分なのに、形式上、山吹有紗が、間に入っていたと、
そう証言するために……」

「あの、栗田さん。私はその方とお会いしたことはありません」

「そうですよ、だから隠れ蓑だと言いましたよね」


栗田は灰田と部屋に入ろうとする有紗の写真を、目の前に押し出してくる。

日付は、確かに『6月13日』となっていた。


「この日、本当に偶然、写真が撮れたのです。あなたと灰田の関係を追っていた、
写真週刊誌の記者が、いなくてもいい時間に張り込んでいたおかげで……」


栗田はさらに1枚の写真を横に置いた。

そこに映っているのは、黒いスーツ姿の男性と、

部屋から少し顔を出している灰田だった。


「時間は……まぁ、メールから逆算して、考えてもらえば……うん」


栗田は、どこか歯切れの悪そうなコメントをする。


「栗田。お前、そこまであれこれ言っておいて、こんなところだけごまかすな。
ハッキリ言わないと、伝わらない」

「あ……いや、はい」


宮石は、本当にこの男と会ったことがないかと、もう一度有紗に念を押した。

有紗は、写真をじっくり見てみるが、やはり会った記憶がないと首を振る。


「ありません」

「だとしたら、山吹さん、あなたはこの時間、灰田と一緒にいなかった。
一緒の部屋に入っていたのに、一緒にいなかった時間。
つまり、シャワーでも浴びていた……ってことじゃないのかな」


宮石の言葉に、有紗は思わず下を向いた。

互いに仕事の後、会うことが多いため、確かにいつもシャワーを使っていた。

ここまでは秘書でも、この後は一人の女として灰田に見てもらえるのだと気持ちを高め、

その先の時間に、酔いしれていたことを思い出す。

有紗は、宮石と栗田が目の前にいることが、

『男』に見られたくない部分を、無理やり見られているような気持ちになる。

その時、編集部の扉がバタンと開かれた。


「栗田……」


入ってきたのは、水島だった。

水島は、栗田の名前を呼ぶと、怒りの表情をにじませながら近付いてくる。

席に座っていた栗田の胸倉を、いきなりつかんだ。


「お前、こんなやり方はしないでくれと、そう言っただろ」

「……落ち着け、水島」

「落ち着けるわけがない。どうして山吹さんにこんなことを……」


水島は、テーブルの上に並べられた写真をまとめると、封筒に押し込んだ。

向かい合って座っている宮石に、これは必要ありませんと宣言する。


「水島さん、時間はないよ。灰田は薄々気付いている。
だから……使えるものは使わないと」

「だからといって、これは……」


水島は、これでは有紗の立場がないとそう話す。


「立場って……。灰田自身が、上層部に山吹さんと個人的に関係を持っていて、
そのいざこざの中で、彼女がこうした出来事を引き起こしてしまったと、
自分は監督できずに申し訳ないという、シナリオを描いているんだぞ。
だったら、全てをさらけ出して、対抗手段を取ればいいだろう。偶然とはいえ、
この写真は本物だ」


栗田は、写真に写っている男の姿を、指で何度も叩く。


「灰田はいつも、彼女と会う場所を教え、そこにデータや書類を運ばせた。
いざとなったら、こうして女性とベッドをともにしていたと、そう言い逃れるためだ。
山吹さん、あなた今、思い当たるところがあったのでしょ。
編集長に『シャワー』の話をされて……」

「栗田、辞めろ!」


有紗は、何も悪いことをしていないはずの自分が、

どうしてここまでプライベートを暴かれなければいけないのかと、

何もかもすべてが嫌になるくらい、気持ちが乱された。

どうせ、灰田になど勝てるわけがないのだから、

濡れ衣でもなんでも着せられてもいいから、もう、静かな場所に行きたいと思い、

立ち上がると、その場から逃げようとする。

編集部の扉を開けようとしたとき、その手を水島に止められた。


「待って……」


有紗の目には、必死に見える水島の顔が映った。


「こんなふうにしてしまって、申し訳ない。栗田には僕からきちんと話をします。
山吹さんの……」

「もういい加減にしてください。何が本当のことなのですか。
退職しようとしたのに、止められて。それだけではなくて、あんなふうに色々と」


有紗は、『恋愛関係』の生々しい話を、男性二人に知られたという事実に対して、

怒りをあらわにした。水島は『すみません』ともう一度謝罪する。


「水島さん、あなただって結局、私を利用しようとしているだけでしょ。
もう何もかも嫌! ほっといてください」

「山吹さん……」


有紗は、水島の腕を引き剥がし、そのまま廊下に飛び出していく。

『幸せ』だと思っていた灰田との時間には、

『たくらみ』という積み重ねたがあっただけで、

1秒すら本当の気持ちがなかったのだと、有紗はズタズタな気持ちを抱えたまま、

ただ階段を駆け下りた。



【33-1】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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