33 善と悪のタイミング 【33-2】

【33-2】
次の日、大輔は以前、文乃がリハビリをした病院で、あらためて診察を受けた。

肩のレントゲン写真を見ながら、医師は若いから回復は早いだろうとカルテを書く。

大輔は診察を終えた後、そのまま部屋には戻らずに『華楽』に向かった。


「すみません、ご迷惑をかけて」

「いいのよ、そんなこと。祥太郎の言うとおり、うちはもう昼間だけの営業だから、
ランチの慌しいときだけいれば平気だし」

「おぉ……それより無理をするなよ。若いからといって、侮るとよくない」


大輔は、祥太郎が動きにくい自分のために、

しばらく泊まりに来てくれるということになり、

その分負担をかけると両親に頭を下げた。

明彦も圭子も、助かってよかったねと、大輔に話しかける。


「先日、お姉さんが見えて、ご丁寧にお礼をしてもらって。なんだか申し訳なかったよ」

「あぁ、そうそう」


そんな話をしている中でも、『華楽』には新しい客が入ってくる。

すると、聞き覚えのある声が聞こえたため、大輔はカウンターに座ったまま、

視線を扉側に向けた。


「あ……」

「こんにちは」


入ってきたのは、『原田運送』の封筒を片手に持った真帆だった。

祥太郎は厨房から顔を出すと、軽く手をあげる。


「前から、今週のどこかで『自動車工場』に来る予定があるって聞いていたからさ、
大輔の診察の日が今日だとわかったから……」


祥太郎は、真帆に何を食べるかと厨房から聞いた。

真帆は大輔が食べていたので、同じように『チャーシュー麺』をオーダーする。


「黄原さん、仕事大丈夫なの?」

「はい。うちは小さな会社ですけど、社長も部長も本当にいい人で。
ミャンマーの土砂崩れで怪我をした友人が戻ってくるという話をしたら、
仕事のついでに会ってこられるのなら、ぜひ会っておいでってそう言ってくれて」

「本当に?」

「本当ですよ。大手ではない中小企業のいいところです」


真帆はそういうと、カウンターに座る大輔の隣に座ろうとする。

すると、明彦がテーブルが空いているのだから、向こうに座りなさいと、

そう声をかけた。祥太郎もその方がいいと、二人分のコップを運ぶ。

大輔と真帆は、あらためてテーブル席で向かい合った。


「肩は大変そうだけれど、でも、白井さん、思ったよりも元気でほっとしました」


真帆は、帰国も思ったより早かったと言いながら、荷物を横に置く。


「本当に申し訳なかった。あんなことになって、みんなに心配かけて」

「いえ、そんな……と言いたいところですけど、陽菜も有紗も、もちろん私も、
本当にあたふたしてしまって」


真帆は、祥太郎の電話があったときには、しっかり励まさないとと思ったのに、

電話を切った途端、一気に気持ちが揺れたと当時のことを語りだす。


「その後、有紗に連絡して、その後陽菜のところにいって、
二人でずっとクッション握り締めてました」


真帆は、陽菜なんて作りかけのチャーハンをそのままにして、

ずっと考え込んでいたと話していく。


「今だから、全てが笑えますけれど……」


祥太郎は厨房から『そうだ、そうだ』と真帆の意見に相槌を打つ。


「祥太郎、黄原さんのチャーシュー麺、俺が払う」

「あ……ウソですよ、やだやだもう!」


真帆は両手を振りながら、そんな必要はないと否定する。

そこに真帆のために作られた『チャーシュー麺』が祥太郎によって運ばれる。


「はい、真帆の分」

「ありがとう」


大輔はすぐに祥太郎を見る。


「お前、露骨だな」


真帆は、大輔の言葉の意味がわからずに祥太郎を見た。

祥太郎はわざとらしく『わからないな』という顔をする。


「あれ? お前にもチャーシュー7枚じゃなかったかな?」


祥太郎はそういうと別の客が残した皿を持ち、厨房に戻った。



「ありがとうございました」


昼時の忙しさが消えていき、店内にはテーブル席に残る大輔と真帆。

そして、カウンターに座る客1人となった。

祥太郎はエプロンを外し、真帆の横に座る。


「祥太郎さんは、白井さんのところに泊まることが、
学生時代に戻ったみたいで楽しいって、言ってますよ」


真帆は、祥太郎が大輔の部屋に泊まりに行っていることをそう話す。


「そう、楽しい、楽しい」


祥太郎は大輔の部屋は専門書がたくさんあると、真帆に解説する。


「専門書?」

「そう、カメラの本とか、世界の草花みたいなものとか……」

「へぇ……」

「仕事で使うから買っただけだよ。
黄原さん、『クリスマス』には、ちゃんと祥太郎を解放しますから」


大輔はそういうと、真帆のことを見た。


「いいんです。『クリスマス』の日は、お世話になっている商店街の方たちと、
最後のイベントらしくて、会う予定は立ててないですし」

「……は? そうなの?」


祥太郎は厨房の奥に立っている明彦のことを指差しながら、『そうそう』と頷いた。


「どこに行こうとしても混雑するし、来年から時間が出来るからね、
そういう騒ぎではないときに、会えばいいと思ってさ」


祥太郎のその意見に、真帆も頷き返す。


「だから『クリスマス』は、陽菜と有紗を誘ってと思っています」


真帆は、今年は二人とも寂しい『シングルクリスマス』なんですと言いながら、

大輔の顔を見る。


「あ、そうだ。陽菜から連絡をもらいました。白井さんのお姉さんから、
かわいらしいポーチを3人の分いただいているって、すみません……」


真帆は、今度会うときにもらうつもりですとそう話す。


「ポーチ? あ、そうなんだ」

「たぶん、司経由で渡ったんだろ。文乃さん、うちにも司と一緒に来てくれて、
お礼をしてくれたから。姉としての気配りだって」


祥太郎は、大輔のお姉さんは、自分にとっても姉のような人だと話す。


「緑川さん経由で? でも、白井さんのお姉さんからって……」

「あれ? 話していなかったっけ? 司の彼女は大輔の姉さんなんだ。
それがさ、司はずっとずっと、文乃さんが好きで……」

「祥太郎、お前、勝手に話すと司に殴られるぞ」


大輔は適当なところでやめておけと、祥太郎に釘をさす。


「いや、だって……まぁ、そうか」


祥太郎は、説明のために広げた手を畳んだエプロンに向わせ、また畳みなおす。


「まぁ、ようするに司という男は、
意外にも真面目であり、一途だと言うことなんだよね」

「そうそう、惚れっぽい祥太郎とは違ってね」


大輔はそういうと、ニヤリと笑う。


「大輔、なんだよその言い方。そんな事実、過去にないぞ」


祥太郎はすぐに真帆を見る。

真帆は二人のやり取りに反応することはなく、

聞こえているのに聞こえていないふりをしているように見えた。



【33-3】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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