33 善と悪のタイミング 【33-3】

【33-3】
思い切り笑ってくれたり、逆に『どういうことなのか』と言われたら、

それはと空気を逆転させるつもりのあった祥太郎だが、真帆からは、

どちらの感想も戻らない。


「大輔……お前、この微妙な空気をどうしてくれるんだ」


大輔は真帆の顔を見ながら、司以上に祥太郎は真面目だよと、

下手な俳優の棒読みのセリフっぽく、フォローする。

黙っていた真帆は、二人のやり取りがおかしくて、笑いだすが、

祥太郎は大輔のフォローに納得がいかないのか、『はぁ……』とため息をつく。


「それじゃ、陽菜は緑川さんから受け取ったわけですね。
正直、白井さんのお姉さんがくれたって聞いて、どこに接点があったのかな、
もしかしたら白井さんにすでに会ったのかなと、思っていたので」


落ち込み気味の祥太郎はそのままで、真帆はさらに話を続ける。


「陽菜、この間、白井さんが戻ってきたとき、本当は見せたいものがあったって。
でも、藍田さんが一緒に来たでしょ、現地の話も盛り上がっていたし、
ちょっと遠慮してしまったというか。だから、白井さんが事故に遭ったかもと聞いた時に、
話したいことがたくさんあるって、必死に祈ってました」

「……話したいこと」


大輔は、陽菜が自分に話したいことがあると聞き、中身が気になった。


「はい。幼稚園を辞めた子からの手紙とか、運動会の写真とか、
白井さんが喜んでくれるのではないかと思って、あの日、持っていたみたいです」


真帆は、陽菜の部屋には園児が描いた絵が飾ってあるとそう話す。


「そうなんだ……。幼稚園のことか……」


大輔は、園児の描いた絵と聞き、舞ちゃんの顔を思い出す。


「前に戻ってきたとき、赤尾さん、とても明るく見えたんだよね。
だから、仕事も……うまくいっているんだなとは、思ったけれど……」


大輔は、仕事もと言った後、言葉を濁す。

『ミラージュ』の店長の顔を思い出し、そうつぶやいてしまった。

あの一時帰国の日、大輔に目に映った陽菜の笑顔は、

信じた相手としっかりと道を歩いているからこそ出たものだと、そう思えた。

別れ際に、手でファインターを作り、『笑顔が見られてよかった』と言ったものの、

あれは大輔の本心ではなく、精一杯の強がりだった。

自分の思いは、やはり届かないのだということ、

『幸せそうな陽菜』に、大輔自身が関われていないという現実がそこにあって、

『飲み会』という一緒に過ごす時間を、自分から断ち切ったところもあった気がする。

それでも、その後、押し込んだままの思いをどう処理していこうか悩みながら、

電車に乗っていたことも思い出す。


「明るく見えましたか……。でも、それは陽菜が、悔しい気持ちを押し込んで、
必死に頑張っていただけだと思います」


真帆は、大輔が陽菜のことを気にしていると思い、

『あの人は最低です』と、ハッキリ言った。


「あの人って……誰?」


事情を知らない祥太郎が、真帆に問いかける。

しかし、真帆の視線は大輔に向かったままで、祥太郎の方には戻らない。


「結局、現状は変えられないという結論を出したそうですから。
精一杯頑張ろうとした陽菜は、完全に騙されました」


『騙された』という言葉に、大輔はどう言葉を重ねたらいいのか、わからなくなる。

『残念だ』と言えば、本心にウソをつくことになるし、

だからといって、『よかった』というのも、この場に似合わない。

祥太郎は、隣に座る真帆に、もう一度『誰のことを言っているのか』と聞こうとするが、

大輔の真剣な表情が視界に入り、

状況を知らない自分は、興味だけで参加できないのではないかと、何も言えなくなる。

祥太郎は何度もエプロンをたたんだので、

手持ち無沙汰の状態でも、また直す理由がなくなってしまった。

エプロンを椅子の上に置くと、二人をテーブルに残し厨房に戻っていく。


「有紗も、身勝手な男に振り回されてしまって、色々とあったんです。
白井さんはご存知でしょう」


大輔は、灰田のことに悩み続けた有紗に、色々とぶつけられたセリフを思いだす。


「みなさんには、失礼なことをたくさんしてしまったけれど……
でも、誰にも相談出来なくて。白井さんの一時帰国の時は、
二人とも、結構、落ち込んでいた時期でした」


だから、来年こそ二人にいい星が回ってくるようにと、真帆は両手を合わせる。

祥太郎は、真帆と大輔にだけ通じ合っているような会話に、

無理して入るわけにもいかず、厨房の中から様子だけを確認する。


「そう……」


大輔は、『ミャンマー』出発を前に、告白をした日、

陽菜が、たとえハンデのある恋でも、自分が相手を動かしたのだから、

最後まで責任を取らないといけないのだと、思いつめていた顔が重なっていく。



『褒めたりしないでください。自分自身が辛いです』



陽菜は、人に祝福されないかもしれないけれど、

それでも相手を支えるとそう話してくれた。

その一途な思いに、大輔は『応援する』という言葉を、陽菜に残した。

しかし、その思いは裏切られ、踏みにじられたことを知る。

真帆は、何かを考え続けているような大輔の顔を見ながら、

コップに残っていたお冷を、一口飲んだ。



【33-4】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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