34 もどかしさとの戦い 【34-5】

【34-5】
『クリスマス』前日、有紗が普段どおり会社に出勤し仕事をしていると、内線がなった。

すぐに『広報室』へ来るようにというメッセージが、受話器から聞こえる。

有紗は灰田でも水島でもない声を聞き、受話器を置いた。

栗田や宮石からプライベートを暴かれるようなことを言われ、

苛立ちから出版社を逃げ出した。

水島はすぐに追いかけてくれたが、結局、あれから何も言っては来ない。

広報室へ行けば、その水島から何かを言われるのではないかと思いながら、

有紗は重たい足取りで呼ばれた場所へ向かう。

扉をノックし中に入ると、ソファーに座っていた男性が2人、目の前で立ち上がった。


「あ……」


ソファーに座っていたのは、以前も打ち合わせで登場した『アモーラ』の佐々木と、

その付き添いで来た司だった。


「緑川さん……」

「ごめん、急に着いてくることになってさ、連絡しようかとも思ったんだけど、
まぁ、驚かすのもいいかと」


司は、あらためて後輩の佐々木だと、有紗に紹介する。

佐々木は、先日はありがとうございましたと頭を下げた。

有紗もすぐに返礼をする。

有紗は、水島や灰田がそばにいるかと思い前を見ると、そこにいたのは、

間宮あかりの推薦で途中入社をした佐藤だった。


「灰田部長は、もうすぐお帰りです。予定の時刻に渋滞で間に合わなくなりまして。
車内から、山吹さんをお二人に合わせておくようにと、そう連絡がありましたので」


有紗は『そうですか』と頷き、司の前に座る。


「実は、番組の撮影が来年そうそうに入ります」

「そうですか、それは……」

「『アモーラ』は今まで、業者向けの商品ばかりを扱ってきましたけれど、
実際に、個人的にも活用したいというお客様が増えてきていて、で、
来年2月に放送される特番番組で、
『リファーレ』の商品と一緒に、モデルが使用体験をすることになって」


司の隣に座る佐々木は、これから売り出しをかけるモデルの女の子が、

プチ整形の体験をするのだと、そう説明してくれた。

司は、今日はその撮影風景を、うちにも見せてもらえることになった御礼だと、

そう説明する。


「『リファーレ』がからむとわかったら、あっという間に企画が通ったよ。
さすが、大手は違う」


司は、有紗がついていた灰田部長のことを、

本当に仕事が出来る人だねとそう言った。

有紗は、後ろにスパイとも言える男が座っていることもわかっているので、

『はい』とそれだけの返事にとどめた。

足音が聞こえ、扉が開く。

司と佐々木、そして有紗も誰が登場したのかわかり、すぐに席を立った。


「申し訳ない、『アモーラ』さん、お待たせして」

「いえ、今日はお礼にうかがっただけですので」


司はそういうと、灰田の顔を見る。

灰田の後ろには、いつものように水島が立っていた。

有紗は水島と目があったので、すぐにそらす。


「来年早々の撮影だそうだね、私もスタジオには入らせてもらおうと思っています」

「そうですか、それは」


有紗は場つなぎは終了したと思い、広報室を出ようとする。


「山吹君、君も撮影には同行してくれないか。来年の1月なのだけれど……」


灰田からの突然の申し出に、有紗はどう返事をすべきか、黙ってしまう。


「秘書課がなくなって、ずいぶん退社した同僚も多いだろうけれど、
君は、来年も残っているよね」


灰田のセリフを聞き、有紗はその発言をした男の顔を見た。

逆に言えば、『まだ残るつもりなのか』とさえ、聞こえてくる。


「『ハンドベア』の船橋社長が見えるそうです。
山吹さんにお会いしたいと先日、声をかけてくださったので、ぜひ」


水島は、そういうと『お願いします』と頭を下げる。

『ハンドベア』というのは、縫製職人を抱える会社だった。

オリジナルの制作も行うが、『リファーレ』の新商品が決まると、

工場に入る前、試作を作り、その出来栄えを色々と科学的に分析してくれる。

着心地や、動いたときにどこに力が入るのかなど、データもしっかりと取った。

船橋社長というのは、その会社の2代目になる。

現場で会うと、いつも有紗に声をかけてくれた。


「山吹くんが参加すること、総務には水島から断りを入れてくれ」

「……はい」


水島はそれではと、一足先に部屋を出た。

有紗は水島を追うように、広報室を出る。


「水島さん」


有紗の呼びかけに、水島は立ち止まった。


「今更どうして私が……」

「『ハンドベア』の船橋社長の推薦です。
灰田部長が策を練っているわけではありませんので、深読みしなくて結構です」

「でも」


水島はここではあれこれ話をしたくないという態度なのか、

有紗の発言が途中であるにも関わらず、背を向けて歩き出した。



【34-6】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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