36 電話から始まる運命 【36-4】

【36-4】
「この3日間の中で、どうにかするつもりだった。でも……」


美帆は、そこから何も言えなくなってしまう。

ひねくれて、あちらこちらに飛び散っている美帆の『小さな心の本音』は、

船戸と結婚し、子供を産みたいのだろうと、真帆は考える。

だからこそ、急に真帆のところに現れたり、家を出てみたり、

今まででは考えられない行動を起こしている。


「船戸さんに連絡を取らないと」

「お姉ちゃん、いいって」

「いいわけがない、今すぐ取るの」


真帆は、いつものように美帆の意見に押されるようなことはなかった。

美帆は、言いあいになるといつも引いてしまうはずの姉が、

強い口調になることに驚く。


「身勝手な奥さんに対しても、生まれてきた子供のために、
もめないことを選んだ優しい人なのでしょ。
美帆の辛い気持ちも理解して、違う価値観を教えてくれたのでしょ。
その人に、こんな大事なことを話さないで勝手に決めるなんてこと、
絶対にしてはだめ。順番なんてどうだっていい。美帆はどうなの。
船戸さんと、一緒に生きて生きたいのか、真剣に考えたの?」


真帆は、美帆の顔が見える場所に移動し、そう訴える。


「美帆が決めるんだよ……美帆の人生だもの。誰にも遠慮なんていらない。
こうしたいって、ハッキリ言えばいいの」


真帆は、うなだれたままの美帆に、『決めていいんだよ』とそう言った。





「うん、わかった。いいよ、そんなこと」


大輔のアパートで昼寝をした祥太郎に、真帆から電話が入ったのは、

その日の夕方近くになってからだった。

美帆は、すぐに船戸と連絡を取り、妊娠の事実を知った船戸は、

週末に会って欲しいとそう言ったという。

美帆は、自分が親に話すから、これからでも二人で旅行に行って欲しいと真帆に話したが、

祥太郎は、そんなことよりも二人でたくさん話をしたほうがいいと、アドバイスする。

真帆は、『ありがとう』と嬉しそうに答えると、電話を切った。

アドバイスとは全く違う方向の、大きなため息が祥太郎から落ちていく。


「なんだよそれ。今、『話し合え』ってかっこいいこと言ったくせに」

「うるさい……」


祥太郎は携帯電話で、宿泊予定だった旅館に連絡をし、キャンセルだと話した。

大輔は、どこか食事にでも行こうと、祥太郎を誘う。

祥太郎はそうだよなと答えたが、ここに寿司でも取ろうよと話を変えていく。


「今日はここに泊まる」


祥太郎は、そういうとコンビニで酒でも買ってくるといい立ち上がろうとする。

大輔は、俺が行くからいいよと答え、部屋に祥太郎を残したまま、出て行った。





祥太郎と真帆の、初旅行が壊れた後の週末。

美帆は船戸と会い、妊娠の事実をあらためて告げた。船戸は驚くどころか嬉しいと言い、

真帆のいる前で、美帆と結婚して家族になりたいとそう宣言した。

ついでのようなプロポーズだと、ふてくされた美帆の膝を叩き、

真帆は、私も力になるのでと挨拶する。

祥太郎は、電話でその流れの報告を受け、これから美穂たちと一緒に、

両親と会う真帆に、『しっかり』と声をかけた。



司の週末は、文乃の新居で迎えていた。

その日の文乃は、昼過ぎからの勤務のため、ゆっくりと目覚めた。

歯ブラシも茶碗やコップも、当たり前のように司のものが並ぶ。

この場所に立ち寄るたびに、司の持ち物が増えていく。

文乃が早めの昼食の準備に取り掛かったので、司は掃除機を取り出し、

部屋の掃除をかって出た。



その司と、明日『特番の撮影』で会うことになっている有紗は、

水島から戻された写真をあらためて見ていた。

灰田を追い込むことを諦めたような口ぶりに、ほっとした気持ちもあったが、

商売として関わろうとした栗田や宮石は、どう思っているのかがわからず、

不安のかけらが取れないままになっている。

それでも、明日、『アモーラ』との仕事が終われば、

とりあえず迷惑をかける相手もいないと思い、

有紗はあらためて辞表を出そうと、そう考えていた。



2月にある『展覧会』に向け、陽菜は子供たちの作品展示をどうしようか、

アイデアをちらしの裏に書いていた。教室をどう使えば、見やすいのか、

一つ全員で作り上げる工作は、どんなものしようかなど、動物の絵を描いたり、

食べ物の絵を描いたり、思いのままにペンを走らせる。

すると、陽菜の指は、少し縦に長い三角を作り、そこに斜めの線を入れ始めた。

途中に四角が入り、そこにまた小さな四角が入る。

なんとなく頭に残っている『東京タワー』を、陽菜は思うままに描き続けた。



それぞれが、週末という休日を、それなりの過ごし方で迎えている頃、

大輔は呼び出された『フォトカチャ』で、富永と向かい合っていた。

富永は、どうしてもっと早くに連絡をしてこなかったと、大輔に話す。


「富永さんに話すと、ただの愚痴になりますから」

「それでいいだろう。『LIFE』との契約がなくなったとなると、
お前、生活が……」

「大丈夫ですよ、そこまで仕事もありましたし。それなりに」

「バカもん、貯金を崩すのはマイナスだろう」


富永は、『フォトカチャ』の専属として、次の大きな契約が決まるまで、

つなげていけばいいと、大輔に話す。


「富永さん、俺、それはお断りします」


大輔は、今、仕事をしているメンバーに迷惑をかけるのは困ると言い返した。


「それに、もう一度ミャンマーに行ってくるつもりですし」

「ミャンマーに? プライベートでか」

「はい」


大輔は、とりあえずそれを済ませてから、仕事を探しますと富永に話す。


「普段の生活を失った子供たちが、また立ち上がっていく姿を見たいんですよ。
自分も勇気が出ると思うし」


大輔は、目で見ることが一番心に響くと、そう言った。

富永は、始め怪訝そうな顔をしていたが、その表情はだんだん柔らかくなる。


「お前は昔から変わらないな、頑固で」


富永は、今、写真のビジネスはネット普及が後押しになっていて、

どんどん伸びているのだと説明してくれる。


「『フォトカチャ』も、今は子供の写真だけではないぞ。
企業のイベントに入ったり、プライベート出版という分野も登場して、
家族の雑誌を作るなんて会社もある。お前が『フォトカチャ』に根付いても、
他のメンバーが仕事を無くすなんてことはないから、まぁ、また顔を出せ」

「はい、ありがとうございます」


大輔は、富永に頭を下げると、出してもらったコーヒーに口をつけた。



【36-5】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
みなさんのコメント、拍手、ポチなど、お待ちしてます。

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