37 それぞれに芽吹く思い 【37-2】

【37-2】
祥太郎は、バイトを始める前に、

兄の貴之から、朋恵が離婚するだろうという話を聞いていたため、

どう話しかけていけばいいのかわからず、黙ってしまう。


「全く、変わらないよね祥太郎は。『華楽』が休みなら、
そういうときこそのんびりしていればいいのに」


朋恵の言葉に、祥太郎は『まぁ、そうだけれど』と言うだけで、

会話は続かなくなる。


「どうせお兄ちゃんから聞いているんでしょ。私のこと」


朋恵はサンダルを履き店に出てくると、ファイルはこれだと祥太郎に渡す。


「あ、うん」


祥太郎はもらってきた伝票を、出してくれたファイルに挟んだ。

朋恵は、店にある簡易椅子に腰かける。


「『華楽』継ぐんだってね」

「うん」

「上を賃貸に出来るマンションにするってお兄ちゃんから聞いた。
本当に好きなんだ、祥太郎は」


朋恵はこんな地味で、それほど売り上げも高くない商店街で、

どうして暮らして生きたいのかと、言い始める。


「そう悪く言うなよ。お前だって生まれて育った場所だろう」


祥太郎は簡単な後片付けを済ませていく。


「そう……この垢抜けない商店街が大嫌いで、そこから抜けたら、
楽しい暮らしが待っていると思って家を出て行ったのに。
エリートな部分が気に入って結婚した旦那は、超がつくくらいのマザコンだった」


朋恵は、人には必ず欠点があるねと笑ってみせる。


「本当に、離婚するのか」

「相当我慢したんだよ、これでも。ここにいるのがイヤだって飛び出たしね」


朋恵はそれでも耐えられなかったと、そう話す。


「ほら、仕事終わったんでしょ、さっさと帰りなさいよ。
お兄ちゃんには話しておくから」


朋恵は売り場に置かれたタオルの置き場所が少し乱れていることに気付き、

すぐに直し始める。


「ねぇ、祥太郎」

「何」

「今、幸せ?」


朋恵はそういうと、祥太郎を見る。


祥太郎は、すぐに頷こうとするが、それを朋恵はどう取るだろうかと、

一瞬気にしてしまう。それでも、自分を応援し続けてくれた真帆のことを思い、

自身を持ってしっかりと頷いた。


「幸せだと思うし、充実している」

「……そっか」


朋恵はそれだけを答えると、また売り場を直す作業をし始めた。





「お疲れ様でした」

「お疲れ様」


仕事を終えた陽菜は、帰り支度をしたものの、足がなかなか帰宅に向かなかった。

突然かかってきた瞬からの電話に、決別の言葉を送ったものの、

その後、もやもやは晴れないままになっている。

『会いたい』とか、『もう一度関係を戻したい』という感情ではないが、

こんなふうに電話をかけられたこと自体が、

まだ自分のことを瞬が甘く見ている気がして、どこか怒りに近いものを感じてしまう。

陽菜は携帯を取り出し、真帆の名前にしるしを動かしたが、その手が止まる。

そして一つ下にある有紗の名前にあわせ、電話をかけた。


「もしもし、私、陽菜。ねぇ、有紗……どこかで会えない?」


陽菜の誘いに、有紗はすぐにOKを出すと、

互いの家から真ん中の距離にある駅前で、待ち合わせをした。



「乾杯!」

「乾杯……へぇ、カラオケボックスね……こういう使い方があるとは」

「今は色々よ。別に歌う必要ないけれど、個室って気分で過ごせるでしょ」


有紗は、待ち合わせにあるカラオケボックスに陽菜と入ると、サワーをそれぞれ注文し、

いくつかのつまみも頼んだ。薄暗いところはあるけれど、

確かに個室と言えなくもないので、気持ちは楽になる。


「私もさ、近頃もやっとしたものがあって、誰かに話をしたかったの。
陽菜の誘いに、『そうだ』って、思ったもの」


有紗は、サラダをそれぞれに取り分ける。

陽菜は、サワーに口をつけ、話に勢いをつけようとする。


「電話があった!」

「電話?」


陽菜は、2、3日前に、急に瞬から連絡があったと有紗に語った。

有紗は、それぞれのサラダに備え付けのドレッシングをかける。


「何かあったらしいの。なんだか寂しそうなトーンで、
謝りたいから会えないかって、そう言ってきて」


陽菜の告白に、有紗は先日、『ミラージュ』に瞬がいなかったことを思い出す。


「そういえば、青葉先輩、電話番号変えていたんだよね。
私、仕事の人と会うために『ミラージュ』を使いたいからって連絡したら、
なぜかつながらなくて」

「そうみたい、だから知らない番号だと思っていたの。何度か無言電話だったから」

「無言?」

「そう……」


陽菜は、有紗がわけてくれたサラダを箸で食べていく。


「そうなんだ、私は番号を変えたのは陽菜とのことがあって、
私や真帆とも付き合いを切ろうとしたのかなと、ふと思ったのよね。
でも、お店に行った時もいないから聞いたら、年末で店長が代わったって……。
そうそう、聞いた。あ、そうか、何かあったってことなんだ」


有紗もサラダを食べ始める。


「奥さんと暮らしている家を出たとか言っていた。
でも、今更それを聞いてなんなのって、なんだか情けなくなって」


陽菜は、昔はあれほど好きだったのに、情けなくなったとそう話す。

有紗は、灰田のことを思い出し、陽菜の意見を受け入れると頷き返す。


「あぁ、わかる、『情けない』って感情、そうかも」

「エ……」


有紗は、ここだけの話だけれどと灰田の事件を陽菜に語った。



【37-3】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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