38 背中にかかる荷物 【38-3】

【38-3】
陽菜はなみと別れた後、家に戻るための電車に乗った。

扉付近は混み合っていたため、陽菜は座席の方まで入り、つり革をつかむ。



『頭で悩んでいるうちは、まだ恋じゃないんだなって……』



なみにも、なみの時間があったのだと、言葉を思い出しながら、

陽菜はあらためて考えた。空いている手で携帯を取り出す。



『今日、『どんぐり保育園』のなみ先生に会いました。
しっかり、約束を守った白井さんのことを、とっても褒めてましたよ』



陽菜は電車に揺られながら、大輔にメールを入れる。

なみは、陽菜と大輔のつながりを知った後、

自分が陽菜と会って話をしたいから、

大輔から陽菜に連絡を入れないようにして欲しいと頼み、今日を迎えた。

そのおかげで、久しぶりの再会は盛り上がり、

陽菜も、真帆や有紗とは違った共通点を持つなみと、本音で話をすることが出来た。

メールを送り終えた携帯を持ったまま、揺れに身を任せていると、

すぐに返信が届く。



『なみ先生も、素敵な先生ですね』



陽菜は『そうなんです』とまたすぐに返信をする。

家までの数十分、陽菜は携帯を見つめながら、過ごすことになった。





「何、にやついているんだよ」

「にやついているか? メールの内容が楽しいだけだって」


陽菜となみが久しぶりに笑いあったその頃、大輔は文乃の部屋にいた。

司と3人で食事をした後、来週にミャンマーへ再び旅立つことを告げたが、

文乃は何を考えているのかと呆れ顔になる。

それをなだめ、なんとか送り出す気持ちにさせたのは、一緒にいる司だった。

文乃は食事を終えた食器を片付けるため、台所に立っている。


「大輔」

「何……」

「ミャンマーへ行って、再出発したいというお前の行動を、
間違っているとは言わないけれど、文乃の気持ちも、わかってやれよ」


司は、あれだけの心配をさせられたのだからと、しっかり釘を刺す。


「わかっている。絶対に無理はしないし、報告だけしたら戻るから」


大輔は携帯を閉じると、片づけをする文乃の背中を見る。


「司のおかげで、姉ちゃんが幸せになれたと思っていたけれど、
一番、恩恵を受けているのは、俺かもしれない」

「ん? お前が?」

「あぁ……。自分自身、そこまで気にしていると思っていなかったのに、
やっぱり足の怪我のこと、どこかで気にしていた。
だから、自分の気持ちを素直に解放していなかったというか、
何に対しても壁を作っていたかもしれない。今はまだ、自分の番じゃないって」


大輔はそういうと、人は知らないうちにいろいろと背負うものだなと、

軽く肩を動かしていく。


「それなら、お互い様ってところだな」


司は、大輔が自分を許してくれたから、今があると、文乃の背中を見る。

大輔は、『そうだな』と言いながら携帯を閉じると、そろそろ帰るよと立ち上がった。





大輔が再びミャンマーに旅立った日、

真帆と祥太郎はあらたな骨組みを見せ始めた、『華楽』の前に立った。

祥太郎は業者からもらった、計画書の完成図を見ながら、

今からどんなふうになっていくのかと、隣に立つ真帆に説明をする。

真帆は、祥太郎の説明を聞きながら何度か頷き、空を見た。

朝はどんよりした雲が覆っていた冬の空に、綺麗な青の部分が顔をのぞかせる。


「白井さん、もう飛んだ?」

「……ん? あ、そうか、そうだね」


祥太郎も一緒に空を見上げ、そして隣に立つ真帆の右手をそっと握る。

真帆は、その何気ないぬくもりが嬉しくて、気持ちに応えるため少し強めに握り返した。



「はい、これ」


真帆は、二人が食事に入った店で、美帆からもらったと『旅行券』を出した。

二人の初旅行を邪魔してしまった謝罪だと話す。


「船戸さんと、一緒に買ってくれたんだって。どこに行くかはわからないから、
ぜひ使ってくれって」


真帆は、金額的には私たちの旅行より多いんだよと笑い出す。

祥太郎は旅行代理店の封筒に入った『旅行券』を見た後、すぐにしまう。


「こんなことしてくれなくていいのにな、これから二人大変だろうに」

「まぁね」


美帆の妊娠が判明し、その週末、初めて状況を知った船戸も飛んで来た黄原家では、

さすがに両親とも驚き、特に母は許さないと怒りのセリフを出した。

いつもは温厚な父親も、ゆっくり話をさせて欲しいとそう言ったという。


「あの日から、実際、どうなったのかなとは思っていたんだよね。
でも、俺が口を挟むのもおかしいしさ」

「うん」

「で……」


祥太郎は、結局どうなったのかと、あらためて真帆に尋ねた。



【38-4】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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