39 自分の両目に映るもの 【39-5】

【39-5】
朋恵は『そうなんだ』と伝票をめくる。


「向こうのお母さんには、反対されるかもしれないけどね」

「反対? どうして」

「初めて会ったときに、『中華料理屋』の息子なのかって目で、見られたし」


祥太郎は、以前、真帆のアパートの前で会った、母親のことを話す。


「バカにされた……ってこと?」


朋恵はそれまでと違い、顔を上げて祥太郎を見る。


「うーん……バカにされたというより、お母さんの理想の相手とは違ったんだろうなと、
そう思った。でも、彼女は気にしていないからね」


祥太郎は、うちも向こうも親の期待を裏切った子供だからと、そう言って軽く笑う。


「裏切った?」

「あぁ……うちは大学を出て、どうして就職しない……だろ。
真帆の方は、どうして公務員や大手企業のいい相手を選ばない……だろ?
俺も真帆も、自己流を貫いていて、親の言うことなんて全然聞いていないんだ」


祥太郎はそれでも、結果うまく流れているのが『親子』だよねと、靴を履き替える。


「親子……か」


祥太郎は、実家に戻ってから、悩み続けているように見える朋恵の顔を見た。

『離婚』という文字をかざしているものの、

どこかでまだ決心がついていないように思えてくる。


「今まで生きてきて、一番長く一緒にいるのが親だろ。それは間違いない。
俺は、その親がいなくなったとき、一緒にいられるなと思う人が、
結婚相手だと思っているんだよね」


祥太郎は、真帆との色々な出来事を思い出しながら、そう言いきった。

朋恵は何も言わず、領収書の1枚ずつに、店の印を押していく。


「じゃ、また来週」

「うん……」


祥太郎は店の扉を開けると、寒い風に首をすぼめ、

仮住まいになっているマンションに向かって、歩きだした。





「さようなら……」


最後の通園バスが園を出たため、職員たちは寒い外は嫌だと、

職員室に戻りだした。副園長は卒業証書を頼んだ業者と話している。

ホワイトボードを見ると、打ち合わせは午後4時となっていた。

『フォトカチャ』からは吉本が来るのだろうかと考えながら、

陽菜は廊下を箒で掃いていく。階段の1段ずつを掃きながら降りてくると、

ちょうど玄関に人が入ってくるのが見えた。

その姿に、陽菜は思わず箒を持ったまま走り出す。


「あの……」

「すみません、少し早かったですね『フォトカチャ』から来ました。白井です」


大輔は思いがけない登場に驚いている陽菜の顔を見ながら、

上がってもいいですかとそう言った。陽菜は慌ててどうぞとスリッパを出した。



「白井さんが来ると思わなくて、びっくりしました」

「それは成功だ。そんな姿を見てみようと思って、黙って来たので」


大輔は、陽菜が箒を持ったまま、走っていたのがおかしかったと、笑い出す。


「ひどい」


打ち合わせは、副園長の話が終わったらということになったため、

時間つぶしに二人は『りす』組に向かう。


「前のように、掲示物があまりないですね」

「そうですね。そろそろ一年の活動が終わりなので、
作品は思い出アルバムとして貼り付けています。
最後の日に持っていってもらうのに、今頃からまとめていないと間に合わなくて」

「あ……そうなんだ」


年長のクラスは『卒園式』のムードに盛り上がってきているため、

飾りつけも豪華ですよと、陽菜は笑う。


「また、幼稚園の写真、撮ることになったのですか?」


陽菜は、これからは難しいかもと言っていた、前の食事界での話を思い出し、

そう尋ねた。大輔は、今回は命令なのでとそう話す。


「命令」

「はい……『フォトカチャ』の富田さんに、少し頼みごとをしたんです。
その代わりに、忙しいこの時期は、集中して入ってくれと言われまして」


大輔は、ここだけではなく、いくつかの園で頼まれていると言う。


「あ、そうだ、『どんぐり保育園』でも、頼まれています。なみ先生……」


大輔が『なみ先生』の話をしようとしたので、陽菜は口元に指を置き、

語らないでとサインを出した。大輔はどうしてなのかがわからず、

不思議そうな顔をする。


「今度お話しします。なので……」

「わかりました」


大輔は納得しましたと頷き、2階の廊下から園庭を見る。

『チクタク隊』の子供たちが数名、滑り台で楽しそうな声を出している。


「子供の顔を見ていると、どこもみんな同じだなと思えるんですけどね」


大輔の言葉に、陽菜は隣に並び、子供たちを見る。


「ミャンマーですか?」

「はい……それでも、あの国はこれからよくなっていくだろうなという、
そんな予感もしますし」


大輔の優しい眼差しを見た陽菜は、少しだけ体を左に動かし、二人の間の空間を埋める。


「よくなるといいですね」


陽菜の声に、大輔は二人の距離が少し近付いたことに気付く。

大輔は、カメラを肩にかけなおす仕草をしながら、同じように距離を近づけた。


「仕事が終わったら……待っていてもいいですか」

「はい」


二人は食事の約束をし、また園庭の子供たちを見る。

それから数分後、副園長が呼んでいますと声がかかり、大輔は職員室へ移動した。



【39-6】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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