40 二度目の春が来る前に 【40-1】

40 二度目の春が来る前に
【40-1】

「何? 聞きたいことって……」

「うん……」


真帆は、こういったことだからこそ、

あまり構えた言い方をしないほうがいいかもと判断する。


「私、実はね、前から少し思っていたことがあるの」

「うん」

「有紗ってさ、実は白井さんのこと、好きってことはない?」


真帆はそういうと、茶碗を持ったまま有紗を見た。

有紗は真帆を見た後、口元を少し動かしていく。


「何よそれ、急に」

「そう、急だけれど、でもね、なんとなく思っていたんだよね。
有紗って、いつも白井さんに突っかかっていたでしょ。
今だって、青葉先輩のことを、陽菜に話した方がいいのかな……なんてさ。
せっかく白井さんの方を陽菜が向いているのに、
わざわざ問題になりそうなきっかけを、与える必要があるのかなとか考えたの。
それって、もしかしたら逆の思いがあったり……」


真帆は、大輔に文句を言った後謝ったことや、飲み会で身勝手に振舞ったことなど、

そこにはいつも大輔がからんでいたと、そう言った。


「ごめん、確かに急だわ……」


真帆は、すぐに否定をしない有紗の顔を見た後、

言葉が戻せないことに気付き、失敗したなと下を向く。


「白井さんのことね……」


有紗は、確かにそうだったかもしれないと、煮物を口に入れた後、何度か頷く。


「そうだったかもって」

「違うわよ、真帆。勘違いしないで。私は確かに今思うと、
いつも白井さんには突っかかっていたかもと思ったから。
でもそれは『好き』という感情とは違う。なんだろう……語ってくれないのに、
全部読まれている気がしたからかもしれない。見抜かれているというか……。
そう、自分の方が下に見られている気がしたのかも」


有紗は、出会い方がもっと違っていたら、わからなかったけれどとそう話す。


「出会い方?」

「そう……灰田部長と不倫していたことを、
白井さんには仕事の中で知られてしまったでしょ。
だからどうしても、心を許しきれなかった。それに、すぐにわかったしね」

「何を?」

「何をって……白井さんは、陽菜を好きなんだろうなってこと」


有紗はそこが出会い方の違いなのかもと、天ぷらに手を伸ばす。

真帆は、確かに『出会い方』というのはあるかもしれないと、

自分と祥太郎のことを考える。


「出会い方……か」


真帆は、納得するように頷いていく。


「うん。私、『あぁ、この人はこうだな』ってわかってしまうと、
そこで気持ちが続かなくなるのよ。昔からそうだったでしょ」


有紗は大学時代もそうだったと、真帆に話す。

真帆は、確かに有紗がいつも付き合ったのは、

相手が有紗を好きになったパターンが多かったことを思い出す。


「そうだったね……有紗はもてた。学園祭の時、わざわざ他校の学生が、
尋ねてきたりして」

「……そんなことあった? 学園祭ってはるか昔って気がする」

「そう? 10年くらいだよ」


真帆は懐かしいよねと、学生時代のことを思い出す。


「そうだよね、有紗ってそうそう……尽くしてくれる相手を、好きになる。
きっかけは向こうから作ってくれるのに、気付くと有紗が尽くしていて」

「立場逆転ってことでしょ。騙されやすいのかしら、私」

「そういう意味じゃないけれど……」


真帆の言葉に、灰田の裏切りから振り回された退職まで、

唯一、有紗の感情を理解してくれたのが、水島だったことを考えた。

そろそろ送ったお酒が着いてもいい頃ではないかと、あらためて日付を数える。


「そっか……それなら安心」

「何が安心なのよ」

「だって……」


真帆は急に食事が美味しくなったと言い、お酒もおかわりしようと提案する。

有紗はすぐに賛同し、ウエイトレスを呼ぶために、右手を上げた。



『今日の話しは、二人だけの中に収めよう』



真帆は、有紗と別れ、電車に乗った。

席はいくつか空いていたが、あえて入り口の近くに立つ。

瞬の今を知り、陽菜に話すべきなのか迷った有紗だったが、

真帆と話をする中で、結局、陽菜には語らないという結論を導き出した。

瞬自身の電話にも心を動かされることなく、関係を断ち切った陽菜に、

今更知らせることは、プラスにならないと判断した。

有紗は真帆に話せたことで楽になったと言い、真帆も二人の役に立てている気がして、

お酒の美味しさも重なり、気分はいいものになる。

携帯を見ると、祥太郎からのメールが入っている。

真帆は、有紗が言った『出会い方』の言葉を思い返した。



【40-2】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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