41 隣に立つ人 【41-4】

【41-4】

「司は一人息子だからどうだろうかと思ったけれど、二人とも子離れしている親で、
定年過ぎたら、世界一周だっけ?」

「そうそう、豪華客船で旅をしたいと、その話を自慢げに言っていたよな、お袋」


司は、昔から仕事を互いに持っていたので、立場が対等なのだと、そう話す。


「自慢げじゃないよ。うちの両親なんて、田舎育ちで、外に出たことがないからさ、
うらやましがっていた。東京に出てくるのさえ、考えてしまうって」


大輔のセリフに、有紗はおそらく自分の親もそうだろうと、頷いていく。


「はぁ……いいなぁ、みんな親の理解があって」


真帆はそういうと、祥太郎の顔を見る。


「うちなんて、初対面の祥太郎さんにとにかく失礼な言葉ばかり並べて、
口を開けば安定、安定、そればっかりだもの」


真帆は、妹の結婚も子供が出来ているので渋々了解したのだろうと、

この先を考えてため息をつく。


「真帆はそういうけれど、俺は別に気にならないけどね」


祥太郎は取り皿をそれぞれに分けていく。


「表裏のない、正直な人だなと思ったよ。確かに反対されたけれど、
でも、それからさらに妨害されるわけじゃないし。美帆ちゃんの結婚も、
渋々のように話しているけれど、実際は、ベビー用品を買いにいって、
今か、今かと待っているんだって」


祥太郎は、お母さんの反対が、逆に真帆を強くしたのだと、そう話す。


「そうかな」

「そうだよ。うちも色々と反対されて、ケンカばかりだったけれど、
今は揉める材料がないだろ。店と家が完成して、
順調に流れていることが怖いくらいだし」


祥太郎は、ここがオープンする時には、店長を祥太郎にすると、

父、明彦がいきまいていると、そう話す。


「おぉ……お前が店長か」

「商店街の打ち合わせに出るのが面倒なんだよ、きっと」

「いやいや、なぁ、大輔」

「そうそう。一人前だと認めてくれたんだよ、祥太郎。素直に受け取れ」


大輔はそういうと、『祥太郎の店長祝い』だと、あらためてグラスを上げる。


「よし、そうだ」


司や有紗、そして陽菜もグラスをあげる。

真帆はみんなに祝福されている祥太郎を見た後、遅れてグラスを上げる。


「まぁ……すみませんね、ついでに」


祥太郎はそういうと、頑張りますと笑って見せた。





「何?」


新築『華楽』での飲み会を終え、陽菜と大輔は同じ電車に乗った。

陽菜は『話してよかったのか』と大輔を見る。


「つい、話の流れで、文乃さんと4人で食事をしたこと、話してしまったけれど、
よかったのかなって」

「どうして」

「だって……」


大輔が話すのならともかく、呼ばれた自分が語るのはと、陽菜はそう言った。

どこか心配そうな陽菜の手を、隣に座る大輔はそっと握る。


「俺は逆に嬉しかったけどね」


大輔のセリフに、下を向きかけた陽菜の顔が上がる。


「陽菜が実際、4人で会うということに対して、どう思っていたかなと、
気にしていたし」

「気にしていたの?」

「うん……だから、俺は自分から話してくれたことが嬉しかった」


大輔は、そういうと、右手で軽く鼻の上をかく。


「なんだ、そうだったんだ」

「うん……」


『結婚』した二人と会う、自分の相手。

それは遠からず、自分たちも後を追いかけますという意味に取れると、

互いに口には出さないが、そう感じ取る。


「『れんげ』組のみんな、跳び箱が得意なの」

「うん」

「来年は小学生だねって言うと、みんな嬉しそうな顔をするし、結構色々と頑張れるし」

「うん」

「ひとつずつの行事を、これだけかみしめながら過ごすのも、ないかなって」


陽菜は、昨年の年中『りす』組が、年長となった『れんげ』組の担任になった。

最後の年を意識しながら、日々を過ごしているというセリフは、

行事や日々の話の中に、よく登場するようになる。

大輔もそれは理解し、不器用ではあるけれど、色々な仕事にも協力していた。


「今日は、誕生日会用のクマを作らないと」

「クマね……」

「大輔さんは糊付けしてくれたらいいから。紙の無駄になるし」


陽菜はそういうと、楽しそうに笑う。


「……確かに」


大輔もそう言いながら笑い返した。



【41-5】

それぞれの恋の色を塗っていくと、そこに見える『Color』は……
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