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17 優しいウソ 【カーディナル】 ③

17-③


ホックがはずれ、触れてくれるときを待った私の身体が解放される。

悠のズボンに手を伸ばすと、その手は止められてしまい、

彼のかけてくる体の重みに、私はソファーに横になってしまう。


「ねぇ……」

「少し、こうして見ていたいんだ」


悠はそういうと、私だけを逃げられない状態にし始める。

部屋の明かりはまだ普通のままで、悠の視線が胸元に向かっているのがわかり、

恥ずかしさのあまり顔を背けた。

彼の顔が目指す場所に向かい、その唇の優しい触れ方に、

私は思い通りの声をあげてしまう。

腹部を這うように進む、悠の唇に、じれったさとくすぐったさが混じり、

身体がさらに先へと動き始める。


「ねぇ……悠。ベッドに行こう。ここは明るすぎる」


私から離れていこうとする悠の腕をつかみ、移動して欲しいと言葉にする。

普段は優しく、私のことを常に考えてくれるような人なのに、

こんなときだけ突っ走るなんて。


「わかった……」


悠はリビングの電気を落とし、私を包む全てを取り去った後、

さらに先の時間を過ごす場所に連れて行ってくれる。


「私が……」


私は、悠がベルトを外そうとしている動きを止め、ベッドの上に座ったまま、

外し始めた。そのままズボンへ向かうつもりが、悠の指が私の身体を動き始め、

その時間が取れなくなってしまう。

耳元で名前を呼ばれ、優しく耳をあまがみされると、計画など全然役に立たなくて、

いつの間にか私は、横になっていた。

悠の動きを、受け止めているだけで精一杯になってしまう。

じれったい時間はそれほど長くなく、私たちはひとつになっていく。

心地よい時間に、身体をそらせた私の耳に、『愛している』という言葉が、

確かに届き、『愛されている』と思えば思うほど、深くその思いを知りたくなる。


私は悠を包み込んだまま、一緒に、長くて甘い息を吐いた。





ベッドの横にある小さなテレビ。

映るニュースは、どこか外国のようだった。

悠の手が、私の後ろから前に伸び、再びの時間へと誘ってくる。


「もう……」

「ダメかな」


求められることは嫌ではない。でも、心配にもなる。


「飽きちゃうから」


今は、互いに気持ちが高まっている状態だけど、この密な時間が、

いつまでも続くと思うには、過去の経験が複雑すぎる。


「飽きないよ……」


自分から別れを意識し、納得して終わっているのなら、引きずらないのだろうが、

どちらの別れも、自分には突然降りかかった悪夢のようだったため、

こんな気持ちがわきあがるのかもしれない。


「未央が好きだから、いつも触れていたいんだ……」


悠の優しい言葉。


「ありがとう」


言葉は人を傷つけるが、人を優しく包むことも出来る。

私は悠の言葉と指先に降参し、身体の向きを反対に変える。


「ん?」

「悠が悪いの……このままじゃ、眠れないでしょう」


まだこの日を終わらせたくない。

私は悠の首に腕を回し、今宵の続きをと、唇を重ねた。





季節は5月になった。

悠との時間も、互いの仕事をうまくあわせながら続けていくが、

ここ1週間は、私がまた仕事に缶詰状態となり、電話だけの日が続いている。

それでも、悠に話をするだけで、笑ってもらえるだけで、

気持ちはまた前向きになれた。

子供が出来たと話していたひとみは、あれからつわりを乗り越え、安定期に入り、

大きくなるお腹を抱え、近付くその日を心待ちにしながら、

また私を食事に誘ってくれる。


「美味しい」


ひとみのリクエストで、お店は『中華』を選んだ。

しかし、よく話し、よく食べ、よく笑う。

ひとみを見ながら、そう思う私。


「ひとみ」

「何?」

「よく食べるね」


思わず口からこぼれてしまった言葉。ひとみは口を動かしながらしっかり頷き返す。


「本当にさ、つわりの時には映像をみているだけで『ウッ』って感じだったの。
でもそれがいつの間にか終わって、そうしたら今度は食べたくて、食べたくて」


ひとみはそういうと、つわりは本当に洒落にならないのだと、経験を語ってくれた。


「映像もダメって、すごいね」

「そう、タレントとかが、大きな口をあけて食べているのを見るだけで、ダメ。
私このまま、栄養が取れなくて、赤ちゃんと一緒に死ぬかもしれないって、泣いたもの」


つわりの重さは人それぞれだと聞くが、ひとみは重たいほうらしい。

それでも、だんなさまが優しく励ましてくれたと、いいようにのろけられる。


「ひとみが食べられないからって、家には食べ物持ち込まないようにしてくれてね。
私が泣くと、泣き止むまで一緒にいてくれて……」

「はいはい、よかったわね、優しい人で」


子供が出来ないときは出来ないときで大変だったが、

今度は今度で、また大変だとそう思う。


「あ、そう。実はね、この間、主人が初めて話をしてくれたことがあるの」

「何?」

「結婚して、半年くらいは普通の日々だったでしょう。で、その後、
だんだんおかしくなって、そっけなくなったって愚痴ったじゃない」

「うん」


そうだった。全然そういうことがないと、私に愚痴っていたひとみ。


「実はね、主人が、本当は悩んでいたことを知ったの。
半年、普通にしていて子供が出来なかったでしょ。
もしかしたら、自分に原因があるのではないかって、病院にいったって」

「病院?」

「うん……健康な男女なら、それほど時間はかからずに、
子供って出来るものなのだそうよ。2年以内とか。で、それを越えるようになると、
男女、どちらかに理由があるとかで」


でも、ひとみの旦那さんは、半年で不安になってしまったという。


「このまま出来なかったら、自分がどうしたらわからなくなると思って、
自然と避け始めていたらしいの。私、それを聞いて、『は?』って声をあげてしまったわ」


ひとみは、普通、女が原因だと思う人が多いよねと、私に話してくれる。


「まぁ、そうだよね」

「でしょう。でも、何年か前に主人の従兄弟から、
子供が出来にくいから治療をしているという話しを聞いていて、
もしかしたらって調べたんだって。今はね、男性の方にってことが、
実際、増えているみたいで」





『俺は逆だな』

『逆?』

『子供を、望めないから』





ひとみの話しが、そこから耳に入らなくなった。



17-④




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テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

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