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18 思いを君に 【キャロル】 ②

18-②


「何度でも飲めるだろう」

「そうだけれど」


炭酸飲料をグラスに入れ、悠と一緒に席へ戻る。

啓太はこの後、ずっと奥だろうか。

店内に出てきたら、私に気付くかもしれない。


そういえば、松岡さんと話し合ったあの日。

啓太に言われたことがあった。



『納得するような男を連れて来い』



この言葉。

そう……私との未来など考えていないと言い、そういうことが出来る相手を、

連れてこいと言われた。



それが、こんなふうに現実になるなんて。



「未央」

「何?」

「疲れていたみたいだね。ここに来ないで、何か買って帰ればよかったか」


悠は自分が悪いわけではないのに、私が疲れていると思ったのだろう。

申し訳なさそうな顔をする。


「何言っているの。食べたいものがあるのでしょう。私は疲れていませんから。
大丈夫」


こんなふうに優しい人だから、時々怖くなるのだ。

私がずっと、そばにいられるのだろうかと。


「うん……」


そこからは悠をしっかり見て、楽しい話を始めていく。

それぞれの料理が運ばれ、私はステーキの大きさに驚いた。


「すごい……」

「少し食べてみなよ」

「……うん」


私は、自分のフォークを伸ばし、悠のお皿からお肉を分けてもらう。

好んでステーキを注文することはないが、こうして食べてみると、

本当にお肉が柔らかい。


「柔らかいね……」

「だろ。このキャンペーンはちょっと話題になっているらしいよ。
ファミレスの常識を超えたって」


悠は嬉しそうにお肉を口に入れると、しっかりとかみ締めた。

両目を閉じ、味わっているとわかる姿が妙におかしくて、思わず笑ってしまう。


「どうして笑われているんだろう」

「だって……」


そう言って顔をあげたとき、お客様の会計を終えた啓太と目があった。

私と別れた日、そして、マンションの前で言い合った日、

さらに、部屋の中に香澄ちゃんがいて、とんでもない状況を見せられた日。



その日よりも、啓太の目は優しく思えて……



『その人なんだね』と、私に言ってくれているような……



そんな優しい目で……



「未央……」


悠の声に気持ちが現実に戻る。


「そのミニピザ。一切れ食べてもいいかな……」


悠は私のプレートの中にある、ピザを見ていた。

私は手でそれを分け、悠のお皿に乗せてあげる。


「どうぞ」


悠は、人のものはうまそうに見えるよねと言いながら、ピザを口にする。

私は、そんな悠を見ながら、自分の分を食べ進めていく。



啓太……

私は、しっかりと歩き出しました。

あなたの言っていた通り、素敵な人を見つけました。



その挨拶に来たわけではなかったけれど、あなたのその目を見て、

少し、安心出来た気がします。





私が『好きだった』人は、決して、最低な人間ではなかったのだと。





それからもしばらく啓太は店内を動いていたが、私たちが食事を終える頃には、

その姿が消えていた。悠と会計を済ませ、店を出る。


「美味しかったね」

「うん」


悠の手を握り、一緒に車へ戻る。

そして、私たちが帰る場所へ、向かうことにした。





その日は、本当に1日中、悠と一緒だった。

車で迎えに来てもらって、そして水族館、海の見える場所で話をしながら食事をして、

夕焼けに見守られながらキスをした。

夕食を済ませ、そして今……



この日の全てを包み込むように、私たちは一つになる。



悠の背中に触れながら、『愛されている』悦びと、一緒にいることの楽しさを、

たくさん、たくさん、体に刻んでいく。

同じリズムで揺れ続ける私たちを、その日の最後に見守ってくれたのは、

優しい月明かりだった。



18-③




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テーマ : 恋愛小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:momonta
育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。著作権は放棄していません。お願いします。

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