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18 思いを君に 【キャロル】  ⑤

18-⑤


『園田さんを送る会』に出席しますという返事を二宮さんに預け、

今日は編集長と行動を共にする。


「どうして私なんですか」


編集長がどこに行き、何をするのか知っているだけに、

私は自分が『そういう扱い』をされているのかと、少し不機嫌な顔になった。


「まぁ、そう不機嫌な顔をしない。昼飯はおごってやるから」

「……ありがとうございます」


そう、今日、編集長が出かけるのは、『出版協会のこれから』という、

お堅いイベント。政治家や評論家、新聞記者のOBなど、

色々と業界に関わってきた人たちが、交流する集まりなのだ。

平均年齢は、55歳以上。

髪の毛も、白いとか、薄いとか、そういうレベルの人しかいない。


「中谷、お前、勘違いするなよ。
あの会は別に、年齢層を決めて集まっているわけではないのだから」

「そうでしょうか。斉藤さんも前に言ってましたよ。
俺ですら、あの場所に行くと、浮き上がるって」

「あいつが浮くのは、体がまんまるだからだ」


編集長は斉藤さんの真似なのか、両方の頬を大きく膨らませ、

体をゆさゆさと横に動かしながら少し歩いてみせる。


「おもしろくないです」

「言うなよ、あいつに」

「言いませんよ、そんなこと」


講演会が1時間、そして交流会が1時間。

私は人生の修行だと自分に念じ、編集長と一緒に会場の前に立った。





「なんでも好きなものをどうぞ」

「なんでもですね……1つじゃ済みませんよ」


拷問のような時間が終了し、私は編集長と近くのホテルの中にあるレストランに入った。

予想通り、出席者の平均年齢は高いままで、私が顔を出すと、

『何をしに来たのだ』という、不思議な顔をされた。

特に視線がきつめだったのは、業界OGと呼ばれる女性陣で、

いつもなら男性方から声をかけてもらえる人たちも、さすがに私の若さが勝ったのか、

『興味を持たれる』度合いが、明らかに違っていた。

早川先生の担当になって、まだ2ヶ月くらいだが、本当にラッキーだったと思う。

そうでなければ、あれだけのメンバーから話を振られても、

目を丸くして、愛想笑いをするしかなかったし、2時間に耐えられず、

昼食のおごりを回避し、飛び出していたかもしれない。


「東波新聞の加藤社長に、結構、積極的に話されていたな」

「はい……初めてお会いしたのに、君はどこかで会ったことがあるよねと、
ずいぶん色々と言われました。でも、本当にお会いしたことがなくて」

「あはは……それは荒手のナンパかもしれないぞ」


編集長は、加藤社長の愛人なら、世界中どこにでもいけそうだと、

さらに話を広げて笑い出す。


「くだらないことは言わなくていいんです」


私は、とりあえず、デミグラスソースのたっぷりかかったオムライスを注文し、

この後、デザートをつけますと宣言する。

ウエイターが注文を取りに来て、私たちの前を離れていった。


「今日、中谷を誘ったのは、一つ、耳に入れておこうと思ったことがあったんだ」

「……はい」


編集長は、いい話なのかどうか微妙だけれどと言いながら、

松岡さんが、『婚約』をしたという情報を教えてもらう。


「あの……」

「そう、あの『クリーナの3番』」


編集長は、奥さんと松岡さんのお母さんが同級生であるため、

先日、情報が入ってきたと言い、お冷を一口飲む。

あれから、啓太と3人で会い、きっぱりとお断りしてから、

特に面倒なことがあったわけではないが、『婚約』という現実を知り、

私との出来事が、完全に過去になったのだとほっとする。



それと同時に、妙な興味も湧き出してくる。



「あの条件を、受けたということですかね」

「……だと思うな。お前との話しが終わった後も、
彼自身は、全く反省していなかったそうだし」

「そうですか」



『一日の終わりには、『クリーナの3番』を身に着けて欲しい』



それはつまり、決まった香水を身にまとった女性を、抱きしめていたいという欲望。

啓太も話をした瞬間、『これはダメだ』と思ったのだろう。

私の顔を、見たことを思い出す。


「まぁ、これで完全に終わりだと、中谷も思えるだろう」


編集長の言葉に、私は小さく頷いた。

人の趣味や考えに、色々と意見をするつもりはない。

兄の嫁、千波ちゃんも言っていた。

考えるということはやめて、究極的に人任せをしたい人もいると……


「その話を、いつしようかなと考えていたら、今日、こういう会があると思って。
そうだ、中谷と話をしながら、食事でもしようと」


編集長は、そういうと、両手を前に組む。


「よかったな……」


編集長の一言に、私は軽く微笑み返す。

松岡さんと、そのお相手にも、彼らなりの幸せの形があるのだ。

私は、『コレック』で見た、啓太の表情を思い出す。

啓太と私の『幸せ』の形は、ずれていたけれど、

お互いに笑いあえる人を見つけた。



言いあいをしたり、責め立てたりもしたけれど、

こうして過ぎていけば、いい思い出になるのだろう。



「編集長、このチョコレートパフェ、いきますよ、私」


食後のデザートを決めた私は、オムライスの到着を今かと待つことにした。



19-①

《プレラブ プチ知識 タイトル写真》

18 【キャロル】

★カクテル言葉は『思いを君に』

材料はブランデー 2/3、スイートベルモット 1/3 パールオニオン





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テーマ : 恋愛小説
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育てた怪獣2匹は、すっかりかわいさを無くしたため、今や『犬愛』に目覚めたお気楽主婦です。日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
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